ゆた)” の例文
新字:
菜の花のかをりと、河内和泉の、一圓に黄色にぬりつぶした中に、青い道路のある、のどけさと、ゆたけさとをもつ田舍が、すぐ目にくるのだつた。
春宵戯語 (旧字旧仮名) / 長谷川時雨(著)
そのくものあたりへあがつて雲雀ひばりこゑがついて、そして、いまかうしてゐることのほかに、なんの爲事しごとわづらはしさもこゝろがかりもない、ゆたかな氣持きもちをかんじてゐることを
歌の話 (旧字旧仮名) / 折口信夫(著)
ねえ、私達はいさぎよくその恩を被ようではありませんか! さうして愛をゆたかに持つことにつとめ、それをすべてにさゝげることに、決して自分の利益りえきを考へないやうにと心掛こゝろがけませう。
冬を迎へようとして (旧字旧仮名) / 水野仙子(著)
おもほゆれ相者さうじやならずも我が父のみ命は長くゆたびつつ
白南風 (旧字旧仮名) / 北原白秋(著)
いついつきあへぬおもひゆたかにてせちにあらなむ。
海潮音 (旧字旧仮名) / 上田敏(著)
ゆたかに遠くたた
草わかば (旧字旧仮名) / 蒲原有明(著)
ときなるかな松澤まつざははさるとし商法上しやうはふじやう都合つがふ新田につたより一時いちじれし二千許にせんばかりかねことしはすで期限きげんながら一兩年いちりやうねんひきつゞきての不景氣ふけいき流石さすが老舖しにせ手元てもとゆたかならずこと織元おりもとそのほかにも仕拂しはらふべきかねいとおほければ新田につた親族しんぞく間柄あひだがらなりかつ是迄これまでかたよりたてかへしぶんすくなからねばよもや事情じじやううちあけて延期えんき
別れ霜 (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
ことに盛夏になると、水、水ではないか、仕事をしたあとで飮む一杯の水でも、コツプを手に差しあげて、なみなみ盛つたゆたけさを眺め飮みほすと、生活の力が流れ込むやうに思へる。
(旧字旧仮名) / 長谷川時雨(著)