おぼ)” の例文
ヂュリ おゝ、うれしや御坊樣ごばうさまか! 殿御とのご何處どこにぢゃ? どこおぼえてゐる、おゝ、さうぢゃ、そこへわしてゐるのぢゃ?
さらずば美しき畫といふ畫を、殘なく知り、はてなき世の事を悟り、我が物語りしよりも、はるかに面白き物語のあらん限をおぼえんとや思ふ。我。
この我がおしえおぼえて決してそむくことなかれとねんごろにいましめ諭して現世このよりければ、兄弟共に父の遺訓にしたがひて互ひに助けあひつつ安楽に日をくらしけり。
印度の古話 (新字旧仮名) / 幸田露伴(著)
なさつたやら、わたくしはおぼえてゐません。どうも石川貞白さんなどのやうに、子供の面白がるやうな事を
寿阿弥の手紙 (旧字旧仮名) / 森鴎外(著)
智者大師説『金光明経文句』の釈捨身ぼんの虎子頭上七点あるを見て生まれてすでに七日なるを知る事『山海経』にづとあるが、予はかかる事『山海経』にあるをおぼえず。
黄州禅智寺に宿せしに、寺僧皆な在らず、夜半雨おこり、尚ほ此の詩をおぼゆ。故に一絶を作る
今はおぼえず
池のほとりに柿の木あり (新字旧仮名) / 三好達治(著)
……それはさうと、只今たゞいままうしましたとほり、初穗節はつほまつりよるになると、ちゃうどお十四にならッしゃります、大丈夫だいぢゃうぶでござります、はい、おぼえてりまする。
瀦水たまりみづは惡臭を放てり。朝夕のほかは、戸外に出づべからず。かゝる苦熱はモンテ、ピンチヨオにありし身の知らざる所なり。かしこの夏をば、我猶おぼえたり。
膝突合わすほど狭い室ではあるが主を上段に家来を下段に坐せしむるようにした席も有ったとおぼえている。
蒲生氏郷 (新字新仮名) / 幸田露伴(著)
その弟子がぬすみ聴いてその咒をおぼえて、道士の留守をうかごうて鬼をんだ。鬼は現われて水をき始めた。
鴎外漁史とは誰ぞ (新字新仮名) / 森鴎外(著)
諸動物中にも特種の心性の発達に甚だしく逕庭がある、その例としてラカッサニュは犬が恩をおぼゆる事かくまで発達しおるに人の見る前で交会して少しも羞じざると反対に
今はおぼえず
故郷の花 (旧字旧仮名) / 三好達治(著)
母五百も声がかったが、陸はそれに似た美声だといって、勝三郎がめた。節も好くおぼえた。
渋江抽斎 (新字新仮名) / 森鴎外(著)
汝はかの猶太の翁の事をおぼえたりや。聖母のがんの前にて、惡少年にくるしめられし翁の事なり。
爾来僧を請ずるごとに、妙光が自手給事するその間、美僧あれば思い込んでおぼえ置く。
本邦で茅を「ち」と訓じ「ち」の花の義で茅花を「つばな」とむ、「ち」とは血の意で昔誰かが茅針つばなのめで足を傷め血がその葉を染めて赤くしたと幼時和歌山で俚伝を聞いたがしかおぼえぬ。
私には香花かうげ手向たむくべき父の墓と云ふものが無いのである。私は今はおぼえてゐぬが、父の訃音ふいんが聞えた時、私はどうして死んだのかと尋ねたさうである。母が私に斬られて死んだと答へた。
津下四郎左衛門 (新字旧仮名) / 森鴎外(著)