こしら)” の例文
その人のことを書いた本の中に、細君が酸乳すぢちというものをこしらえて、著作でつかれた夫に飲ませたというところが有った。それを言出した。
家:02 (下) (新字新仮名) / 島崎藤村(著)
「何だつて、貴方、東京でつた靴ですから東京へ送り返すのです。こしらへた店でなくつちや、直しやうがないぢやありませんか。」
ドンなものを父はこしらえるかというと、この前話した火消し人形のようなものから、いろいろ妙なものがありますが、その中で、夏向きになって来ると
あゝ、がもどかしい、まつりまへばんをいらつ子供こどものやうに、こしらへてもらうた晴着はれぎはあっても、ることがらぬので。……おゝ、あれ、乳母うばが。きっと消息しらせぢゃ。
じゃあ、べにも知るまい。推古朝すいこちょうの頃、僧の曇徴どんちょうこしらえ出した物だと聞いているが、おかしな事には、白粉も、観成かんじょうという僧が、時の天皇に献上したのが始めだということになっている。
平の将門 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
多勢おおぜい寄集り、明日あす手配てくばりをして居るうちに夜が明けると、眞葛周玄の調合で毒酒をこしらえ、これと良い酒とを用意して、粥河を始め千島禮三、眞葛周玄までも、実に青菜に塩というような
「いいえさ、この団子は、こりゃ泥か埴土ねばつちこしらえたのじゃないのかい。」
草迷宮 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
自分ながら決して強い男とは思つてゐない。考へると、上京以来自分の運命は大概与次郎のめにこしらへられてゐる。しかも多少の程度に於て、和気靄然あいぜんたる翻弄を受ける様にこしらへられてゐる。
三四郎 (新字旧仮名) / 夏目漱石(著)
おまえの心からこしらえた影法師におまえがれて居るばかり、お辰の像に後光までつけた所では、天晴あっぱれ女菩薩にょぼさつとも信仰して居らるゝか知らねど、影法師じゃ/\、お辰めはそんな気高く優美な女ならずと
風流仏 (新字新仮名) / 幸田露伴(著)
「あの時吾儕われわれの会見したことは、ちゃんと書面にこしらえて、一通は記念の為に正太へ送ったし、一通は俺のとこに保存してある」
家:01 (上) (新字新仮名) / 島崎藤村(著)
安閑としてぶらり遊んでいることは嫌いで必ずしも自分の仕事がかねにならなくても、手とあたまとを使って自分の意匠を出して物をこしらえて見ようというのである。
「化粧に、顔へけるものさ。鉛華えんかもあれば、もちごめの粉でこしらえたものもある」
平の将門 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
「自分は、多少の余財を作って等身大の馬をこしらえて招魂社にでも納めたい」というのが平素ふだんの願望で
其時自分は雨だの日の出だのを畫いてある札を持つて見て、「青たん」とか「三光」とかいふことを始めて習つた。よく臺所の方では、小母の爲に牛肉のソップをこしらへた。
いものをこしらえる人は少なくなり、日本にあるものは持って行かれ、日本の美術がからになって行く有様を見てこれはこうしては置けないと気が附き一方これを救済し
御存じでせう、其穢多は今でも町はづれに一団ひとかたまりに成つて居て、皆さんの麻裏あさうらつくつたり、靴や太鼓や三味線等をこしらへたり、あるものは又お百姓して生活くらしを立てゝ居るといふことを。
破戒 (新字旧仮名) / 島崎藤村(著)
私も、気を張ってこしらえた雛形が落第とあっては師にも気の毒なり、第一自分もきまり悪い。
或る玩具おもちゃこしらえ、それを小風呂敷こぶろしきに包んで縁日へ出て売り初めたのです。