行商ぎやうしやう)” の例文
それは唯はた目には石鹸せつけん歯磨はみがきを売る行商ぎやうしやうだつた。しかし武さんはめしさへ食へれば、滅多めつたに荷を背負せおつて出かけたことはなかつた。
素描三題 (新字旧仮名) / 芥川竜之介(著)
こゝに、一寸ちよつとことわつておくのは、工學士こうがくしかつ苦學生くがくせいで、その當時たうじは、近縣きんけん賣藥ばいやく行商ぎやうしやうをしたことである。
人魚の祠 (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
こぼれるほどにつたきやく行商ぎやうしやう町人ちやうにんがへりの百姓ひやくしやう乳呑兒ちのみごかゝへた町家ちやうか女房にようばうをさなおとうといた町娘まちむすめなぞで、一かゝつたふねが、おほきな武士ぶしめに後戻あともどりさせられたのを
死刑 (旧字旧仮名) / 上司小剣(著)
脊中せなか一杯いつぱいしよつて、二十日はつかなり三十日さんじふにちなり、其所そこぢゆうまはつてあるいて、ほゞつくしてしまふとやまかへつて坐禪ざぜんをする。それから少時しばらくしてふものがなくなると、また筆墨ふですみせて行商ぎやうしやうる。
(旧字旧仮名) / 夏目漱石(著)
或夏の近づいた月夜、たけさんは荷物を背負せおつたまま、ぶらぶら行商ぎやうしやうから帰つて来た。すると家の近くへ来た時、何かやはらかいものを踏みつぶした。
素描三題 (新字旧仮名) / 芥川竜之介(著)
ところで、一せんたりとも茶代ちやだいいてなんぞ、やす餘裕よゆうかつたわたしですが、……うやつて賣藥ばいやく行商ぎやうしやう歩行あるきます時分じぶんは、兩親りやうしんへせめてもの供養くやうのため、とおもつて
人魚の祠 (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)