蜀山人しょくさんじん)” の例文
その同時代の人蜀山人しょくさんじんの記録中(『半日閑話』)にも見ゆれば、やや穿鑿に過ぎてかへつて誤謬ごびゅうを生じたるの感なくんばあらず。
江戸芸術論 (新字新仮名) / 永井荷風(著)
たくまずして気のいた状景をとらえたところが眼に見るようである。それに比べると、蜀山人しょくさんじんが、松平定信の改革を諷して
大菩薩峠:25 みちりやの巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
自分などは昔風であるのか、この舌切雀したきりすずめの話を思い出すような米のジャムには感心せぬので、毎度かの有名なる蜀山人しょくさんじん
木綿以前の事 (新字新仮名) / 柳田国男(著)
夫れから同じ長州の藩士で東条礼蔵とうじょうれいぞうと云う人も矢張やはり私と同僚飜訳方ほんやくがたで、小石川の蜀山人しょくさんじん住居すまいう家にすんで居た。
福翁自伝:02 福翁自伝 (新字新仮名) / 福沢諭吉(著)
蜀山人しょくさんじんの狂歌に「さ蕨が握りこぶしをふり上げて山の横つら春風ぞふく」、支那にも蕨の異名を『広東カントン新語』に拳菜、『訓蒙字会』に拳頭菜など挙げいるから
中国の詩を見ても何々調というのがあり、日本でも蕃山ばんざん蜀山人しょくさんじん等近世の教養ある人士の風流の歌曲があって、その遺習は明治以後も一部の人達に残っている。
歌詞とその曲 (新字新仮名) / 信時潔(著)
連れて行った子がゆびさすのを見ますと、蜀山人しょくさんじんの小さな戯画の額で、福禄寿ふくろくじゅの長い頭の頂へ梯子はしごをかけて、「富貴天にありとしいへば大空へ梯子をかけて取らむとぞ思ふ」
鴎外の思い出 (新字新仮名) / 小金井喜美子(著)
最初は多少蜀山人しょくさんじんに私淑したかの書体であった。我楽多がらくた文庫や新著百種の表紙の文字がそれである。しかし後には追い追い老熟した筆致を示し、山人独特の文字となった。
明治世相百話 (新字新仮名) / 山本笑月(著)
「何だ、『長崎の山から出たる月はよか、こんげん月はえっとなかばい』か。蜀山人しょくさんじんとある」
ぐうたら道中記 (新字新仮名) / 佐々木邦(著)
大田蜀山人しょくさんじんの『半日閑話』の中に「信州浅間岳下奇談」と題して次の記事が出ている。
紙魚こぼれ (新字新仮名) / 木暮理太郎(著)
「紀行文でおもしろいのは、古川古松軒の東遊雑記と西遊雑記。それから、蜀山人しょくさんじんと貝原益軒もいいが、外国のものでは、チャーム・オブ・ロードですね。これは、たのしい本です」
胡堂百話 (新字新仮名) / 野村胡堂(著)
紅葉は蜀山人しょくさんじんを学んで、若い頃のは蜀山人以上に衒気げんき満々としていたが、晩年はスッカリ枯れ切って蒼勁そうけいとなった。蜀山人から出て蜀山人よりも力があって、何処どことなく豪快の風が現われていた。
美妙斎美妙 (新字新仮名) / 内田魯庵(著)
蜀山人しょくさんじんの事さ。有名な蜀山人さ」
硝子戸の中 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
蜀山人しょくさんじんの狂歌におけるや全く古今にかんたり。しかしてその始めて狂歌を吟ぜしはおもふに明和めいわ三、四年のこう年二十歳のころなるべし。
江戸芸術論 (新字新仮名) / 永井荷風(著)
炉辺の閑話に蚊話かばなしが持上った時、その最後に、楽翁公の寛政改革について大いに意気を揚げ、蜀山人しょくさんじんののしる者がありました。
大菩薩峠:25 みちりやの巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
蜀山人しょくさんじんの『一話一言』にある「鶴郡鶴羽記」と題する文は
マル及ムレについて (新字新仮名) / 木暮理太郎(著)
鶉衣うずらごろも』に収拾せられた也有の文は既に蜀山人しょくさんじんの嘆賞かざりし処今更後人こうじんの推賞をつに及ばぬものであるが
雨瀟瀟 (新字新仮名) / 永井荷風(著)
蜀山人しょくさんじんが長崎の事を記した瓊浦又綴けいほゆうてつに珈琲のことをば豆を煎りたるもの焦臭くして食うべからずとしてある。
砂糖 (新字新仮名) / 永井荷風(著)
昔は貧乏御家人ごけにん跋扈ばっこせし処今は田舎いなか紳士の奥様でこでこ丸髷まるまげそびやかすの、元より何の風情ふぜいあらんや。然れどもわが書庫に蜀山人しょくさんじんが文集あり『山手やまのて閑居かんきょ
矢はずぐさ (新字旧仮名) / 永井荷風(著)
これと対して牛込うしごめの方を眺めると赤城あかぎの高地があり、正面の行手には目白の山の側面がまた崖をなしている。目白の眺望は既に蜀山人しょくさんじん東豊山とうほうざん十五景の狂歌にもある通り昔からの名所である。
蜀山人しょくさんじん吟咏ぎんえいのめりやすにそぞろ天明てんめいの昔をしのばせる仮宅かりたく繁昌はんじょうも、今はあしのみ茂る中洲なかすを過ぎ、気味悪く人を呼ぶ船饅頭ふなまんじゅうの声をねぐら定めぬ水禽みずとり鳴音なくねかと怪しみつつ新大橋しんおおはしをもあとにすると
散柳窓夕栄 (新字新仮名) / 永井荷風(著)
遂に一転して蜀山人しょくさんじんらが滑稽こっけいなる狂詩を生むに終った。
下谷叢話 (新字新仮名) / 永井荷風(著)
蜀山人しょくさんじんの筆で葛羅の井戸のいわれがしるされていた。
葛飾土産 (新字新仮名) / 永井荷風(著)
蜀山人しょくさんじんが作にも
向嶋 (新字新仮名) / 永井荷風(著)