花畠はなばたけ)” の例文
やかたのあるお花畠はなばたけからは、山崎はすぐ向うになっているので、光尚が館を出るとき、阿部の屋敷の方角に人声物音がするのが聞こえた。
阿部一族 (新字新仮名) / 森鴎外(著)
この影の奥深くに四阿屋あずまやがある。腰をかけると、うしろさえぎるものもない花畠はなばたけなので、広々と澄み渡った青空が一目ひとめ打仰うちあおがれる。
監獄署の裏 (新字新仮名) / 永井荷風(著)
これらのおほくの高山植物こうざんしよくぶついろどられてゐる、いはゆるお花畠はなばたけは、日本につぽんでは本州ほんしゆう中部ちゆうぶ日本につぽんアルプスの諸高山しよこうざんおほく、なかにも白馬山しろうまさんのは有名ゆうめいです。
森林と樹木と動物 (旧字旧仮名) / 本多静六(著)
中国の江南こうなんの景色、セイロンの落日の景色、仏蘭西のローヌ河畔の木の芽の景色、ムードンの森の驟雨しゅううの景色、独逸ドイツのラインがわの古城の景色、ベルギーのヒヤシンス・チュウリップ等の花畠はなばたけ
俳句への道 (新字新仮名) / 高浜虚子(著)
捨吉は井戸端で足をいてから、手桶の水を提げ、台所から奥座敷と土蔵の間を廂間ひあわいの方へ通り抜けた。田辺の屋敷に附いた裏の空地が木戸の外にある。そこが一寸花畠はなばたけのように成っている。
桜の実の熟する時 (新字新仮名) / 島崎藤村(著)
花畠はなばたけむぎの畠、そらまめの花、田境たざかいはんの木をめる遠霞とおがすみ、村の小鮒こぶな逐廻おいまわしている溝川みぞかわ竹籬たけがき薮椿やぶつばきの落ちはららいでいる、小禽ことりのちらつく、何ということも無い田舎路ではあるが
野道 (新字新仮名) / 幸田露伴(著)
襟は藤色で、白地にお納戸で薩摩縞さつまじま単衣ひとえ、目のぱッちりと大きい、色のくッきりした、油気の無い、さらさらした癖の無い髪をせなへ下げて、蝦茶えびちゃのリボンかざりかざしは挿さず、花畠はなばたけ日向ひなたに出ている。
黒百合 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
眞白まつしろ雪溪せつけいとなあはせて、このお花畠はなばたけるときのかんじは、なんともへず、たつとく、かわゆく、うつくしいものです。
森林と樹木と動物 (旧字旧仮名) / 本多静六(著)
うしろの黒い常磐木ときわぎの間からは四阿屋あずまやわら屋根と花畠はなばたけに枯れ死した秋草の黄色きばみ際立きわだって見えます。縁先の置石おきいしのかげには黄金色こがねいろの小菊が星のように咲き出しました。
監獄署の裏 (新字新仮名) / 永井荷風(著)
(ヘ)草本帶そうほんたい高山植物こうざんしよくぶつ)。 人々ひと/″\がお花畠はなばたけといひ山上さんじよう花園はなぞのとしてめづらしがり、あこがれてゐるのがこの草本帶そうほんたいです。まへ偃松帶はひまつたい上部じようぶ徐々じよ/\にこの草本帶そうほんたいうつつてきます。
森林と樹木と動物 (旧字旧仮名) / 本多静六(著)