肌膚はだ)” の例文
それよりも更に隠れた変動が、我々の内側にも起こっている。すなわち軽くふくよかなる衣料の快い圧迫は、常人の肌膚はだを多感にした。
木綿以前の事 (新字新仮名) / 柳田国男(著)
容貌の美醜などは、もとより子供の私には分らなかつたが、色が白くて肌膚はだの美しいといふ点では、恐らく他に比もあるまいと思はれた。
乳の匂ひ (新字旧仮名) / 加能作次郎(著)
季節きせつあめしめつたつちまれにかつとあつひかりげられて、日歸ひがへりのそら強健きやうけん百姓ひやくしやう肌膚はだにさへぞく/\と空氣くうきひやゝかさをかんぜしめて
(旧字旧仮名) / 長塚節(著)
れた町々の屋根はわずかに白い。雪は彼女の足許あしもとへも来て溶けた。この快感は、湯気で蒸された眼ばかりでなく、彼女の肌膚はだかわきをもいやした。
家:02 (下) (新字新仮名) / 島崎藤村(著)
やがてのことに女は、肌膚はだに着けた絎紐くけひもをほどくと、燃えるような真紅の扱帯しごきが袋に縫ってあって、へびかえるんだように真ん中がふくれている。
つづれ烏羽玉 (新字新仮名) / 林不忘(著)
ひげの深く生えたのをらうともせずに、青白い肌膚はだの色をその中から見せて、さびしげにかれは笑つた。
ある僧の奇蹟 (新字旧仮名) / 田山花袋(著)
卯平うへいはそれととも乾燥かんさうした肌膚はだ餘計よけいれて寒冷かんれいほねてつしたかとおもふとにはか自由じいううしなつてたやうに自覺じかくした。
(旧字旧仮名) / 長塚節(著)
是でこそ我々の遠祖の肌膚はだが丈夫で、風邪かぜなどいうものを知らなかった原因も突き止められるのである。
木綿以前の事 (新字新仮名) / 柳田国男(著)
丁度赤ん坊に乳を呑ませながらで、その上暑い夏の日のことで、胸も殆どはだけられてゐたが、その肌膚はだの色の清らかに美しいこと、全く玲瓏として透き通るばかりだつた。
乳の匂ひ (新字旧仮名) / 加能作次郎(著)
同年輩どうねんぱいみなをどりくのである。おつぎには幾分いくぶんそれがうらやましくぼうつとして太鼓たいこれてた。やはらかなつきひかりにおつぎの肌膚はだしろえてた。
(旧字旧仮名) / 長塚節(著)
この木綿糸の水を含む特質、是と肌膚はだの抵抗力とは、どうも関係がありそうなのである。
木綿以前の事 (新字新仮名) / 柳田国男(著)