縹緻きりやう)” の例文
処がこのお玉と云ふ娘は生れ付きまことに縹緻きりやうがよくてとても人間とは思はれぬ位で名前の通り玉の様に美しく月の様に清らかな姿を
金銀の衣裳 (新字旧仮名) / 夢野久作(著)
縹緻きりやう自慢だつたが(彼女は鏡を見る度に、自分の愛らしさを示されるので、それを押へることが出來なかつた)氣取きどらなかつた。
幸ひ、本所の御用聞で、石原の利助親分の娘のお品さん、これは出戻りだが、縹緻きりやうも才智も人並すぐれて、こんなことには打つて付けの女です。
町内きつての縹緻きりやうよしなので、そんぢよ其辺そこら放蕩息子どうらくむすこがそれとなく言ひ寄るが、娘はてんで見向きもしなかつた。
あの女であれば縹緻きりやうは別として、女として実に立派なものである。あの熱烈な熱情の前に、私はいつでも陥落する
時偶ときたま、雜誌の口繪で縹緻きりやうの好い藝妓の寫眞を見たり、地方新聞で金持の若旦那の艶聞などを讀んだりした時だけは、妙に恁う危險な——實際危險な、例へば
赤痢 (旧字旧仮名) / 石川啄木(著)
彼女が島田に結つてゐる処を見るとまだ人妻でない事はすぐ知れる事であつたが、その縹緻きりやうと、年輩とを以て未だに独身でゐるのはなぜかと云ふ怪訝けげんも同時に誰にも起る筈である。
縹緻きりやういから一ツや二ツくしても居れようがネ——私にしてからが、だお前さんの行末を思へばこそ、かうしてウルさく勧めるんだアね、悪く取られて、たまつたもんぢやありませんよ
火の柱 (新字旧仮名) / 木下尚江(著)
突合つきあはせ相談なすに妻のお梅は漸く二十三歳にて縹緻きりやうもよく志操こゝろざしやさしき者なるがをつと難儀なんぎ見兼みかね何事も御主人樣ごしゆじんさまのお爲なれば此身を一年のあひだ何方いづかたなりとも水仕奉公みづしほうこうに遣られ其給金にて夜具蒲團を
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
「病氣だつて、病氣でなくたつて、縹緻きりやうの惡いことに變りないさ。優雅いうがの處や、美の調和つて云ふものは、この顏には全然缺けてゐるよ。」
格子戸の中、あかりから遠い土間に立つたのは、二十三——四の年増、ガラツ八が言ふほどの美い縹緻きりやうではありませんが、身形みなりも顏もよくとゝのつた、しつかり者らしい奉公人風の女です。
水自慢は縹緻きりやう自慢と一緒で、自慢する人自身のこしらものでないだけに面白い。
とらへ出したる盜賊改め奧田主膳殿組與力笠原粂之進にてすなはち此家へお梅奉公致しけるが此粂之進獨身どくしんゆゑ此お梅の縹緻きりやうよき戀慕れんぼ種々いろ/\口説くどくと雖も此お梅貞節ていせつの女なれば決してしたがはざるにより彌々いよ/\粂之進思ひを
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
晴着はれぎを着た、女中のやうななりをした、お内儀かみさん風の、まだ若くて大層縹緻きりやうのよい、髮と眼の黒い、活々いき/\とした顏色の女だ。
外面如菩薩げめんによぼさつだ。金持、親分、旗本と手玉に取つて、自分の縹緻きりやうと才智で、活き佛さまを地獄に引きり込まうとした女だ。あんな女は石の地藏さままでモノにする氣になるだらうよ」
相手は妙齢としごろ縹緻きりやうよしといふでは無し、また別に色つぽい談話はなしをするのでもなしするから、そんなに肩が擦れ合はないでもよかりさうなものだが、そこは男と女だけにまた格別なものと見える。
勤度つとめたししひて望むによりもとより吉原は心安き所故松葉屋半左衞門方へ相談さうだんしけるに縹緻きりやうと云ひげいと云ひ殊に歳頃も彼の望む處なればねんぱい二十八までのつもりにて目見しけるに大いに心にかなひ身代金百五十兩と取極とりきめ君太夫が請人うけにんにて母の爪印つめいん相濟あひすみ新吉原松葉屋半左衞門方へぞいたりける
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
白粉つ氣なしの素袷すあはせ、色の白さも、唇の紅さもなまめきますが、それにも増して、くね/\と品を作る骨細の身體と、露をふくんだやうな、少し低い聲が、この女の縹緻きりやう以上に人を惱ませます。
それから爺さんは縹緻きりやうよしの寡婦ごけばあさんと結婚したが、実をいふとその婆さんは一番目の女房かないなので、婆さん自身は同じ男と二度目の結婚だとはよく知つてゐたが、爺さんはにも気づかないで
その小娘が世界中の一番縹緻きりやうよしだつたか、どうかは私も知らない。
「成程、好い縹緻きりやうだ。お前さんと一緒になるとかいふ」
王のきさきマルゲリタは縹緻きりやう自慢の女だつた。