“継(まま)” の例文
旧字:繼
どうせ同じようなものだとしても、世間には、わざわざ継(まま)娘の婿にまでなってあの家の余沢をこうむりたがったように見えるからね。
源氏物語:52 東屋 (新字新仮名) / 紫式部(著)
お江野には五つになる京之助という子がありますが、お江野と吉弥の間は、世に謂(い)う継(まま)しい仲でありながら何の隔たりもありません。
鞠子さんが側(そば)からつけ加えた。この娘さんはお父さんには勿論、継(まま)しいお母さんにでも、まるでお友達の様な口を利くのだ。
悪霊 (新字新仮名) / 江戸川乱歩(著)
媼は、留学生から学んだ経験でその鑑別の法を知つてゐた。それから、瓦斯火(ガスび)で鍋(なべ)で焚くのであるが、決して継(まま)の飯(めし)にするやうなことはなかつた。
日本媼 (新字旧仮名) / 斎藤茂吉(著)
「はい有難うはございますが、母と妾(わたくし)とは継(まま)しい仲、たとえ実家へ帰りましても辛(つら)いことばかりでございます」
八ヶ嶽の魔神 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
「おります」とあだこは低い声で答えた、「父も母もいますし、弟が二人あります、けれどもいまの父が継(まま)で、あたしがいてはうちがまるくいかないんです」
あだこ (新字新仮名) / 山本周五郎(著)
継(まま)しい母の手に育てられただけに、年の割には何かとよく気が付くので、お絹も彼女を可愛がっていた。
両国の秋 (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)
地獄の口の開(あ)いた中から、水と炎の渦巻を浴びて、黒煙(くろけむり)を空脛(からすね)に踏んで火の粉を泳いで、背には清葉の継(まま)しい母を、胸には捨てた(坊や。)の我児(わがこ)を、大肌脱(おおはだぬぎ)の胴中へ
日本橋 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
あなたの御容貌を微塵(みじん)に打砕いたそのものは、あなたの継(まま)のお母さんではありません、また、そのお母さんに味方をするという一類の人たちではありません、あなたの心の増長が
大菩薩峠:26 めいろの巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
それにあなたの母御(おやご)様は、継(まま)しい中のあなた様を、この上もないお憎しみ。死なふとまでの御覚悟も、どふやらそんな御事からと、あの晩深井様からあらましは、承つてをりまする。
したゆく水 (新字旧仮名) / 清水紫琴(著)
然(しか)るに喜兵衛が野口家の後見となって身分が定(きま)ってから、故郷の三ヶ谷に残した子の十一歳となったを幸手に引取ったところが、継(まま)の母との折合(おりあい)が面白くなくて間もなく江戸へ逃出し
今の奥様には継(まま)なる娘(こ)あり、桂次がはじめて見し時は十四か三か、唐人髷(とうじんまげ)に赤き切れかけて、姿はおさなびたれども母のちがふ子は何処やらをとなしく見ゆるものと気の毒に思ひしは
ゆく雲 (新字旧仮名) / 樋口一葉(著)
リリーを一本吸ふたら目が廻つて来ましたつけ、と何日か古山の云ふたのは、蓋(けだ)し実際であらう。斯くの如くして、自分は常に此職員室の異分子である。継(まま)ツ子である、平和の攪乱者と目されて居る。
雲は天才である (新字旧仮名) / 石川啄木(著)
継(まま)っ子根性てのがこれだろう。
小説 円朝 (新字新仮名) / 正岡容(著)
奥へ入ってみると、後添いのお国は、継(まま)しい二番目娘お雪の部屋で、床の中に入ったまま、見事に喉笛を貫かれて死んでおりました。
小児(こども)と申しても継(まま)しい中で、それでも姉弟(きょうだい)とも、真(ほん)の児(こ)とも、賢之助は可愛くッてなりません。
悪獣篇 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
継(まま)しい仲を美しくしようとするあまり、水の使えない井戸ができあがってはたいへんです。
日本婦道記:桃の井戸 (新字新仮名) / 山本周五郎(著)
親父は一人娘で甘いのだし、お母さんは継(まま)しい仲で、十分しつけが出来ないのだから、無理もないけれど、三千子さんという人は、恐らく生れつきの淫婦(いんぷ)ではないかと思うね。
一寸法師 (新字新仮名) / 江戸川乱歩(著)
「文次郎ですよ。先妻の子で、お嘉代には継(まま)しい仲だが、ちょっと好い男で——もっとも近ごろは隣の九郎助という者の娘お菊と仲が良いそうで」
肖(に)も着かぬが、乳母ではない、継(まま)しいなかと見たが、どうも母親に相違あるまい。
革鞄の怪 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
藤屋万兵衛の後妻で、年が二十以上も違うお乃枝(のえ)というのは、御新造と言われても不思議のない若さで、一人っ子の万吉にも継(まま)しい仲だったのです。
とて語り出づる、大方の筋は継母(ままはは)のその継(まま)しき児(こ)に酷(むご)きなりけり。
照葉狂言 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
「後添えでいらっしゃる、若殿様とは継(まま)しい仲だが、至ってお睦(むつ)まじい。奥方には今年十九になる若葉(わかば)様という、それはそれは綺麗なお嬢様がある」
若殿時之助様御命を縮めたいと思うものは、当屋敷内に、継(まま)しい奥方お勇様の外にあるはずはない——とおっしゃる
「亭主(やど)の連れ娘(こ)で私には継(まま)しい仲ですよ。体が弱いくせに妬(ねた)み根性が強いから、お菊ぐらいは殺し兼ねません」
勇太郎様は亡くなった先(せん)の御新造の御子さんで、今のお君さんとは継(まま)しい仲でございます。
継(まま)しい中の若い母親——実は父の妾のお通が着せてやったという、大柄の銘仙(めいせん)の羽織は、袖畳みにして死骸の床の側に置いてあり、その上曲者が娘の背中に突(つ)っ立てたままの匕首は
「継(まま)しい仲ですもの、それはね——」