突出つきいだ)” の例文
前にして遠く房總ばうそうの山々をのぞみ南は羽田はねだみさき海上かいじやう突出つきいだし北は芝浦しばうらより淺草の堂塔迄だうたふまではるかに見渡し凡そ妓樓あそびやあるにして此絶景ぜつけい
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
れ!」とかれはそのてのひらを学生の鼻頭はなさき突出つきいだせり。学生はただちにパイレットのはこを投付けたり。かれはその一本を抽出ぬきいだして、燐枝マッチたもとさぐりつつ
取舵 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
根下ねさがりの丸髷まるまげ思ふさま髱後たぼうしろ突出つきいだ前髪まえがみを短く切りてひたいの上にらしたり。
矢はずぐさ (新字旧仮名) / 永井荷風(著)
早く早くとわめくを余所よそに、大蹈歩だいとうほ寛々かんかんたる老欧羅巴エウロッパ人は麦酒樽ビイルだるぬすみたるやうに腹突出つきいだして、桃色の服着たる十七八の娘の日本の絵日傘ゑひがさオレンジ色のリボンを飾りたるを小脇こわきにせると推並おしなら
金色夜叉 (新字旧仮名) / 尾崎紅葉(著)
するりと槍を取直し、肩に立懸けつえつきつつ、前にかがみて、突出つきいだせる胸のくれない襯衣しゃつ花やかに、右手めてに押広げてたたいたり。
照葉狂言 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
もま不幸ふかうの上に大不幸だいふかう異見いけんらしくも言散しサア何處いづこへなり勝手に行とおもての方へ突出つきいだ泣倒なきたふれたる千太郎を
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
進め居たりしが今老人の突出つきいだされしを見て餘りのいたはしさの儘彼の老人を小蔭こかげ指招さしまね其許おまへ先刻さつき豐島屋にて酒を飮歸りし跡に何かは知ず木綿もめんの財布らしき物落て有しを
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
新聞にてたたかれし口惜くちおしさと、綾子に対して言訳なさと、秘蔵の狆の不幸とが一時いっときに衝突して、夫人の剣幕さながらダイナマイトのごとくなれば、矢島は反返そりかえって両手を前に突出つきいだ
貧民倶楽部 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
長蟲ながむし苦悶くもんへず蜒轉𢌞のたうちまはり、のがでんといだ纖舌せんぜつほのほよりあかく、ざるより突出つきいだかしらにぎちてぐツとけば、脊骨せぼねかしらきたるまゝ、そと拔出ぬけいづるをてて、しかばねかたへうづたか
蛇くひ (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)