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痩我慢
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やせがまん
ふりがな文庫
“
痩我慢
(
やせがまん
)” の例文
甲州までには、小仏、笹子の両難所を控えて三十余里の道、ひととおりの
痩我慢
(
やせがまん
)
ではやれまいに、ともかく、やるだけやらせてみろ。
大菩薩峠:21 無明の巻
(新字新仮名)
/
中里介山
(著)
ヨシ、それまで知っているなら、
痩我慢
(
やせがまん
)
はよして、ギリギリ決着の取引きをしよう。実際、俺は不意を打たれてびっくりしたのだ。
魔術師
(新字新仮名)
/
江戸川乱歩
(著)
主人その人は自分に書画骨董を識別する眼力なくとも何か一つ位高価な物を床の間へ置かないと風流らしくないという
痩我慢
(
やせがまん
)
から
食道楽:春の巻
(新字新仮名)
/
村井弦斎
(著)
傷ついた二番目娘のお勢は、姉のお里の介抱で、どうやら元氣を取戻し、平次を迎へたときは、もう
痩我慢
(
やせがまん
)
らしい微笑さへ浮べて居りました。
銭形平次捕物控:232 青葉の寮
(旧字旧仮名)
/
野村胡堂
(著)
『はゝ、
痩我慢
(
やせがまん
)
をするなよ。』と、初めの男は
矢
(
や
)
はり笑つてゐた。『実はこの男はあんまり女の子等に可愛がられた天罰で、
横痃
(
よこね
)
を
遣
(
や
)
つてゐる。 ...
赤膏薬
(新字旧仮名)
/
岡本綺堂
(著)
▼ もっと見る
我輩はまずこの過渡期に
痩我慢
(
やせがまん
)
でもなんでも我慢をして先鋒をやるが、長い間には時に新手の顔が現れて来なければ困る。
政治趣味の涵養
(新字新仮名)
/
大隈重信
(著)
早足と
食溜
(
くいだ
)
めなども昔の人の
長処
(
ちょうしょ
)
であった。一度にうんと食べて二日も三日も食わずに働けるのは体力で、単なる
痩我慢
(
やせがまん
)
ではできない芸当である。
木綿以前の事
(新字新仮名)
/
柳田国男
(著)
淋しさと、心もとなさと、不安は、知らず知らず彼等を襲ってきた。だが彼等は、それを、顔にも、言葉にも現わさないように
痩我慢
(
やせがまん
)
を張っていた。
前哨
(新字新仮名)
/
黒島伝治
(著)
叔母は自分の意見を採用しながら、まだ、
痩我慢
(
やせがまん
)
に態のよいことを云ってると見て取り、得意の微笑を
泛
(
うか
)
べながら
河明り
(新字新仮名)
/
岡本かの子
(著)
昔スパルタの教育に、狐を隠してその狐が自分の
腸
(
はらわた
)
をえぐり出しても、なお黙っていたということがあるが、今はそういう
痩我慢
(
やせがまん
)
はなくなったのである。
教育と文芸
(新字新仮名)
/
夏目漱石
(著)
私は寒い冬の
夜
(
よ
)
なぞ、日本伝来の迷信に養われた子供心に、われにもあらず幽霊や何かの事を考え出して一生懸命に
痩我慢
(
やせがまん
)
しつつ
真暗
(
まっくら
)
な廊下を独り
厠
(
かわや
)
へ行く時
日和下駄:一名 東京散策記
(新字新仮名)
/
永井荷風
(著)
そしたら君は大金持だ。武田君、僕は君が
痩我慢
(
やせがまん
)
を捨てて、僕の軍門に下ることを祈る。僕が生きているかぎり、日本はとてもわが米国と戦争なんか出来っこないよ。
昭和遊撃隊
(新字新仮名)
/
平田晋策
(著)
彼はたかが女一匹とふたたび心で叫んで見たが、それはもはや
虚
(
むな
)
しい
痩我慢
(
やせがまん
)
にすぎない言葉だった。
野に臥す者
(新字新仮名)
/
室生犀星
(著)
家一つ戴いて
何程
(
どれほど
)
の事があろう、
痩我慢
(
やせがまん
)
な行過ぎだと、小腹が立って帰りましたが、それといって棄てておかれぬ、直ぐにといってお嬢様が、ちょうどまたお加減が悪い処
黒百合
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
名倉の
阿爺
(
おとっ
)
さんなぞは、君、今に僕が
共潰
(
ともつぶ
)
れに成るか成るかと思って、あの通り
熟
(
じっ
)
と黙って見てる……決して僕を助けようとはしない。実に、強い人だネ。僕もまた、
痩我慢
(
やせがまん
)
だ。
家:02 (下)
(新字新仮名)
/
島崎藤村
(著)
昔の多少は
大人
(
おとな
)
げなく見えた蘇武の
痩我慢
(
やせがまん
)
が、かかる大我慢にまで成長しているのを見て李陵は驚嘆した。しかもこの男は自分の行ないが漢にまで知られることを予期していない。
李陵
(新字新仮名)
/
中島敦
(著)
たとえ、四等に
蹲
(
うずくま
)
って居ても、こゝに集まって居る見物の殆どすべてよりも、芝居に就いては、分って居るのだ。そう思うと、淋しい
痩我慢
(
やせがまん
)
が出来た。自分は可なり熱心に見て居た。
天の配剤
(新字新仮名)
/
菊池寛
(著)
お帰りになったときの
悦
(
よろこ
)
びが余計になるばかりだと思って、
痩我慢
(
やせがまん
)
していたんだけれど、——あなたがもうお帰りになると私の思い込んでいた時間をずうっと過ぎてもお帰りにならないので
風立ちぬ
(新字新仮名)
/
堀辰雄
(著)
とわけのわからぬ負け惜しみの
屁理窟
(
へりくつ
)
をつけて
痩我慢
(
やせがまん
)
の胸をさすり、家へ帰って一合の
晩酌
(
ばんしゃく
)
を女房の顔を見ないようにしてうつむいて飲み、どうにも
面白
(
おもしろ
)
くないので、やけくそに大めしをくらって
新釈諸国噺
(新字新仮名)
/
太宰治
(著)
「強情ね。
痩我慢
(
やせがまん
)
ね。いつまでも、あなたは」
女婿
(新字新仮名)
/
佐々木邦
(著)
だが、グラス持つ手は、彼の悲壮な
痩我慢
(
やせがまん
)
を裏切って、みじめにも打震え、中の液体がボトボトと卓上にあふれ出た。
吸血鬼
(新字新仮名)
/
江戸川乱歩
(著)
やや
分別臭
(
ふんべつくさ
)
いのまでが、何しろ天下の豪傑だから、このくらいのことは無理もありますまい——と
痩我慢
(
やせがまん
)
をする。
大菩薩峠:24 流転の巻
(新字新仮名)
/
中里介山
(著)
見方次第では
痩我慢
(
やせがまん
)
とも虚栄心とも解釈のできるこの気位が、叔母に対する彼女を、この一点で強く
牽制
(
けんせい
)
した。
明暗
(新字新仮名)
/
夏目漱石
(著)
「だって、
住吉
(
すみよし
)
、天王寺も見ない
前
(
さき
)
から、大阪へ着いて早々、あの
婦
(
おんな
)
は? でもあるまいと思う。それじゃ慌て過ぎて、振袖に
躓
(
けつまず
)
いて転ぶようだから、
痩我慢
(
やせがまん
)
で
黙然
(
だんまり
)
でいたんだ。」
南地心中
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
が親分さん、これが仲間や他人なら、
痩我慢
(
やせがまん
)
も申しますが、親分の前で、体裁の良いことを言っても、何にもなりません——どんなに
歯軋
(
はぎし
)
りしても、三村屋は今日限りでございます。
銭形平次捕物控:059 酒屋火事
(新字新仮名)
/
野村胡堂
(著)
それは
痩我慢
(
やせがまん
)
とも
捨
(
す
)
て
鉢
(
ばち
)
とも思えるものだった。しかし一番底の感情は、都会っ児の彼の臆病からだった。彼は斯ういう態度を取って居なければ直ぐに滅入った気持ちに誘い込まれた。
とと屋禅譚
(新字新仮名)
/
岡本かの子
(著)
はじめ捕えられたとき、いきなり自分の胸を刺した蘇武に、今となって急に死を恐れる心が
萌
(
きざ
)
したとは考えられない。李陵は、若いころの蘇武の片意地を——
滑稽
(
こっけい
)
なくらい強情な
痩我慢
(
やせがまん
)
を思出した。
李陵
(新字新仮名)
/
中島敦
(著)
「それが
痩我慢
(
やせがまん
)
ですよ。あなたはそれが癖なんですよ。損じゃあ、ありませんか、好んで人に
嫌
(
きら
)
われて……」
野分
(新字新仮名)
/
夏目漱石
(著)
痩
常用漢字
中学
部首:⽧
12画
我
常用漢字
小6
部首:⼽
7画
慢
常用漢字
中学
部首:⼼
14画
“痩”で始まる語句
痩
痩躯
痩形
痩馬
痩身
痩腕
痩肉
痩衰
痩浪人
痩脛