ひど)” の例文
粗末な造作なので、私のゐる部屋の上に當る寢室では、三人の兄弟が半分怒つたり、半分ふざけてゐるらしく、どすん/\とひどい足音を響かせた。
小さき影 (旧字旧仮名) / 有島武郎(著)
と是から血を出し、わが姓名の下へすとはひどい事をしたもので、ちょいと切って、えゝとるので、いやな事であります。
菊模様皿山奇談 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)
彼女はひどく才の勝つた女で、屹度きつと一生のうちに郷里の人の驚くやうな女になつてやらねば、とは束の間も彼女の胸に斷えたことのない祈願であつた。
姉妹 (旧字旧仮名) / 若山牧水(著)
本職の文壇人として、舞台あるいは幕裏のあるいは楽屋がくやの人間として扱われるのをひどくイヤがっていた。
二葉亭追録 (新字新仮名) / 内田魯庵(著)
「まアひどいこと! それで貴下あなたはどうなさいました。」とお正の眼は最早もう潤んでいる。
恋を恋する人 (新字新仮名) / 国木田独歩(著)
『これ、水兵すいへい少年せうねんひど疲勞つかれる、あまりさわいではいかぬ』と打笑うちえみつゝ
なにおこつてらつしやるんぢやアなからうかてつて、ひど彼婦あのこが心配してえるんですよ、ナニおまへ失策しくじ気遣きづかひはないよ、アノときおく見通みとほしにてエたのは
世辞屋 (新字旧仮名) / 三遊亭円朝(著)
するとその翌る晩、十一時過ぎに安成が来て、「大杉が行方不明ゆくえふめいとなりました、」とひど昂奮こうふんして
最後の大杉 (新字新仮名) / 内田魯庵(著)
稻妻いなづまといつて、櫻木大佐さくらぎたいさ秘藏ひぞういぬよしかたち犢牛こうしほど巨大おほきく、眞黒まつくろな、のキリヽと卷上まきあがつた、非常ひじやうたくましきいぬで、それがひど日出雄少年ひでをせうねんつて、始終しじゆう稻妻いなづまや/\。』と
新知識を振廻すものがあるとひどしゃくさわるらしく、独逸語や拉丁ラテン語を知っていたって端唄の文句は解るまいと空嘯そらうそぶいて、「君、和田平のうなぎを食った事があるかい?」などとかたきを討ったもんだ。
斎藤緑雨 (新字新仮名) / 内田魯庵(著)
処で、此「ドール」といふ奴はひどく人間を嫌つて決して影を見せないさうだが、敏捷活溌で頗る猟が上手である。豹のやうな木に登るものや象のやうな図抜けて大きな身幹づうたいのものゝ外は何でも捕る。
犬物語 (新字旧仮名) / 内田魯庵(著)