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狡智
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こうち
ふりがな文庫
“
狡智
(
こうち
)” の例文
陰険で、しんねり
狡
(
ずる
)
い
劉高
(
りゅうこう
)
は、そんなこともあろうかと、
花邸
(
かてい
)
の諸門に見張りを伏せておき、その
狡智
(
こうち
)
がまんまと図に
中
(
あた
)
ったことを
新・水滸伝
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
そもそもどこからあれだけの
狡智
(
こうち
)
を得てきたのか、彼はわれながら合点がいかなかった……とすぐに、戸締まりの栓を抜く音が聞こえた。
罪と罰
(新字新仮名)
/
フィヨードル・ミハイロヴィチ・ドストエフスキー
(著)
狡智
(
こうち
)
の極を縦横に駆使した手紙のような気がしていたのですが、いま読んでみて案外まともなので拍子抜けがしたくらいです。
誰
(新字新仮名)
/
太宰治
(著)
そして、それが同時に川手氏をこの上もなく脅えさせる手段ともなったのですから、犯人の
狡智
(
こうち
)
には全く驚く外ありません。
悪魔の紋章
(新字新仮名)
/
江戸川乱歩
(著)
これこそ
類
(
たぐ
)
い稀れな犯人の
狡智
(
こうち
)
の手段でありまして、この置き残された鈴一つに、歌川一馬先生を自殺の形で殺す時の用意がこもっていたのです
不連続殺人事件
(新字新仮名)
/
坂口安吾
(著)
▼ もっと見る
灰色でなく、上部はそっけなく見せながら油断を見澄まして
搦手
(
からめて
)
から人の愛着の情に浸み込もうとする
狡智
(
こうち
)
の極の
媚
(
こ
)
びを基調の地に用意しています。
生々流転
(新字新仮名)
/
岡本かの子
(著)
これらの型の差異は、必ずしも道徳的な善悪の差ではなく、多くは手腕や才能の差であり、マキアヴェリの
狡智
(
こうち
)
、策略、知恵、
聰明
(
そうめい
)
の問題であることが多いのである。
政治学入門
(新字新仮名)
/
矢部貞治
(著)
咆
(
ほ
)
えもせず、じっと瞳を
据
(
す
)
えて人間を見わたしている、
狡智
(
こうち
)
、残忍というか
慄
(
ぞ
)
っとなるような光。
人外魔境:08 遊魂境
(新字新仮名)
/
小栗虫太郎
(著)
そしてある日大
溝渠
(
こうきょ
)
の中で出会った男がいかなる人物であったかを、
狡智
(
こうち
)
によって発見した、あるいは少なくとも帰納的に察知し得た。その名前までも容易に推察した。
レ・ミゼラブル:08 第五部 ジャン・ヴァルジャン
(新字新仮名)
/
ヴィクトル・ユゴー
(著)
しかも女人の顔といふものは、その爪のむざんな攻撃の前に、おどろくべき柔軟自在な、ときにはしぶといまでに
不逞
(
ふてい
)
な、
狡智
(
こうち
)
のかぎりをつくして抵抗するものなのである。
鸚鵡:『白鳳』第二部
(新字旧仮名)
/
神西清
(著)
かくも
狡智
(
こうち
)
な犯罪を企図した、社会の攪乱者、人間性の破壊者に対しては、はたしてモネス探偵の言うごとく、現行の法律が手も足も出ないほどの無力なる存在であったかどうか
陰獣トリステサ
(新字新仮名)
/
橘外男
(著)
私達は自分の言葉故に人の前に高慢となり、卑屈となり、
狡智
(
こうち
)
となり、
魯鈍
(
ろどん
)
となる。
惜みなく愛は奪う
(新字新仮名)
/
有島武郎
(著)
「理知の人」の幻の特徴——
倦怠
(
アニュイ
)
の空気にはまりこんで、絶えず不安の暗い影がその身辺をかすめながらも、そこから抜け出すことのできぬ、「冷たい懐疑」と「
貪婪
(
どんらん
)
たる
狡智
(
こうち
)
」と
二十歳のエチュード
(新字新仮名)
/
原口統三
(著)
中谷も一旦は調べられましたが
素
(
もと
)
より
狡智
(
こうち
)
に
長
(
た
)
けた彼は巧く
云遁
(
いいのが
)
れたようです。
流転
(新字新仮名)
/
山下利三郎
(著)
狡智
(
こうち
)
で、一生を、楽々と送ることばかり考えて来た人間だ。
雪之丞変化
(新字新仮名)
/
三上於菟吉
(著)
あらゆる女を経てきた彼の自信は、いまやどうそれを
𩚚欲
(
あくよく
)
すべきか、愉しもうかと、まずは思案するほどな、ゆとりと
狡智
(
こうち
)
なのだった。
新・水滸伝
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
彼の魂は
高邁
(
こうまい
)
だった。その学識は深遠であった。そして彼は俗界の
狡智
(
こうち
)
に馴れなかった。小児の如くに単純だった。
道鏡
(新字新仮名)
/
坂口安吾
(著)
だがもう肺尖などとうに治っている。保養とは世間の人に云う上べの言葉で、……と規矩男は稚純に顔を
赫
(
あか
)
らめながら、やや
狡智
(
こうち
)
らしく鼻の先だけで笑った。
母子叙情
(新字新仮名)
/
岡本かの子
(著)
重ね重ね、私がぱちんと電燈を消したということは、全く私の卑劣きわまる
狡智
(
こうち
)
から出発した仕草であって、
寸毫
(
すんごう
)
も、どろぼうに対する思いやりからでは無かったのである。
春の盗賊
(新字新仮名)
/
太宰治
(著)
前にいった
狡智
(
こうち
)
、機略、
聰明
(
そうめい
)
の資質に含めてよかろう。
政治学入門
(新字新仮名)
/
矢部貞治
(著)
わざと、こなたの手出しを誘い、それを合図に、また口実に、
一
(
いっ
)
せい市街から大内へまで、なだれ込まんとする憎い
狡智
(
こうち
)
だ。そう思わぬか
私本太平記:09 建武らくがき帖
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
胸の秘密、絶対ひみつのまま、
狡智
(
こうち
)
の極致、誰にも打ちあけずに、そのまま息を静かにひきとれ。やがて
冥途
(
めいど
)
とやらへ行って、いや、そこでもだまって
微笑
(
ほほえ
)
むのみ、誰にも言うな。
二十世紀旗手
(新字新仮名)
/
太宰治
(著)
玉日は、是非の判断なくいいきってしまった言葉のてまえ、その
狡智
(
こうち
)
な眼が怖くもあり、なんとしても防がなければならない気持に駆られた。
親鸞
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
浅田の
狡智
(
こうち
)
にだまされた青砥左衛門尉藤綱は、その夜たいへんの
御機嫌
(
ごきげん
)
で帰宅し、女房子供を一室に集めて、きょうこの父が滑川を渡りし時、火打袋をあけた途端に銭十一文を川に落し
新釈諸国噺
(新字新仮名)
/
太宰治
(著)
その水玉の傘が地まで落ちないうちに、河中の
鶺鴒
(
せきれい
)
はぱっと跳んで返って、いわゆる抜く手も見せない間髪に、
狡智
(
こうち
)
に
長
(
た
)
けたその卑怯者を斬り
撲
(
なぐ
)
った。
宮本武蔵:06 空の巻
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
本当に、私はあの手紙の一行々々に
狡智
(
こうち
)
の限りを尽してみたのです。
斜陽
(新字新仮名)
/
太宰治
(著)
彼方
(
かなた
)
に立ちどまっているお通の姿を見てから、急に、
老婆
(
としより
)
らしい
狡智
(
こうち
)
を思いついて、胸のうちでそう呟いた。
宮本武蔵:04 火の巻
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
然し、
肯
(
き
)
こうはずのないのが、血気派だった。
頑然
(
がんぜん
)
と首を振る。額にすじを走らせて、それを大野の
狡智
(
こうち
)
である、臆病である、又いやしむべき武人の態度だと罵って
新編忠臣蔵
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
窮地となっても、意地
穢
(
きた
)
なく、小心
狡智
(
こうち
)
、あらゆる非武士的な行為にみずから
辱
(
は
)
じても、飽くまで生きて帰るところへ帰ることをもって、乱波組に働く者の本旨とする。
新書太閤記:04 第四分冊
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
いかにも、仰っしゃる通り、
狡智
(
こうち
)
に
長
(
た
)
けた官僚くさい男ですが……ただ彼奴は、常陸の内情を
平の将門
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
だが伊織は、
狡智
(
こうち
)
に
長
(
た
)
けた狐のことだから、そう人間の眼には見せて、実は自分の後ろにかくれておりはしないかと、そこらの草むらを、足で蹴ちらしながら、
詮議
(
せんぎ
)
してみた。
宮本武蔵:06 空の巻
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
しかし、そこに彼の
狡智
(
こうち
)
と、売名上手が
潜
(
ひそ
)
んでおる。世の同情は彼の期したとおり、彼の一身に集まった。——けれどあの勝負などは、わしの眼からみればまるで児戯にひとしい。
宮本武蔵:05 風の巻
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
右手の中指を、頬のクボに当てて考え込む
容子
(
ようす
)
は、たとえば、
狡智
(
こうち
)
に
長
(
た
)
けた
老獣
(
ろうじゅう
)
が、餌物を爪で抑えながら、さてどう肉を
捌
(
さば
)
いて食おうかとしているような余裕とほくそ笑みをつつんでいる。
平の将門
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
狡智
(
こうち
)
をしぼって、彼の案出したのが、
西洞院
(
にしのとういん
)
の西の空地へ、吉岡流兵法の
振武閣
(
しんぶかく
)
というものを建築するという案で——社会の実態を
鑑
(
かんが
)
みるに、いよいよ武術は
旺
(
さかん
)
になり、諸侯は武術家を要望している。
宮本武蔵:04 火の巻
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
汝、いかに
狡智
(
こうち
)
を
弄
(
ろう
)
すとも、力をもって荊州を取ることを得んや
三国志:09 図南の巻
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
「あの薄あばたが、やりおりそうな
狡智
(
こうち
)
ではある!」
私本太平記:12 湊川帖
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
狡
漢検1級
部首:⽝
9画
智
漢検準1級
部首:⽇
12画
“狡智”で始まる語句
狡智佞弁
狡智深謀