牛耳ぎゅうじ)” の例文
だけど、僕、ねえ、父さん、僕、フランス語の作文でなら、近いうち、だんぜん牛耳ぎゅうじって見せるよ。そして、そいつを続けてみせるよ。
にんじん (新字新仮名) / ジュール・ルナール(著)
英山は文化初年鳥居清長歿し続いて喜多川歌麿世を去りしのち初めは豊国と並び後には北斎と頡頏きっこうして一時いちじ浮世絵界の牛耳ぎゅうじれり。
江戸芸術論 (新字新仮名) / 永井荷風(著)
多紀氏は江戸時代の漢方医学の牛耳ぎゅうじを握って、あるいは医学校を創立して諸生を教え、あるいは書物を校刊して学者の研鑽けんさんの資に供した官医で
鴎外の思い出 (新字新仮名) / 小金井喜美子(著)
振り返って見ると、兄の鏡之介である——真庭念流の剣客で、下妻藩の若侍たちのあいだに、牛耳ぎゅうじをとっている荒武者。
平馬と鶯 (新字新仮名) / 林不忘(著)
ゴリキイはレニンに全く牛耳ぎゅうじられて易々諾々いいだくだくのふうがあった、プルウストのかの出版屋への三拝九拝の手紙、これをこそ、きみ、リアルというか。
HUMAN LOST (新字新仮名) / 太宰治(著)
この三名がいわば江戸に残っている旧藩士の在府組の牛耳ぎゅうじを執っている者たちであり、即時断行を、持論としていた。
新編忠臣蔵 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
八五郎は一言いちごんもありませんでした。お神楽の清吉に牛耳ぎゅうじられて、日頃の八五郎に似気なく、ほとんど周助殺しの調べの筋も通してはこなかったのです。
その女はその頃露悪的な冗談を言っては食堂へ集まって来る他の付添婦たちを牛耳ぎゅうじっていた中婆さんなのだった。
のんきな患者 (新字新仮名) / 梶井基次郎(著)
ただ取柄なのは、家庭や団体なんかが牛耳ぎゅうじれそうな精力的なところなんですが……僕あそんなもの欲しくないんです
母子叙情 (新字新仮名) / 岡本かの子(著)
去年まで応援団に牛耳ぎゅうじっていた新太郎君と寛一君は○○大学の成績が益〻好いにつれて、ソロ/\日曜丈けでは堪能たんのう出来なくなった。但し二人は意味が違う。
脱線息子 (新字新仮名) / 佐々木邦(著)
倉地が日清にっしん戦争にも参加した事務長で、海軍の人たちにも航海業者にも割合に広い交際がある所から、材料の蒐集しゅうしゅう者としてその仲間の牛耳ぎゅうじを取るようになり
或る女:2(後編) (新字新仮名) / 有島武郎(著)
例の南条力が牛耳ぎゅうじを取っていて、このごろ暫く姿を見せなかった五十嵐甲子雄も、そのわきに控えています。
大菩薩峠:20 禹門三級の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
なかなかな変り者で、またごくずいの勉強家で、その丹念なことにいたっては驚くばかりでした。後に大阪に帰り、京阪地方で彫刻家の牛耳ぎゅうじを取るようになりました。
六帖へ戻るとすぐ、亀吉が隣りの女の子をれて来、お芳といっしょに遊び始めた。隣りのおたつは五つ、亀吉は七つであるが、どちらもお芳に牛耳ぎゅうじられていた。
ちゃん (新字新仮名) / 山本周五郎(著)
綾之助党は三田の慶応義塾と芝の攻玉舎こうぎょくしゃの生徒が牛耳ぎゅうじをとっていた。それが今日の堂摺連どうするれんの元祖である。
竹本綾之助 (新字新仮名) / 長谷川時雨(著)
ダリアはこの事を勿論もちろん感づいた。しかしだネ、彼女は悪魔だけに賢明だった。事を荒立あらだてる代りに、一層いっそう深山の弱点を抑えて、徹底的にこれを牛耳ぎゅうじってしまう考えだった。
赤外線男 (新字新仮名) / 海野十三(著)
牛の耳の乾物ほしもの——私は西班牙スペインまで来て、今日はじめて「牛耳ぎゅうじを取る」という意味が解った。
座談を進んで牛耳ぎゅうじったし、弁護士は弁護士で、初め身体が弱っていると言ったのはどうも新しい訪問客を追っ払うためのものだったらしく、手を耳にあてて注意深く聞いていた。
審判 (新字新仮名) / フランツ・カフカ(著)
今になって、おもい当たる。宮川先生も君、あれで中津川あたりじゃ国学者の牛耳ぎゅうじを執ると言われて来た人ですがね、年をとればとるほど漢学の方へもどって行かれるような気がする。
夜明け前:01 第一部上 (新字新仮名) / 島崎藤村(著)
その京都ではすでに「浪士」派の「学習院党」が陰然政界を牛耳ぎゅうじっている。
新撰組 (新字新仮名) / 服部之総(著)
彼らはそれぞれ自分の新聞をもっていた。大胆な立ち入った覚え書きを発表していた。人真似まねをして時間をつぶす遊惰な大子供たるパリー人中で、それらの完全なさるどもが牛耳ぎゅうじを取っていた。
それは市役所が民政党のために牛耳ぎゅうじられていると君達が考えていることについてだ、このことは栄誉ある市役所のために声を高くして弁じたい、市は市として独自の建前があり、市民全般の福利
糞尿譚 (新字新仮名) / 火野葦平(著)
で自然、堂上の若い層を牛耳ぎゅうじって、その先駆者をもって、みずから任じているのも、道理とこそは思われた。
私本太平記:02 婆娑羅帖 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
イハンヤワガ江戸ノ大ナルヤ、文章ノ淵藪えんそうニシテ、牛耳ぎゅうじヲ執リ盟主トナル者騒壇ニ角立スルヲヤ。余故ニカツテ曰ク江戸諸公ノ詩ハ海内学者ノ模楷もかい規矩タリ。
下谷叢話 (新字新仮名) / 永井荷風(著)
僕達は幸いにして、校長の期待にそむかなかった。以来二十年、中島君と僕は温泉組合を牛耳ぎゅうじっている。
ある温泉の由来 (新字新仮名) / 佐々木邦(著)
たちまちのうちにその牛耳ぎゅうじを握り、外国宣教師だとか、貴婦人だとかを引き入れて、政略がましく事業の拡張に奔走するようになると、内田はすぐきげんを損じて、早月親佐さつきおやさを責めて
或る女:1(前編) (新字新仮名) / 有島武郎(著)
明らかにほかの二人を牛耳ぎゅうじっているらしい一人の男がまず彼の眼をひいたが、一種の濃い色の革服を着て、くびから胸元深くまでと両腕全体とをむきだしにしていた。この男は黙っていた。
審判 (新字新仮名) / フランツ・カフカ(著)
「僕あ、すぐ、この辺を牛耳ぎゅうじっちゃうよ」
母子叙情 (新字新仮名) / 岡本かの子(著)
勝家はすでに、牛耳ぎゅうじを取ったものとたのだ。ところが
新書太閤記:08 第八分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)