ぢゞ)” の例文
「モルラ」といふたはぶれせんと集ひたりし男ども、道に遊び居たりし童等は、早くこれを見付けて、見よ人々、猶太のぢゞこそ來ぬれと叫びぬ。
「あのぢゞい、中々なか/\ずるやつですよ。華山くわざん僞物にせものつて押付おつつけやうとしやがるから、いましかつけつたんです」とした。
(旧字旧仮名) / 夏目漱石(著)
これより、「ぢゞ茶屋ぢやや」「箱根はこね」「原口はらぐちたき」「南瓜軒なんくわけん」「下櫻山しもさくらやま」をて、倒富士さかさふじ田越橋たごえばしたもとけば、すぐにボートを眞帆まほ片帆かたほのぞむ。
逗子だより (旧字旧仮名) / 泉鏡花(著)
言語げんぎよには東北の訛がある。此ぢゞを連れて本堂の北方にある墓地に入つて、街に近い西の端から捜しはじめた。西北隅は隣地面の人が何やら工事を起して、土を掘り上げてゐる最中である。
伊沢蘭軒 (新字旧仮名) / 森鴎外(著)
「少しくらゐ毛が拔けたつて命に別條はないよ。剛情なぢゞいぢやないか」
たつとき事もあり、あはれなる事もあり、少しは空物語そらものがたりもあり、利口りこうなる事もありと前文ぜんぶんしるかれたり、竹取物語たけとりものがたり宇津保物語うつぼものがたりはなし父母ちゝはゝにして、それよりしもかたいたりては、ぢゞは山へ、ばゞは川へ洗濯せんたく
落語の濫觴 (新字旧仮名) / 三遊亭円朝(著)
ぢゞは波を知らずばゞは潮の音を知らず孫は千鳥を鷄の雛かとぞ思ふ
藤村詩抄:島崎藤村自選 (旧字旧仮名) / 島崎藤村(著)
ぢゞ茶屋ぢややは、おきなひとりて、燒酎せうちうあぶら蚊遣かやりるゐひさぐ、ゆゑふ。
逗子だより (旧字旧仮名) / 泉鏡花(著)