炮烙ほうろく)” の例文
病友はまたずっとさかのぼった幼時の思い出を懐しもうとするのか、フライパンで文字焼を焼かせたり、炮烙ほうろくで焼芋を作らせたりした。
食魔 (新字新仮名) / 岡本かの子(著)
この茗荷谷を小日向水道町すいどうちょうの方へ出ると、今も往来の真中に銀杏いちょうの大木が立っていて、草鞋わらじ炮烙ほうろくが沢山奉納してある小さなお宮がある。
それから料理する前に炮烙ほうろくでよくって湯の中へ適宜てきぎに入れて塩と砂糖を加えて三十分ばかりまわしながら煮ると粉末こなふくれてドロドロになる。
食道楽:春の巻 (新字新仮名) / 村井弦斎(著)
土焼どやきかまど七厘しちりん炮烙ほうろく、または厨子ずしなどにもしっかりした形のものを作ります。仙台の人たちはこの窯の雑器をもっと重く見るべきでありましょう。
手仕事の日本 (新字新仮名) / 柳宗悦(著)
勝手もとを取り散らしてゐるおくみは、前垂れのはしで胡麻をつた炮烙ほうろくを取り下して、考へ迷ふやうにかう言つた。
桑の実 (新字旧仮名) / 鈴木三重吉(著)
半時ほど旋りて胴中炮烙ほうろくの大きさに膨れまた舞う内に後先あとさき各二に裂けて四となり、また舞い続けて八となり、すなわちたこりて沖に游ぎ去ったと見ゆ。
蚊やり線香を焚くといいんだが、うちでは除虫菊を炮烙ほうろくへ入れてくすべることにしているんでね
蓼喰う虫 (新字新仮名) / 谷崎潤一郎(著)
デビス先生は左の手で泣く子の頭をで、右手の金網の炮烙ほうろくでハゼ玉蜀黍もろこしをあぶりつゝ、プチヽヽプチヽヽ其はぜるおとを口真似して笑いながら頭を掉られた。其つゞきである。
みみずのたはこと (新字新仮名) / 徳冨健次郎徳冨蘆花(著)
この頃の温気うんきてられたせいか、地上に近い大気は、晴れながら、どんよりと濁つて、その所々に、あられ炮烙ほうろくで煎つたやうな、形ばかりの雲の峰が、つぶつぶと浮かんでゐる。
酒虫 (新字旧仮名) / 芥川竜之介(著)
あるいは又ヨジユムを作って見ようではないかと、色々書籍しょじゃく取調とりしらべ、天満てんま八百屋市やおやいちに行て昆布荒布あらめのような海草類をかって来て、れを炮烙ほうろくいっ如何どう云うふうにすれば出来ると云うので
福翁自伝:02 福翁自伝 (新字新仮名) / 福沢諭吉(著)
我もそを聞きて半黒を善きもののやうに思ひし事あり。またこの夜四辻にきたなき犢鼻褌ふんどし炮烙ほうろく火吹竹ひふきだけなど捨つるもあり。犢鼻褌のたぐいを捨つるは厄年の男女その厄を脱ぎ落すの意とかや。
墨汁一滴 (新字旧仮名) / 正岡子規(著)
それを炮烙ほうろくってお八つの代わりに食ったりした。それは百合ゆりのような鱗片りんぺんから成った球根ではあったが、大きさや格好は今度のと似たものであった。彼はその時分の事をいろいろ思い出していた。
球根 (新字新仮名) / 寺田寅彦(著)
「まして炮烙ほうろくの刑なんど……」
蔦葛木曽棧 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
第三 炒米いりごめの粥 これは一旦いったんお米の洗ったのを乾かせて炮烙ほうろくでよく炒って少し塩を加えて水から気長に弱い火で煮ます。
食道楽:秋の巻 (新字新仮名) / 村井弦斎(著)
芝日蔭町しばひかげちょうさばをあげるお稲荷様があるかと思えば駒込こまごめには炮烙ほうろくをあげる炮烙地蔵というのがある。頭痛を祈ってそれがなおれば御礼として炮烙をお地蔵様の頭の上に載せるのである。
伊勢の御笥作り内人うちんど土屋氏は昔槌屋と称え、豪富なりしをにくみ数十人囲みやぶりに掛かりかえって敗北した時、荒木田守武あらきだもりたけの狂歌に「宇治武者は千人ありとも炮烙ほうろくの槌一つにはかなはざりけり」
その代り目の廻るほど忙しきは下女の役、一人はしきりに南京豆を炮烙ほうろくにてり、一人は摺鉢すりばちにて搗砕つきくだく。妻君客をかえり
食道楽:春の巻 (新字新仮名) / 村井弦斎(著)
白胡麻ならば炮烙ほうろくって擂鉢で摺ってその中へ今取っておいた油揚の白味を入れてまた摺ります。
食道楽:秋の巻 (新字新仮名) / 村井弦斎(著)
先ず麻の布巾ふきんのようなもので米をゴシゴシこするようにいて炮烙ほうろくか鉄鍋で狐色にります。
食道楽:冬の巻 (新字新仮名) / 村井弦斎(著)
先ず玄米をよくいて碾臼ひきうすいて粉にして炮烙ほうろくで狐色になるまでります。
食道楽:冬の巻 (新字新仮名) / 村井弦斎(著)