)” の例文
浪間と浪の陰に当るところは、金沙きんさを混ぜた緑礬液りょくばんえきのように、毒と思えるほど濃く凝って、しかもきらきら陽光をき込んでいる。
河明り (新字新仮名) / 岡本かの子(著)
さすがに、そのあたりからは家もなく、荒地や刈田がひろびろと展開し、あちらこちらに海苔のりき小屋が建っているだけ、という風景になった。
青べか物語 (新字新仮名) / 山本周五郎(著)
一日かかって四十かぞくのは、普通一人前いちにんまえの極度の仕事であったが、おとらは働くとなると、それを八十把も漉くほどの働きものであった。
あらくれ (新字新仮名) / 徳田秋声(著)
顔料だけは、持ち合せのもので辛うじて間に合せましたが、画布キャンヴァスがなく、むを得ず市民の好意で、紙草パピュルスいてもらい、これに描いておりました。
ウニデス潮流の彼方 (新字新仮名) / 橘外男(著)
日本には紙をく法が二つあって一つを溜漉ためずきといい、一つを流漉ながしずきといいます。前者は我国では少いのでありますが、「鳥の子」はこの法で漉かれます。
手仕事の日本 (新字新仮名) / 柳宗悦(著)
表からも裏からも見えないように、紙の中にき込んであったのだ。私はこの意外な発見に一層嬉しくなった。
未来の天才 (新字新仮名) / 豊島与志雄(著)
この縞はたぶん紙をく時に繊維を沈着させる簾の痕跡であろうが、裏側の荒い縞は何だか分らなかった。
浅草紙 (新字新仮名) / 寺田寅彦(著)
表へ向いた小屋の板戸が明いているので、津村はひとむらの野菊のすがれた垣根かきねの外にたたずみながら、見る間に二枚三枚といて行く娘のあざやかな手際てぎわを眺めた。
吉野葛 (新字新仮名) / 谷崎潤一郎(著)
朝夕に読誦どくじゅされる阿弥陀経は支那の紙ではもろくていかがかと思召おぼしめされ、紙屋かんや川の人をお呼び寄せになり特におかせになった紙へ、この春ごろから熱心に書いておいでになったこの経巻は
源氏物語:38 鈴虫 (新字新仮名) / 紫式部(著)
こうぞを、小鉢と呼ばれる椀に一杯盛り上げた量が一槽分で、三十枚乃至ないし三十五枚の紙になった。十五の年から父と交替できはじめた友太は、今では、若手のうちでも熟練者として数えられていた。
和紙 (新字新仮名) / 東野辺薫(著)
そこで一台に四頁を組みつけてそうして機械きの美濃半紙を一〆ひとしめずつ買って来てはそれにかけて甲源一刀流の巻の最初からやり出したものでとにかくあれが二三百頁あってそれを文選、植字、校正
生前身後の事 (新字新仮名) / 中里介山(著)
一枚取って見ると、謎の文句を書いた紙と全く同じきです。
かうがうし菊の御紋は透かしき人つつましも紙あつく
黒檜 (新字旧仮名) / 北原白秋(著)
えび舎人とねりはいずくへぞ
いい忘れましたが、栗太くりた上田上かみたなかみ桐生きりゅうでは、御用品として年々良質の「雁皮紙がんぴし」をきます。「雁皮紙」は和紙の主と讃えらるべきものであります。
手仕事の日本 (新字新仮名) / 柳宗悦(著)
しながら、人間の中に何か此の世に引き付けられるものがき込まれていて、解脱げだつが手の届くところまで来ていても、どうしても掴めずに引戻されるらしい
或る秋の紫式部 (新字新仮名) / 岡本かの子(著)
葛飾かつしかから浦粕一帯は海苔のりの産地として知られている、したがって、海苔をくのに使う海苔すだれ(約二十センチ四方ほどの大きさで、細い芦の軸で編んだ物)
青べか物語 (新字新仮名) / 山本周五郎(著)
私は名刺を戴いて懐に入れると、自分の名刺を中村君に呈したが、その名刺と云ふのが、きつ放しの日本紙へペン字の自署を石版刷りにした、悪く気取つたものだつた。
青春物語:02 青春物語 (新字旧仮名) / 谷崎潤一郎(著)
一枚取つて見ると、謎の文句を書いた紙と全く同じきです。
南村山郡の高松たかまつには「麻布あざぶ」と呼ぶごく薄手の紙をきます。かみやま温泉おんせんには遠くありません。この紙は漆をすのになくてはならない紙なのであります。
手仕事の日本 (新字新仮名) / 柳宗悦(著)
葛飾かつしかから浦粕一帯は海苔のりの産地として知られている、したがって、海苔をくのに使う海苔すだれ(約二十センチ四方ほどの大きさで、細い芦の軸で編んだ物)
青べか物語 (新字新仮名) / 山本周五郎(著)
人間中のあらゆる美しさをあつめて、き浄めた美しさだ。あれを拝めば人間の理想に対する求願ぐがんを強められる。高きもの、第一義のものに対して、はっきりした目標を定めさして頂ける。
阿難と呪術師の娘 (新字新仮名) / 岡本かの子(著)
躯はできものだらけで、胸のところは腫物はれものうみのため、着物がはりついて取れなくなっている。いつもどこかの海苔き小屋か、納屋か、ひび置き場に寝る。
青べか物語 (新字新仮名) / 山本周五郎(著)
ほどなく街道の左手にこうぞく仕事場を見つけた。舟もし場も野天である。何も大ぎょうな施設はない。これで天下第一の紙が生れるのである。楮紙の最上なものは全州産だという。
全羅紀行 (新字新仮名) / 柳宗悦(著)
けれども長堤も対岸の丘もかなり青みわたり、その青みの中に柔かいうす紅や萌黄もえぎの芽出しの色が一面にき込まれている。漉き込みあまって強い塊の花の色に吹き出しているところもある。
雛妓 (新字新仮名) / 岡本かの子(著)
「たとえ紙一枚だって、それをくにはいろいろな手数や、辛いおもいをするんだっていいますもの、ほんとになに一つだって、形のある物は大事にしなければねえ」
季節のない街 (新字新仮名) / 山本周五郎(著)
かがやく蒼空をいまき出すように頭上の薄膜はくまくの雲は見る見るはがれつつあった。
金魚撩乱 (新字新仮名) / 岡本かの子(著)
この土地で恋といえば、沖の百万坪にある海苔き小屋へいって寝ることであった。
青べか物語 (新字新仮名) / 山本周五郎(著)
この土地で恋といえば、沖の百万坪にある海苔のりき小屋へいって寝ることであった。
青べか物語 (新字新仮名) / 山本周五郎(著)
上下がってあり、左右はき放しで、薄い上品な卵色をしていた。
風流太平記 (新字新仮名) / 山本周五郎(著)