)” の例文
そういった人中ひとなかの商売は黒人くろとのことですから、万事に抜け目がなく、たとえば売りめの銭などは、バラでなげうって置いてある。
下水めにだって何も恥ずかしい軽蔑けいべつすべきものはないじゃありませんか? わたしなんかまっさきにどんな下水溜めでも
この前の戦争でずるい奴らに先を越されて損をしたが、今度はチャンと要領を覚えたから、今度戦争になってみろ、め、売り惜しみ、闇屋やみや
武者ぶるい論 (新字新仮名) / 坂口安吾(著)
なにより先に、あなたとの思い出が書きたく、すでに書きめの原稿紙げんこうしも五六十枚になった頃、偶然ぐうぜん、新宿の一食堂で、中村さんに逢いました。
オリンポスの果実 (新字新仮名) / 田中英光(著)
小僧は見えかくれにそのあとに従いて行って、自分は木の実を千切ったり、めを漁ったりして喰べて行った。
猿小僧 (新字新仮名) / 夢野久作萠円山人(著)
さすが京都で育っただけに、肌の白さ美しさ、眼鼻立ちから姿から何んとも云えずろうたけて見え、こんな山家へ持って来れば、正にめに鶴である。
蔦葛木曽棧 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
猫は目に見えて痩せて行きながら、めのさかなの骨などをあさつてゐた。「つまり都会的になつたんだよ。」——彼はこんなことを言つて笑つたりした。
貝殻 (新字旧仮名) / 芥川竜之介(著)
僕はめをあさる痩せ犬のように、鼻さきが鋭敏になって、あくまで耽溺の目的物を追っていたのである。
耽溺 (新字新仮名) / 岩野泡鳴(著)
プティー・バンキエ街のかどの所に、腰の曲がった婆さんが、街灯の光を頼りにめの中をかき回していた。
私はたんとお金も持つてはゐませんけれど、今日の売りめをみんなあげますから、それを、あなたがた、この鶴を見付けた人達の間で分けて、鶴は私に下さい。
竜宮の犬 (新字旧仮名) / 宮原晃一郎(著)
貝塚かいづか即ち石器せきき時代人民のめより宗教上しうけふじやうの物を發見はつけんすとは如何にも誠しからず聞こゆべしと雖も、一定いつていの時日をたる後、或は一定の祭祀さいしを終りたる後は
コロボックル風俗考 (旧字旧仮名) / 坪井正五郎(著)
貝塚かひづかといふのは、まへにもまをしたとほり、むかしひと海岸かいがんだとか、あるひは湖邊こへんだとかにんでゐて、平常へいじようつてゐた貝殼かひがらやその不用物ふようぶつをすてためのあとであります。
博物館 (旧字旧仮名) / 浜田青陵(著)
後ろからいてゆけば、加山、波越のふたりの潜行に邪魔をするようなものだから、いったん門をめて、雨水めの天水桶を踏み台にして、高い塀の上にすがり、首が生えたようにして
牢獄の花嫁 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
ゴミめのような棟割長屋の奥で、魚のように切られて死んでいるのを、あくる朝になってから、隣に住んでいる、まむし銅六どうろくという緡売さしうりの、いかさま博奕ばくちを渡世のようにしている男が見付け
怪我けがもしなかったことを私は安心しましたが、父はこんな突発的な場合にも素早く、馴れたものでそれというと、葛籠つづらの中の売りめを脇にはさんで
時遷じせんは、腹のうちで「まず、目ぼしはついた」と、取ッて返した。その日は旅籠はたごへもどって、忍び道具一式を調べ、さて晩になると、晩飯もたっぷり食いめ、真夜半、出かけだしたものだった。
新・水滸伝 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
これはれ合い喧嘩というので、その混雑の中で、懐中を抜くとか、売りめをろうとかするのです。