しる)” の例文
しかし本式にせんで略式にすれば先ず鍋の中へ少し水を入れて牡蠣を五分間ばかり煮立てると牡蠣の甘いしるが水へ出る。
食道楽:春の巻 (新字新仮名) / 村井弦斎(著)
青葉をもめば青いしるが出るやうに惱めば思ひはかぎりない。が、何ごともそれにばかりぴつたり執しすぎると、自分の重苦しさに堪へられなくなる。
こんな二人 (旧字旧仮名) / 長谷川時雨(著)
どりゃ、太陽そのゆるやうなまなこげて今日けふひるなぐさめ、昨夜さくや濕氣しっきかわかまへに、どくあるくさたふとしるはなどもをんで、吾等われらこのかごを一ぱいにせねばならぬ。
動いたあとには青いしるで何やら不安なものを書き付けて……見る間に三行四行と走って行く。
(新字新仮名) / 小川未明(著)
默想に心をたらはしつゝ、橄欖かんらんしる食物くひもののみにて、輕く暑さ寒さを過せり 一一五—一一七
神曲:03 天堂 (旧字旧仮名) / アリギエリ・ダンテ(著)
さうしてさかなくさい見物のなかに蠶豆の青いしるに小さな指さきを染めて、罪もなくその葉を鳴らしながら、ぱつちりと黒いを見ひらいて立つてゐたその兒をちらと私の見出した時に
思ひ出:抒情小曲集 (旧字旧仮名) / 北原白秋(著)
其の目からも、ぶよ/\とした唇からも、きたなしるが垂れさうな塩梅あんばい
伯爵の釵 (新字旧仮名) / 泉鏡花(著)
強いられた時、余はやむなく細長くかえった硝子のくだを傾けて、湯とも水ともさばけないしるを、舌の上にすべらせようと試みた。それが流れて咽喉のどくだあとには、いさぎよからぬねばり強いみだりに残った。
思い出す事など (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
大きさからいえばあんぽんたんが大蛇にむかったようなのに、蚯蚓の胴中からは濁った血——しるが出てくる。
トマトの皮を剥いたらば二つに割って種と水とを絞ってトマト一きんならば砂糖も同じく一斤の割でザラメ糖か角砂糖をかけてそのまま三、四時間置くと砂糖が溶けてトマトのしるが出ます。
食道楽:秋の巻 (新字新仮名) / 村井弦斎(著)
その目からも、ぶよぶよした唇からも、汚いしるが垂れそうな塩梅あんばい
伯爵の釵 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
嘴太はしぶと雨間あまあひの鴉しみじみあそびかはづ引き裂けば青きしる流る
雀の卵 (新字旧仮名) / 北原白秋(著)
ゼラチンとぜる時レモンとかあんずしるとかを加えるとなお美味しくなります
食道楽:春の巻 (新字新仮名) / 村井弦斎(著)
青きしる出す小さなる貝類のにほひを知る。
思ひ出:抒情小曲集 (旧字旧仮名) / 北原白秋(著)
いそぎんちやくのしるのむづかゆい雨。
東京景物詩及其他 (新字旧仮名) / 北原白秋(著)
青いしる出て地ににじむ。
思ひ出:抒情小曲集 (旧字旧仮名) / 北原白秋(著)