うえ)” の例文
普請ふしんも粗末だったが、日当ひあたり風通かぜとおしもよく、樹木や草花のおびただしくうえてあるのをわがものにして、夫婦二人きりの住居にはこの上もなく思われた。
果樹 (新字新仮名) / 水上滝太郎(著)
其處には青い草が短く伸びて、肥料も遣らずにツたらかしてある薔薇と宮城野萩の鉢うえとが七八ななやつ並んで、薔薇には、小さい花が二三輪淋しく咲いてゐた。
昔の女 (旧字旧仮名) / 三島霜川(著)
庭に下りて花をうえる時、街の角に立って車を待つ時、さては唯窓のすだれかんとする時吹く風に軽くたもとを払われてもたちまち征人せいじんきょうを望むが如き感慨を催す事があった。
雨瀟瀟 (新字新仮名) / 永井荷風(著)
その頃周蔵のいる家の前は、往来に出るまではたけの中に細道があって、その道の両側にかしの木や、はんの木や、桜の木や、椿の木がうえられてあり、木の根には龍のひげが植られてあった。
黄色い晩 (新字新仮名) / 小川未明(著)
かしかるべし御覽ごらんぜずやとわりなくすゝめてしばめづらしくともなでぬひとこゝろのうやむやはらずやしげ木立こだちすゞしくそでかぜむねにしゝうえはたす小田をだ早苗さなへ青々あほ/\として處々ところ/″\かわずこゑさま/″\なるれもうたかや可笑をかしとてホヽしうれもうれしく彼方かしこかやぶきこゝ垣根かきねにはうちしきやうなりはな
五月雨 (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)