未熟みじゅく)” の例文
それからわたくし未熟みじゅく自分じぶんにできるかぎりの熱誠ねっせいをこめて、三浦みうら土地とち災厄さいやくからまぬがれるようにと、竜神界りゅうじんかい祈願きがんめますと
「いや、わたしは、まだ未熟みじゅくでございます。あなたのあしもとへもまいりません。」と、おつは、謙遜けんそんして、こたえました。
二人の軽業師 (新字新仮名) / 小川未明(著)
未熟みじゅくながらも妾が代りて師匠となりいかにもして彼が望みを達せしめんと欲するなり、汝等が知る所にあらくこの場を去るべしと毅然きぜんとして云い放ちければ
春琴抄 (新字新仮名) / 谷崎潤一郎(著)
敵に怨みをふくむような小さいゆがんだ憤念ふんねんではない。自分の未熟みじゅくに対するいきどおりだった。
剣の四君子:02 柳生石舟斎 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
あるいは人を苦しめてなお蓄財ちくざいすることがあるにしても、その人よりも社会の制度が不完全ならびに輿論よろんがまだ未熟みじゅくにして、富者といわんよりは富貴ふうきの義務を自覚しないことを難じたい。
自警録 (新字新仮名) / 新渡戸稲造(著)
わたくしなどは修行しゅぎょう未熟みじゅく、それに人情味にんじょうみったようなものが、まだまだたいへんに強過つよすぎて、おもってきびしいしつけほどこ勇気ゆうきのないのがなによりの欠点けってんなのです。
「そんなら、あなたは、わたし未熟みじゅくげいをどこかでごらんくだされましたか……。」と、たずねました。
二人の軽業師 (新字新仮名) / 小川未明(著)
未熟みじゅくではあるが、兄の刀も、そう鈍作どんさくでないことは、お認めになったろうな』
山浦清麿 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
失明の後に始めて味到みとうしたいつもお師匠様は斯道しどうの天才であられると口では云っていたもののようやくその真価が分り自分の技倆ぎりょう未熟みじゅくさに比べて余りにも懸隔けんかくがあり過ぎるのに驚き今までそれを
春琴抄 (新字新仮名) / 谷崎潤一郎(著)
それが守護霊しゅごれいというものの役目やくめで、あなたの生活せいかつ同時どうじまた大体だいたいわたくし生活せいかつでもあったのです。わたくし修行しゅぎょう未熟みじゅくなばかりに、随分ずいぶんあなたにも苦労くろうをさせました……。
……どうぞげいは、未熟みじゅくですが、とおいところからきているとおもってかわいがってやってください。
白いくま (新字新仮名) / 小川未明(著)
「……ふウむ、一番未熟みじゅくというか」
剣の四君子:02 柳生石舟斎 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
こうさん、わたしも、じつは、西にしみやこへまいって、あなたのげいてすっかりおどろいてしまいました。そして、世間せけんがもてはやすのもあたりまえだと、自分じぶん未熟みじゅくずかしくおもったのでした。
二人の軽業師 (新字新仮名) / 小川未明(著)
こうして、未熟みじゅく三味線しゃみせんいて、ひとさまにかして、いくらかなりとおかねをもらおうとおもうのでありますが、だれも、見返みかえるものがない。かんがえれば、それがほんとうなのかもしれません。
ある冬の晩のこと (新字新仮名) / 小川未明(著)
そうおもうと、たとえ自分じぶんげい未熟みじゅくながら、かんがえずにいられようか、平常ふだんはたんすや、行李こうりなかへしまいこまれて、おにいらなければ、そのままむしにくわれ、永久えいきゅうてられるのである。
心の芽 (新字新仮名) / 小川未明(著)