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暁闇
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ぎょうあん
ふりがな文庫
“
暁闇
(
ぎょうあん
)” の例文
旧字:
曉闇
ひとみを
凝
(
こ
)
らすと、京都の町も、
暁闇
(
ぎょうあん
)
の底に、見えないことはない。だが、老坂や
三草
(
みくさ
)
の丹波
堺
(
ざかい
)
をふりむくと、まだ鮮明な星が数えられた。
新書太閤記:07 第七分冊
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
しずかな
暁闇
(
ぎょうあん
)
を破って、朗かな鴬の声を聞く毎に、「鶯の暁寒し」という其角の句を、今更のように思い出す。
古句を観る
(新字新仮名)
/
柴田宵曲
(著)
水色の蚊帳ばかりではない、
暁闇
(
ぎょうあん
)
ばかりではない。連日の雨に暮れて、雨に明ける日の、空が暗いのだ。それが、
簀戸
(
すど
)
を透して、よけいに、ものの
隈
(
くま
)
が濃い。
紫式部:――忙しき目覚めに
(新字新仮名)
/
長谷川時雨
(著)
彦兵衛は言うだけのことを言うと、娘と徳之助を
暁闇
(
ぎょうあん
)
の中に残したまま、
没義道
(
もぎどう
)
に戸をピシリと——
銭形平次捕物控:075 巾着切りの娘
(新字新仮名)
/
野村胡堂
(著)
源十郎が、灯心を摘んで油をくれると、ジジジジイと新しい光に、濃い
暁闇
(
ぎょうあん
)
が部屋の四隅へ退く。が、障子越しの廊下にたたずんでいる人影には、二人とも気がつかなかった。
丹下左膳:01 乾雲坤竜の巻
(新字新仮名)
/
林不忘
(著)
▼ もっと見る
暁闇
(
ぎょうあん
)
を、物々しく立ち騒ぐ風と波との中に、海面低く火花を散らしながら青い炎を放って、燃え上がり燃えかすれるその光は、幾百人の漁夫たちの命を勝手に支配する運命の手だ。
生まれいずる悩み
(新字新仮名)
/
有島武郎
(著)
秋も
更
(
ふ
)
けて、
暁闇
(
ぎょうあん
)
がすぐに
黄昏
(
たそがれ
)
となり、暮れてゆく年に憂愁をなげかけるころの、おだやかな、むしろ物さびしいある日、わたしはウェストミンスター寺院を
逍遥
(
しょうよう
)
して数時間すごしたことがある。
ウェストミンスター寺院
(新字新仮名)
/
ワシントン・アーヴィング
(著)
それに玄蕃允の弟、佐久間安政などの諸将が、余吾ノ湖の白い
汀
(
なぎさ
)
を、
暁闇
(
ぎょうあん
)
の下に見出でた頃が——ちょうどその刻限でなかったろうかと思われる。
新書太閤記:09 第九分冊
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
恐らく作者も寐起のところで、そういう
暁闇
(
ぎょうあん
)
の中に咲く梅花を認めたのであろう。自己の寐起を移して植物の上に及ぼしたなどというと、少し話が面倒になって来る。
古句を観る
(新字新仮名)
/
柴田宵曲
(著)
暁闇
(
ぎょうあん
)
が
萩
(
はぎ
)
のしずれに漂っていた。小蝶が
幾羽
(
いくつ
)
もつばさを畳んで眠っていた。
離家
(
はなれ
)
の明けてある戸をはいってゆくと、薄暗い
青蚊帳
(
あおがや
)
の中に、大きな顔がすっかりゆるんでいた。
旧聞日本橋:09 木魚の配偶
(新字新仮名)
/
長谷川時雨
(著)
闇黒
(
やみ
)
がひときわ濃いときがあるといいます。明け方の闇は、夜中の闇よりもいっそう深沈として——その
暁闇
(
ぎょうあん
)
につつまれた左膳、源三郎、萩乃の三人は、それぞれの立場で、凝然と考えこんだままだ。
丹下左膳:03 日光の巻
(新字新仮名)
/
林不忘
(著)
咽
(
むせ
)
るような潮の香の白く漂っている
暁闇
(
ぎょうあん
)
を
衝
(
つ
)
いて、えいえいと、
呼吸
(
いき
)
を弾ませながら城下へ入って来るのであった。
新編忠臣蔵
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
心
(
こころ
)
の
暁闇
(
ぎょうあん
)
丹下左膳:03 日光の巻
(新字新仮名)
/
林不忘
(著)
ゆうべは、一声も聴かれなかった千鳥が、今になって、
暁闇
(
ぎょうあん
)
の空をかすめながら、
海苔柴朶
(
のりしだ
)
の洲へ、啼いて落ちた。
松のや露八
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
そして、からからと笑ったのみで、番兵たちはことごとく震い怖れ、
暁闇
(
ぎょうあん
)
のそこここへ逃げ散ってしまった。
三国志:05 臣道の巻
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
すでにその頃、
暁闇
(
ぎょうあん
)
をへだてて、本能寺方面の空には何とも形容し難い物音が揚りはじめていた。いんいんと吹き鳴らす陣貝の音や
鉦鼓
(
しょうこ
)
のとどろきも聞えた。
新書太閤記:07 第七分冊
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
白々と、元日の町の屋根や橋は、初霞の底から
和
(
なご
)
やかな線をぼかしはじめたが、まだ空には星がよく見えるし、東山一帯のふところは、墨のような
暁闇
(
ぎょうあん
)
だった。
宮本武蔵:04 火の巻
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
声もかけぬ狂刃が、いきなり
暁闇
(
ぎょうあん
)
からおどったのはその時である。
颯然
(
さつぜん
)
たる
技力
(
ぎりょく
)
はないが、必死! と感じられる小脇差の切ッ
尖
(
さき
)
が、うしろから老人の
鬢
(
びん
)
をかすった。
鳴門秘帖:05 剣山の巻
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
今が初めての
荊棘
(
けいきょく
)
の道ではない。これが最後かと思う一歩前が、実は、次への悠久な道へ出る
暁闇
(
ぎょうあん
)
の
堺
(
さかい
)
であったことを、幼年の頃から幾度も身に
訓
(
おし
)
えられていたからである。
源頼朝
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
本街道なら珍しくもないが、播州路から
岐
(
わか
)
れて
高取越
(
たかとりご
)
えを経た上、
千種川
(
ちぐさがわ
)
の
渡船
(
わたし
)
をこえてこの城下へと入る赤穂街道を、一かたまりの
提灯
(
ちょうちん
)
が、
暁闇
(
ぎょうあん
)
の中を走って来るのである。
新編忠臣蔵
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
暁闇
(
ぎょうあん
)
の空で、大きく
鴉
(
からす
)
が啼く。——綽空はまた、無言で山へかかった、力のある足どりである、この山坂を九十九夜通いつづけていたころのあの迷いを追っている足ではない。
親鸞
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
まだ後方の
富田
(
とんだ
)
に在って、大坂から
神戸
(
かんべ
)
信孝の来会あるを待っていた——十三日未明——まだ暗いうちに、期せずして、秀吉方の山之手隊と、明智軍の奇襲部隊とは、
暁闇
(
ぎょうあん
)
のうちに
新書太閤記:08 第八分冊
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
左に
鉄杖
(
てつじょう
)
をつき、右手を
眉
(
まゆ
)
にあてて、
暁闇
(
ぎょうあん
)
の空をじッとみつめていたが、やがて
神州天馬侠
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
言っているところへ、一角の
葭
(
あし
)
の
洲
(
す
)
から、物見の兵が「——大変だっ」と、急を告げて来た。
暁闇
(
ぎょうあん
)
の
靄
(
もや
)
のうちから、泊兵の水軍が
舳艫
(
じくろ
)
をならべて、これへ接岸して来る模様だ——と絶叫する。
新・水滸伝
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
とまれ、この
暁闇
(
ぎょうあん
)
中天王山一番駈けは、いったい誰が早かったのか、どこの部隊が先駆だったのか、ほとんど
我武者羅
(
がむしゃら
)
のあらそいで、後の軍功によるも、記録によるも、皆目、見当がつかない。
新書太閤記:08 第八分冊
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
紫ばんだ
暁闇
(
ぎょうあん
)
の中に、大日堂の屋根が高くあった。雲を破った朝陽のまっ赤な光が、その
廂
(
ひさし
)
、その大柱——また、そこの縁からまわりに、ひしと
簇
(
むらが
)
っている
甲冑
(
かっちゅう
)
の人影に、
燦
(
きら
)
と、
刎
(
は
)
ね返っていた。
源頼朝
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
三十六峰の
懐
(
ふところ
)
に重たく眠り臥している白雲の群れが、
遽
(
にわか
)
に、
漠々
(
ばくばく
)
と活動を起して
天
(
そら
)
に上昇しはじめたのを見ても、天地は
寂
(
じゃく
)
とした
暁闇
(
ぎょうあん
)
のうちにすでに「偉大なる日課」へかかっていることが分る。
宮本武蔵:05 風の巻
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
暁闇
(
ぎょうあん
)
をつんざいて、鉄砲の音がどこかで響いたのである。
新書太閤記:04 第四分冊
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
と、主君家康のすがたを
暁闇
(
ぎょうあん
)
の岸にふりかえった。
新書太閤記:04 第四分冊
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
暁闇
(
ぎょうあん
)
の大地から、不意に誰か、彼の足をつかんだ。
夏虫行燈
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
星さえ見える
暁闇
(
ぎょうあん
)
である。
源頼朝
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
暁
常用漢字
中学
部首:⽇
12画
闇
常用漢字
中学
部首:⾨
17画
“暁闇”で始まる語句
暁闇濠