晴々せい/\)” の例文
鼠色ねずみいろそらはどんよりとして、ながるゝくもなんにもない。なか/\晴々せい/\しないから、一層いつそ海端うみばたつてようとおもつて、さて、ぶら/\。
星あかり (旧字旧仮名) / 泉鏡花(著)
それでも部屋へは一ぱいに日が差し込んでゐるので、外の病室のやうに陰気ではなくて、晴々せい/\として、気持が好い。
「お内儀かみさんなんにも心配しんぺえなんざくつて晴々せい/\としてんでござんせうね」おしなはつく/″\といつたことがある。
(旧字旧仮名) / 長塚節(著)
代助は笑ひながら、両手で寐起ねおきかほでた。さうして風呂場へかほを洗ひにつた。あたまらして、椽側えんがはかへつてて、にはながめてゐると、まへよりは気分が大分だいぶ晴々せい/\した。
それから (新字旧仮名) / 夏目漱石(著)
たゞ人が何も思わずに居ります時の心は冴えたる月のようなもので、誠に清らかで晴々せい/\としている所、煩悩の雲が掛り、心の月を曇らせますと申すは、向うでヒラ/\と青いさつを勘定して居ると
塩原多助一代記 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)
「あたし、いくら極樂でも、地の中はいや。やつぱり天國がいゝわね。ひろ/″\と晴々せい/\してゐて……あたし、この世で地獄ばかりにゐたんだから、死んだらせめて天國へ……」さう言ひかけて彼女はむせび出してしまつた。
天国の記録 (旧字旧仮名) / 下村千秋(著)
けぶつてえのつたらひど晴々せい/\してへえつてるやうぢやなくなつた。莫迦ばかつちやつたえ」かね博勞ばくらうはがぶりと風呂ふろおとをさせてたちながらいつた。
(旧字旧仮名) / 長塚節(著)
ぢいげおちやえべえ」おつぎはつて茶碗ちやわんあらつた。卯平うへい濃霧のうむふさがれたもりなか踏込ふみこむやうな一しゆ不安ふあんかんじつゝたのであつたが、かれはおつぎの仕打しうちこゝろ晴々せい/\した。
(旧字旧仮名) / 長塚節(著)