旁々かた/″\)” の例文
どうか貰い度いということ、それに土地に名高いお家柄なり、旁々かた/″\山三郎殿の御妹御おいもとごなれば是非申し受けたいといってわたくしへお頼みで
二三日うちに大磯問題の返事を聞き旁々かた/″\、青木家をたづねて見ようと思ふ。一体わたしがあまり行く事は、なるべく遠慮してゐるのだが。
愚かな父 (新字旧仮名) / 犬養健(著)
(前略)余はふとした機会で思はしき手頃の土地見当りしゆゑ、今冬より満四ヶ年の契約にて借受け、試み旁々かた/″\事業着手のことにいたさふろふ
新らしき祖先 (新字旧仮名) / 相馬泰三(著)
ネミローウ※チ、ダンチェンコ氏が東洋漫遊より帰らるゝや、旧情を温め旁々かた/″\一夕僕は氏をニコラーエフスカヤの其の宅に訪うた事がある。
露都雑記 (新字旧仮名) / 二葉亭四迷(著)
こしらへ又其外の氣配きくばりも坊主でなければ萬事行屆ゆきとゞかず其の上掛合かけあひも致す旁々かた/″\以て汝は大役で有たナ先々まづ/\其儀は夫でし/\シテ願山ぐわんざん汝が世話を
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
「呆れた野郎で、世間では、田代屋の身上しんしやうに未練があつて、古巣を見張り旁々かた/″\戻つて來たに違げえねえつて言ひますぜ」
『いやね、今日ね、友達がやつて来るつていふんでね。それを迎へ旁々かた/″\父母の一周忌の山榊を採りに来たんだよ』
ひとつのパラソル (新字旧仮名) / 田山花袋田山録弥(著)
此前東京の友達への手紙に妹の病気のことを言ひ、本人も周囲の人々も今は只だ死を待つのみだと書き添へてやつたら、返事旁々かた/″\見舞の手紙をよこしたが、其中に
厄年 (新字旧仮名) / 加能作次郎(著)
御懇談いたしたきこと有之これあり、且つ先日杉野子爵を介して、申上げたる件に付きても、重々の行違ゆきちがひ有之これあり、右釈明旁々かた/″\近日参邸いたし度く——あゝ何と云ふ図々しさだ。
真珠夫人 (新字旧仮名) / 菊池寛(著)
しかし結局は親店の仕事を手伝ひ旁々かた/″\自分の儲け口を見つけるより外なかつた。しかし怠け癖のついた木山は、こつ/\初めから出直すといふ心構へには容易になれなかつた。
のらもの (新字旧仮名) / 徳田秋声(著)
「えゝ、どうぞ訪ねて来て下さい。僕も、ご迷惑でなかつたら上つてもいゝです。あなたには、いろ/\お世話になつてゐるので、一度お礼旁々かた/″\お伺ひしようと思つてゐました」
途上 (新字旧仮名) / 嘉村礒多(著)
荻沢はもとより心から大鞆の言葉を信ずるに非ず今はあたかも外に用も無し且は全く初陣なる大鞆の技量を試さんとも思うにより旁々かた/″\其言う儘に従えるなり(大)では長官少し暑いけどが茲等こゝら
無惨 (新字新仮名) / 黒岩涙香(著)
其方義夫傳吉の留守中るすちう昌次郎と奸通かんつう致しあまつさへ傳吉歸國きこくせつ密夫みつぷ昌次郎に大金をかたりとら旁々かた/″\以て不埓ふらちに付三宅島みやけじま遠島ゑんたう申付る
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
三郎兵衞には恩人筋の娘とかで、三四年前に田舍から引取られ、厭應言はさず幾太郎の許嫁と披露して、行儀見習旁々かた/″\、十九のやくの明けるのを待つてゐる娘でした。
平三の村からは毎日商人が生魚を売りに来て居るが、市日になると買物旁々かた/″\塩魚を売りに来る人が随分多い。此日も丁度其市日にあたるので町は随分の人出であつた。
厄年 (新字旧仮名) / 加能作次郎(著)
志丈が来れば是非お礼旁々かた/″\きたいものだと思っておりましたが、志丈は一向に参りません。
妾達わたしたちを、追うて来る人でも、身体と心との凡てを投じて、来る人はまだいゝのよ。あの人達なんか遊び半分なのですもの。狼の散歩旁々かた/″\人の後からいて行くやうなものなのよ。
真珠夫人 (新字旧仮名) / 菊池寛(著)
詫言わびごとなし是はいさゝかながら出牢しゆつらうよろこ旁々かた/″\土産みやげなりとて懷中くわいちうより紙に包み目録もくろくとして金子百兩を差出しければ富右衞門これ
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
旁々かた/″\三之助を呼び戻すのは、もう少し待つて貰ひたいと言ふ言葉にも理窟りくつがあります。
伯父は前から長らく胃腸を患つてぶら/\してゐたのだが、私が行つてから間もなく、S坂の近くに別荘風の小宅を建てて、一時保養旁々かた/″\、その年の暮に其処へ引越したのであつた。
乳の匂ひ (新字旧仮名) / 加能作次郎(著)
正「佐羽さばさんに誘われて慾張り旁々かた/″\桐生へきましたが、一昨日おとゝい帰って松新で聞きますと、花魁が御病気で山谷のお寮にいらっしゃるという事ですから、早速お見舞いに出ましたので」
梅三郎は評判の美男びなんで、婀娜あだな、ひんなりとした、芝居でいたせば家橘かきつのぼりの菊の助でも致しそうな好男いゝおとこで、丁度其の月の二十八日、春部梅三郎は非番のことだから、用達ようた旁々かた/″\というので
菊模様皿山奇談 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)
わたくしも一寸お尋ね申したいと存じながら、種々いろ/\取込が有って、つい/\御無沙汰をいたしました、私も彼方あっちの方へ保養旁々かた/″\見舞にきたいと思ってましたが……おや、誰かお連れが有るなら此方こっち