新玉あらたま)” の例文
圓太郎はもうすッかり一陽来福の新玉あらたまの春がやってきたような明るい気分にさえ、なってきている。そのとき拍手の音が五つ六つ起こって、勝次郎が下りてきた。
円太郎馬車 (新字新仮名) / 正岡容(著)
落語家らくごか見識けんしきからすると、『新玉あらたまの』は本統ほんたう發句ほつくだが、『たまの』は無茶むちやだとして、それで聽衆ちやうしうわらはせようとするんだが、おれところこれことなりだ。
ハガキ運動 (旧字旧仮名) / 堺利彦(著)
福岡の城主五十二万石、松平美濃守のお邸は霞ヶ関の高台にあったが、勾坂甚内は徒党を率い、新玉あらたまの年の寿ことぶきに酔い痴れている隙を窺い、金蔵を破って黄金かねを持ち出した。
三甚内 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
お心落しなく、元弘二年の新玉あらたまをお迎えあらせらるるよう、何とぞよしなに、ご奏聞そうもんのほどを
私本太平記:04 帝獄帖 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
せめては師の君訪ひ来ませと待てど、立つ名は此処にのみならで、憚りあればにや音信おとづれもなく、とえし中に千秋を重ねて、万代よろづよいわふ新玉あらたまの、歳たちかへつて七日の日きたりき
雪の日 (新字旧仮名) / 樋口一葉(著)
徳若とくわか御万歳ごまんざいと、御代みよも栄えまします、ツンテントン、愛敬あいきょうありける新玉あらたまの、………」
細雪:01 上巻 (新字新仮名) / 谷崎潤一郎(著)
女太夫とか鳥追とりおひの三味線さみせんにめでたき哥をうたひ、娘ののやり羽子はご、男の帋鳶いかのぼり、見るものきくものめでたきなかに、初日はつひかげ花やかにさしのぼりたる、新玉あらたまの春とこそいふべけれ。
新玉あらたまの春は来ても忘れられないのは去年の東北地方凶作の悲惨事である。
新春偶語 (新字新仮名) / 寺田寅彦(著)
隱居いんきよ物識ものしりぶつて『新玉あらたまとしちかへるあしたかな』づこんなふうふものだと作例さくれいしめす。
ハガキ運動 (旧字旧仮名) / 堺利彦(著)
まち高笑たかわらひするやうにりて、とき新玉あらたまはるりぬ、お美尾みを日々ひゞやすからぬおももち、をりにはなみだにくるゝこともあるを、みちせい自身みづからいへば、らうのみにものうたがはず
われから (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
女太夫とか鳥追とりおひの三味線さみせんにめでたき哥をうたひ、娘ののやり羽子はご、男の帋鳶いかのぼり、見るものきくものめでたきなかに、初日はつひかげ花やかにさしのぼりたる、新玉あらたまの春とこそいふべけれ。
こうして道中で年も暮れ、新玉あらたまの年は迎えたが、共に祝うべき人もない。
大鵬のゆくえ (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
そうして新玉あらたまの春の空の光がひどく憂鬱に見えるのである。
新年雑俎 (新字新仮名) / 寺田寅彦(著)
新玉あらたまの年立ち帰れども
私本太平記:10 風花帖 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
そして間もなく年が暮れ、新玉あらたまの年が立ち帰った。
蔦葛木曽棧 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
新玉あらたまとしちかへるあしたかな 隱居
ハガキ運動 (旧字旧仮名) / 堺利彦(著)