そろひ)” の例文
そろひ浴衣ゆかたに白いちぢみ股引ももひき穿いて、何々浜と書いた大きい渋団扇しぶうちは身体からだをはたはたと叩いて居る姿が目に見える様である。
住吉祭 (新字旧仮名) / 与謝野晶子(著)
ちがへに、十二三になる丸顏まるがほおほきなをんなと、そのいもうとらしいそろひのリボンをけた一所いつしよけてて、ちひさいくびふたならべて臺所だいどころした。
(旧字旧仮名) / 夏目漱石(著)
そろひ浴衣ゆかたをはじめとして、提灯ちやうちん張替はりかへをおください、へい、いたゞきにました。えゝ、張替はりかへをおとゞまをします。
祭のこと (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
布團一とそろひ竹行李たけがうりが一つ、外に何もありません——。竹行李の中にも、お勘坊相應の着物があるだけ。
お花はいづれも木綿のそろひの中に、おのひといまはしき紀念かたみの絹物まとふを省みて、身を縮めてうつむけり
火の柱 (新字旧仮名) / 木下尚江(著)
此の三人を正面にして、少しさがりて左手ゆんでには一様に薄色うすいろ裾模様すそもようの三枚がさね、繻珍しゆちんの丸帯、髪はおそろひ丸髷まるまげ、絹足袋に麻裏あさうらと云ふいでたちの淑女四五人ずらりと立ち列ぶは外交官の夫人達。
燕尾服着初めの記 (新字旧仮名) / 徳冨蘆花(著)
つと名も吉之助と呼び實子じつしの如く寵愛ちようあいしけり或夜夫婦は寢物語ねものがたりに吉之助は年に似氣にげなき利口者りこうものにて何一ツ不足ふそくなき生れ付器量きりやうといひ人品迄よくもそろひし者なり我々に子なければ年頃神佛しんぶついのりし誠心せいしん
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
「なきア宜い。住込の職人が、着物を一とそろひなくして、人に氣付かれない筈はない。矢張り勝藏ぢやなかつたんだらう、——念の爲に水を一と釣瓶つるべんで見ろ——井戸へ沈めた樣子もないだらう」