拙者せつしや)” の例文
きゝしばし思案して申ける樣和尚は何とおもはるゝや拙者せつしや大言たいげんはくに似たれども伊賀亮ほどの大才ある者久しく山中にかくれてある黄金こがね
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
拙者せつしやふるくから此石とは馴染なじみなので、この石の事なら詳細くはししつて居るのじや、そもそも此石には九十二のあながある、其中のおほきあなの中にはいつゝ堂宇だうゝがある
石清虚 (旧字旧仮名) / 国木田独歩(著)
平八郎は項垂うなだれてゐたかしらを挙げて、「これから拙者せつしや所存しよぞんをお話いたすから、一同聞いてくれられい」
大塩平八郎 (新字旧仮名) / 森鴎外(著)
「いやうも御記憶のいゝ事で。」と卜新氏は長い間生薬きぐすりと女の唇とをめて来たらしい口をけて笑つた。「あれは往事むかしごと拙者せつしやももう当年八十四歳になりますでな。」
はきび/\とあつかつた。つとくびツたけある。たれの?……れたこと拙者せつしやのである。
城崎を憶ふ (旧字旧仮名) / 泉鏡花(著)
「何を馬鹿なことを言ふのだ。拙者の來國俊は縁側の刀架にあつたのだぞ——その時拙者は雪隱せつちんに入つて居たのだ。拙者せつしやに知られずに、縁側を刀架の側まで來る工夫があると思ふか」
したりけん懷中くわいちうより書付かきつけ一通取出し扨此書付は久八殿が拙者せつしや引負ひきおひ引受ひきうけて呉られし後日の證據しようこに渡しおくひながら兩人の前にさし置きける其文は
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
雲飛うんぴおどろいて『んだことを言はるゝ、これは拙者せつしや永年ながねん祕藏ひざうして居るので、生命いのちにかけて大事だいじにして居るのです』
石清虚 (旧字旧仮名) / 国木田独歩(著)
成程なるほど自分の役柄は拙者せつしやも心得てをります。しかかしら遠藤殿の申付まをしつけであつて見れば、たと生駒山いこまやまを越してでも出張せんではなりますまい。御覧のとほり拙者は打支度うちしたくをいたしてをります。
大塩平八郎 (新字旧仮名) / 森鴎外(著)
「いや、物音がすれば、拙者せつしやが飛び出して、人手を借りるまでもなく成敗する」
あゝそつと/\わたし……です、拙者せつしや拙者せつしや
十和田湖 (新字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
めぐらしける此時藤井左京は大膳に向ひ某し近頃此地へ參り貴殿の門弟とは相成たれどいま寸功すんこうも立てざればせめ今宵こよひ舞込まひこみし仕事は何卒拙者せつしや料理方れうりかた
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
そこで叟のふには『如何どうです、石は矢張やは貴君あなたの物かね、それとも拙者せつしやのものかね。』
石清虚 (旧字旧仮名) / 国木田独歩(著)
「芝田氏、飛んだことに相成つて何んとも申譯はない。が、これと申すも、娘の不所存ふしよぞんから起つたこと、本來ならば父親の拙者せつしやが坊主になつても詫をするところだが、今更それも詮ないことだ」
ビリビリ破つたりするさうだ。浪人者の貧乏な拙者せつしやには向きさうもないて
拙者せつしや芦名あしな光司と言ふ、浪人者だが」