我先われさき)” の例文
サアおいでだというお先布令さきぶれがあると、昔堅気むかしかたぎの百姓たちが一同に炬火たいまつをふりらして、我先われさきと二里も三里も出揃でぞろって、お待受まちうけをするのです。
忘れ形見 (新字新仮名) / 若松賤子(著)
其他そのほか一團いちだん賤劣せんれつなる下等船客かとうせんきやくで、自己おのれ腕力わんりよくまかせて、突除つきの蹴倒けたをして、我先われさきにと艇中ていちう乘移のりうつつたのである。
我先われさき獲物えものにありつこうとかけるはとにかって突進とっしんしました。ははばとは、たくみに方向ほうこうえて、子供こどもたちのいるから、てき遠方えんぽう遠方えんぽうへとさそったのであります。
僕はこれからだ (新字新仮名) / 小川未明(著)
やがベルが鳴る、此の場合に於ける生徒等の耳はいちじるしく鋭敏になツてゐた。で鈴の第一聲が鳴るか鳴らぬに、ガタ/\廊下を踏鳴らしながら、我先われさきにと解剖室へ駈付ける。
解剖室 (旧字旧仮名) / 三島霜川(著)
いかんとなればおん身は光る石をひろはんとのくはだてにはあらず、妖物ばけもの退治たいぢせんとて川へいたり、おん身よりは我先われさきに川へ飛いり光りものをさぐりあてゝかづきあげしも我なり
我先われさきに側へ駈け寄って、介抱かいほうしようとしたが、妙子さんは、傍らにいた親戚の婦人に抱き起され、そのまま自動車に連れ込まれて、別段の事もなく自宅に帰ることができた。
悪魔の紋章 (新字新仮名) / 江戸川乱歩(著)
万は夢からでもめたようにして、幾分周章あわて気味に言った。子供達は我先われさきと、小突き合いながら、うしおのように雪崩なだれ込んで来た。しかし、その一団の先に立っているのは、万の長男だった。
手品 (新字新仮名) / 佐左木俊郎(著)
博奕打ってた連中も我先われさきにバラバラ逃げ出して、大抵上手に逃げてしもたところが、その中に逃げおくれた夫婦者あって、廊下をうろうろしてるうちに光子さんの部屋が開いてたのんで
(新字新仮名) / 谷崎潤一郎(著)
いかんとなればおん身は光る石をひろはんとのくはだてにはあらず、妖物ばけもの退治たいぢせんとて川へいたり、おん身よりは我先われさきに川へ飛いり光りものをさぐりあてゝかづきあげしも我なり
我先われさきその端艇たんてい乘移のりうつらんと、人波ひとなみうつて嘈閙ひしめさまは、黒雲くろくもかぜかれて卷返まきかへすやうである。
なにしろ、てきはトーチカにじこもり、機関銃きかんじゅう乱射らんしゃして、頑強がんきょう抵抗ていこうするのです。ついに、決死隊けっしたいつのられました。我先われさきにともうたので、たちまちのあいだ定員ていいんたっしたのです。
とびよ鳴け (新字新仮名) / 小川未明(著)