しか)” の例文
「難事は、水害のさまたげのみではないぞ。築城中にも、うるさくせ来る美濃の兵に対しても、そちは何ぞしかとした勝算があるか」
新書太閤記:03 第三分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
遠山殿の仰せには町方まちかたの事とは少々御役向おやくむきが違うゆえ、あのかた御一存ごいちぞんではしかとした事は申されぬが、何につけおかみにおいては御仁恵ごじんけいが第一。
散柳窓夕栄 (新字新仮名) / 永井荷風(著)
一体グレシア人はしかと役に立ったことのない民族だ。
古い事でしかと記憶ありません。
支倉事件 (新字新仮名) / 甲賀三郎(著)
河中へ投込候ものと相見え今以て行方相知れ不申候もうさずそろ又土蔵へ忍入りしやわたくし所持の衣類金銀ともことごとく盗取り逃去り候跡へ我等参合まいりあわせきよと申す下婢かひに相尋ね候処驚怖の余りおのれの部屋に匿れ潜みおり候えば賊の申候言葉ならびいずれへ逃去候しか不相分あいわからず申出候もうしいでそろしかるに一応家内取調申候処庭前ていぜん所々しょ/\に鮮血の点滴有之これあり殊に駒の緋絹縮ひぎぬちゞみ下〆帯したじめおびりゅうの単物ひとえもの血に染み居候まゝ打棄うちすて有之候間此段御訴申上候
霧陰伊香保湯煙 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)
留守のさびしさを、しかと、噛みしめてこそ、持った良人のよいところもひとしお深く分るというもの。誰やらの連歌れんがにも、下の句はわすれたが——
新書太閤記:04 第四分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
しかと、明言したのは、池田勝入の家士竹村小平太だ。——まちがいないことかと、念を押すと、小平太はなお云った。
新書太閤記:10 第十分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
快川の死は、それを眼でしかと見ていた者でも、いったい彼は死んだのやら生きたのやら、分らない気持につつまれた。
新書太閤記:06 第六分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
「ここへ後から尋ねて来る者は、城太郎じょうたろうと申して、まだ年端としはのゆかぬ少年ですから、どうぞしかとお伝え願いまする」
宮本武蔵:03 水の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
ご隠居さまのお覚悟をしかと伺ったからには、もう百人力というものである。織田方には二心なしだ。飽くまで荒木村重の曲を撃たずにおくものではない。
黒田如水 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
仰せには、突き廻されて、引取ったりと聞えたが、迷惑な御記憶ちがい、末代までの家名にもかかわる儀、しかと、御詮索ごせんさくの上のこと、まいちど承り申したい
新書太閤記:09 第九分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
の問題がしかとしない以上、どうにも、現在の戦態から一歩も積極的に移行することができない実状にあった。
新書太閤記:09 第九分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
しかと、見覚えてお槍先を試みんとうかがいおったが、ついに拝面の機もなく、今日、ここでお膝を交えるとは……
新書太閤記:09 第九分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
嗅ぎつけない南蛮煙草なんばんたばこの煙やら魚燈のいぶりなどが濛々とこめて、そこにいる人間たちの数もしかとは分らないが、ざっと見ても三、四十人はうごめいている様子。
江戸三国志 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
ですが——かえって疑心暗鬼は金吾をして、そこに兇猛な影が群れをなしやいばを植えて待たれるよりも、なおなおウカツに足のすすめない気がまえをしかと持たせて
江戸三国志 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
宗湛はしかとそう意志しながら静かに壁間の懸物かけものはずして巻き、箱にまで納めて、それを小脇に持った。
新書太閤記:07 第七分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
しかと顔は見ないが、誰やら、奥の女中のうちで、あの大工小屋の辺にうろついていた者があるという事——のみならず、今、裏庭の木蔭にかくれて、何を書いていたか
新編忠臣蔵 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
「この舌長奴したながめを、雲峰寺の堂衆にあずけ、信玄が凱旋の後まで、しかと、穴倉へでもほうりこんでおけと申せ。その余のやからもすべて獄に下げろ。——いずれ帰国ののちにする」
上杉謙信 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
又右衛門は、しかと、杯を持ち直して犬千代へした。無量な感慨が犬千代のほうにもある。最初のうちは聟しゅうととなる者は、こう二人のはずであった。縁がなかったのだ。
新書太閤記:02 第二分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
今日、さるこくには、小三郎以下、お誓約の如く、切腹つかまつりますれば、しかとお見とどけを願いたい
黒田如水 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
「仕事の持場と、坪割つぼわりを申しわたす。それぞれの頭たる者は、しかうけたまわって、違背ならぬぞ」
新書太閤記:02 第二分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
だが、あわせて、この儀もしかと、筑前どのへ御念を押しておかれたい。山名の二臣は、飽くまでくびきることはならん。この城の守将は吉川経家なり。守将の責任は一切を負うもの。
新書太閤記:06 第六分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
久子は、正成に嫁してから、かねがねおぼろに抱いていた考えを、さらにしかと、信念づけられた。子をし、世が騒がしくなるほどに、またその信念は、よけい強められて行った。
日本名婦伝:大楠公夫人 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
「いやいや、敵の所在は、まだしかと承知いたしませんが、このたびもまた、彼方へ行っても、長い対陣となりましょう。兵気のむほど、長陣にならねばよいがと思うております」
上杉謙信 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
「……まだ、ほんとのような心地がせぬ。四郎次郎の口からしかと実状を聞いても」
新書太閤記:07 第七分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
彼は、自分で取次ぎに出た事柄に、自分でもまだしかと信が持てない容子であった。
源頼朝 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
「いや、ちゃんと、玄関から訪れて、取次にしかと渡して来なければいけない」
宮本武蔵:03 水の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
一杯の水をのどへ下ろしたという仮想かそうを持って、彼はしかと精神を丹田たんでんに落着けるべく努めた。そのために膝を正し、姿をととのえ、平常ここにあって衆に君臨するときのままな自分を保とうとした。
新書太閤記:07 第七分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
覚悟のほどを、しかとうなずいて見せながら、藤吉郎は重ねていった。
新書太閤記:03 第三分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
ふもとの河原に、たくさんな打首をけて、幾日もさらしてあったが、その中には相貌そうぼうも変って、しかとも知れぬほどにはなっていたが、この辺の山に住む炭焼の男や、猟師などの、見たような顔もあった。
源頼朝 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
「老臣の池田和泉どのから、たった今、しかと聞いた」
黒田如水 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
『ははは。——そこでしかと見たのか、吉良殿の顔を』
新編忠臣蔵 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
右様みぎようのことは、しかと覚えておるかの。袖……
大岡越前 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
「内書のおむねしかと承知いたしました」
剣の四君子:02 柳生石舟斎 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
「殿。お気をしかと遊ばして下さいッ」
新書太閤記:08 第八分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
しかと、たのまれましてござります」
新書太閤記:04 第四分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
しかとはわかりませぬが」
新書太閤記:08 第八分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
「はい、しかと!」
江戸三国志 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
しかとか」
剣の四君子:05 小野忠明 (新字新仮名) / 吉川英治(著)