はず)” の例文
移気、開豁はで軽躁かるはずみ、それを高潔と取違えて、意味も無い外部の美、それを内部のと混同して、はずかしいかな、文三はお勢に心を奪われていた。
浮雲 (新字新仮名) / 二葉亭四迷(著)
「いや、ほんの掘っ建て小屋でおはずかしいんですが、周囲丈けは自慢です。いずれ落成の上は一日御来遊を願います」
好人物 (新字新仮名) / 佐々木邦(著)
君は神の前でははずかしくないか。ホントの牧師であったら慚死するのが正当ならん。私ア庄司利喜太郎が隠しとるものを悉皆出さんことには承知しませんぞ。
支倉事件 (新字新仮名) / 甲賀三郎(著)
「わたし、……わたしは……字を知りません」阿Qは筆をむんずと掴んではずかしそうに、恐る恐る言った。
阿Q正伝 (新字新仮名) / 魯迅(著)
と云いながら伽羅大尽へ渡すを取上げ読んで見ると「寄るなき袖の白波打返し音羽の滝の音もはずかし」
云うもはずかしいが、僕はまた可なりの時間を睡ったものらしい。どうも市庁まで忍びこんで、居睡りをするとは怪しからん話だが、僕の身体は本当に疲れていたのだ。
深夜の市長 (新字新仮名) / 海野十三(著)
しかし一たん見まいと決心したからには意地いじが出て振り向くのがはずかしく、また振り向くと向かないのとで僕の美術家たりるやいなやの分かれ目のような気がして来た。
郊外 (新字新仮名) / 国木田独歩(著)
つむかしの士族書生の気風として、利をむさぼるは君子の事にあらずなんと云うことがあたま染込しみこんで、商売ははずかしいような心持こころもちがして、れもおのずから身に着きまとうて居るでしょう。
福翁自伝:02 福翁自伝 (新字新仮名) / 福沢諭吉(著)
他日大原文学士の夫人となってもはずかしくない人物に仕立したててもらいたい、それには外に頼む処もないから三年でも五年でも大原君の帰朝するまで僕に預かってくれろというのだ。
食道楽:冬の巻 (新字新仮名) / 村井弦斎(著)
館内には横浜風をよそおう日本の美婦人あり。けだし神州の臣民にして情を醜虜しゅうりょひさぐもの、俗に洋妾ラシャメンとなうるはこれなり。道をくにはずる色無く、人に遭えば、傲然ごうぜんとして意気すこぶあがる。
金時計 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
文三は叔母の意見にそむく事が出来る。既に叔母の意見に背く事が出来れば、モウ昇に一着を輸する必要もない。「かつ窮して乱するは大丈夫のるをはずる所だ」
浮雲 (新字新仮名) / 二葉亭四迷(著)
安いときに買入れた金といって、ドウ云う印があるか、安いも高いもその日の相場にまったものを、夫れを相場はずれにせよと云いながら、はず気色けしきもなく平気な顔をして居るのみならず
福翁自伝:02 福翁自伝 (新字新仮名) / 福沢諭吉(著)
... 柵飼さくがいにしたものは変色が寡い」小山「実に研究するほど面白いね。僕なぞは今聞いても耳新しく感じるが十余年前の学校生徒がんなその位な事を知っていたかと思うと少々はずかしくなるね。 ...
食道楽:秋の巻 (新字新仮名) / 村井弦斎(著)
れがかえって不幸で、本人はい気になって、酒とさええば一番きに罷出まかりでて、人の一倍も二倍も三倍も飲んで天下に敵なしなんて得意がって居たのは、返す/\もはずかしい事であるが
福翁自伝:02 福翁自伝 (新字新仮名) / 福沢諭吉(著)
はずかしそうに自分も莞爾にっこり
浮雲 (新字新仮名) / 二葉亭四迷(著)
すなわち我輩わがはい所望しょもうなれども、今そのしからずしてあたかも国家の功臣をもっ傲然ごうぜんみずからるがごとき、必ずしも窮屈きゅうくつなる三河武士みかわぶしの筆法を以て弾劾だんがいするをたず、世界立国りっこく常情じょうじょううったえてはずるなきを得ず。
瘠我慢の説:02 瘠我慢の説 (新字新仮名) / 福沢諭吉(著)
曾てはずるを知らずして平気なる者あり。
女大学評論 (新字新仮名) / 福沢諭吉(著)