のろ)” の例文
おこらないでもいゝよ。でも周子、お前昨夜ゆうべはよく来たな。どうだい、お父さんが芸者にのろけてゐたところは、どうだ。……驚いたか。」
熱海へ (新字旧仮名) / 牧野信一(著)
読者中病身の細君さいくんを親切に看護かんごする者あれば、これをめる者があると同時に、彼奴きゃつかかあのろいと批評された経験もあろう。
自警録 (新字新仮名) / 新渡戸稲造(著)
なるほど俺のかゝあは吉原の河岸見世にゐた女で、飛んだのろけをいふやうだが、おたがひに好き合つて夫婦になつたのだ。それがなんで洟つ垂らしだ。
権三と助十 (旧字旧仮名) / 岡本綺堂(著)
作「今此処こゝのろけんでもい兎に角夫婦仲がければ、それ程結構な事はない、時に權六段々善い事が重なるなア」
菊模様皿山奇談 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)
東海さんや、補欠の有沢さんを中心とするのろけ話や、森さんや松山さんを囲んでのエロ話も、さかんなものでした。
オリンポスの果実 (新字新仮名) / 田中英光(著)
見かけ倒しののろい殿様だといって、世間の口のに調子を合わせては笑い物にするのが多いのであります。
大菩薩峠:15 慢心和尚の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
お前もなかなかすみには置けないね。六十八にもなって許婚とは……さすがの僕も恐れ入っちゃった。それじゃ、まあ、のろけ話の花でもひとつ咲かせてもらおうかい。
なよたけ (新字新仮名) / 加藤道夫(著)
随分ころりと来るであろう、きさまのろけた小蝶こちょうさまのお部屋ではない、アッハハハと戯言おどけを云えばなお真面目に、木槵珠ずずだまほどの涙を払うその手をぺたりと刺身皿さしみざらの中につっこみ
五重塔 (新字新仮名) / 幸田露伴(著)
……どうものろけを申上るようで恐れ入りますが……しかし又一方に、私も私です。
キチガイ地獄 (新字新仮名) / 夢野久作(著)
「はアはア、そうでっか、おのろけ筋で、へへへ、どちらまで行きはりました」
蠅男 (新字新仮名) / 海野十三(著)
でも後で私しを世話して置けば早晩いつかお前が逢い度く成て帰ッて来るだろうッて、のろい事はを掛てるネ日本人にそうして今は何所に、アう本郷に奉公、ア爾う可愛相に、金起さんも一緒かえ
無惨 (新字新仮名) / 黒岩涙香(著)
「尤もな、のろけだ」
南国太平記 (新字新仮名) / 直木三十五(著)
貴公ぐらい女を見るとのろい人間はないよ、女を見ると勘弁なり難い事でもすぐにでれ/\と許してしまう、それもいが、あとの勘定を何うする、勘定をよ
菊模様皿山奇談 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)
国会ひらけた暁に、役者にのろけちゃいられない。日本大事に守りなさい。眉毛の無いのがお好きなら、癩人かったいを色に持ちなんせ。目玉を剥くのがお好きなら、たぬきと添い寝を
明治劇談 ランプの下にて (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)
瓦斯ガスの中で一心をらして考え抜いて来た説明の順序を、今一度、ここで繰返したものらしかったが、そのせいか、こうした甘ったるいおのろけが、氷のように切迫した人生の一断面を作って
戦場 (新字新仮名) / 夢野久作(著)
のろけをいうようだが互に書附まで取交とりかわして、私は決して他の客へは出ないから交際つきあいでも他へあがってくれるなと云うから、己も他へは登ったことはありゃアしない
「親分さん、ちっと叱ってやってください。のろけてばかりいて仕方がないんですから」
半七捕物帳:11 朝顔屋敷 (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)
紀伊國屋は土蔵よりなにより大事なものは女房のお村だと云って度々たび/\のろけを言いますが
業平文治漂流奇談 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)
めえまでが一緒になってのろけるてえことがあるもんか、コウ伊之さんよく聞きねえ、わっちアお前さん方の為を思ってとんで来たんだ、今日雨降りで丁度仕事がねえから先生のとこへ来てるとよ
娼「うそばかりいてるよ、毎日のろけているくせに今夜に限ってさ」