徒歩とほ)” の例文
また上士の家には玄関敷台を構えて、下士にはこれを許さず。上士は騎馬きばし、下士は徒歩とほし、上士には猪狩ししがり川狩かわがりの権を与えて、下士にはこれを許さず。
旧藩情 (新字新仮名) / 福沢諭吉(著)
徒歩とほで枕崎に出るのである。生涯再びは見る事もない此の坊津の風景は、おそろしいほど新鮮であった。私は何度も振り返り振り返り、そのたびの展望に目を見張った。
桜島 (新字新仮名) / 梅崎春生(著)
「そうじゃないよ、いますこしたてば干潮かんちょうになる、潮が引けばあるいはこのへんが浅くなり、徒歩とほで岸までゆけるかもしらん、それまで待つことにしようじゃないか」
少年連盟 (新字新仮名) / 佐藤紅緑(著)
一先ひとまづ一どうは、地主ぢぬしの一にんたる秋山廣吉氏あきやまひろきちしたくき、其所そこから徒歩とほで、瓢簟山ひようたんやまつてると、やま周圍しうゐ鐵條網てつでうもうり、警官けいくわん餘名よめい嚴重げんぢゆう警戒けいかいして、徽章きしやうなきもの出入しゆつにふきんじてある。
おなじく大學だいがく學生がくせい暑中休暇しよちうきうか歸省きせいして、糠鰊こぬかにしん……やすくて、こくがあつて、したをピリヽと刺戟しげきする、ぬか漬込つけこんだにしん……にしたしんでたのと一所いつしよに、金澤かなざはつて、徒歩とほで、森下もりもと津幡づはた石動いするぎ
麻を刈る (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
水面をうった法密ほうみつの禅杖に、サッと水がふたつに分れたと思うと、散魔文の破術にあって狼狽ろうばいした呂宋兵衛は徒歩とほになってまッしぐらにかなたへ逃げだし、まんまんと波流はりゅうをえがいていた濁水は
神州天馬侠 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
望生ぼうせいとは徒歩とほである。幻花げんくわ佛骨ぶつこつ自轉車じてんしやである。自轉車じてんしやの二よりも、徒歩とほ余等よらはうきへゆきいたなどは滑稽こつけいである。如何いかに二がよたくりまはつたかを想像さうぞうするにる。
玄子げんし器具きぐなどかつぎ、鶴見つるみにて電車でんしやり、徒歩とほにて末吉すゑよしいた。