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後退
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あとしざ
ふりがな文庫
“
後退
(
あとしざ
)” の例文
つるは不気味そうに
後退
(
あとしざ
)
ったが、くるりと向うを向いて、手荒く其処らを片付けた。釜の飯を飯櫃に移し、薬鑵や膳椀を揃えた。
特殊部落の犯罪
(新字新仮名)
/
豊島与志雄
(著)
今も、健が聲高に忠一を叱つたので、宿直室の話聲が
礑
(
はた
)
と止んだ。孝子は耳敏くもそれを聞き附けて忠一が
後退
(
あとしざ
)
りに出て行くと
足跡
(旧字旧仮名)
/
石川啄木
(著)
御
(
お
)
寺の
直前
(
すぐまへ
)
に立つたのでは容易に大きな塔の全体が眼に
入
(
い
)
らないので僕等四人は
其
(
その
)
広場の上を
後退
(
あとしざ
)
りし
乍
(
なが
)
ら眺めるのであつた。
巴里より
(新字旧仮名)
/
与謝野寛
、
与謝野晶子
(著)
彼女はその男をながめ、人形をながめ、それからそろそろと
後退
(
あとしざ
)
りをして、テーブルの下の壁のすみに深く隠れてしまった。
レ・ミゼラブル:05 第二部 コゼット
(新字新仮名)
/
ヴィクトル・ユゴー
(著)
平生
(
ふだん
)
から無口なのがイヨイヨ意気地が無くなって盃を逃げ逃げ
後退
(
あとしざ
)
りをして行くうちに、部屋の隅の押入の半分
開
(
あ
)
いた
襖
(
ふすま
)
の前に横倒しになって
斜坑
(新字新仮名)
/
夢野久作
(著)
▼ もっと見る
ジリ、ジリ、ジリと
後退
(
あとしざ
)
り、またもやグルリと身を翻えすと、窮鼠かえって猫を噛む。破れかぶれに旅人眼掛け、富士甚内は躍り掛かって行った。
名人地獄
(新字新仮名)
/
国枝史郎
(著)
彼は人生にたいする自分の現実的な悲壮な幻像の
蓋
(
ふた
)
を少し開いて見せて面白がった。ジョルジュは
後退
(
あとしざ
)
りをした。クリストフは笑いながら蓋を閉めた。
ジャン・クリストフ:12 第十巻 新しき日
(新字新仮名)
/
ロマン・ロラン
(著)
婆
(
ばあ
)
さんに
聞
(
き
)
けば、
夫婦
(
ふうふ
)
づれの
衆
(
しゆ
)
は、
内
(
うち
)
で
采粒
(
さいつぶ
)
を
買
(
か
)
はつしやると、
両方
(
りやうはう
)
で
顔
(
かほ
)
を
見合
(
みあ
)
ひながら
後退
(
あとしざ
)
りをして、
向
(
むか
)
ふ
崖
(
がけ
)
の
暗
(
くら
)
い
方
(
はう
)
へ
入
(
はい
)
つたまで。それからは
覚
(
おぼ
)
えて
居
(
を
)
らぬ。
神鑿
(新字旧仮名)
/
泉鏡花
、
泉鏡太郎
(著)
此処
(
ここ
)
が千両だ、と大きな眼を細くして彼は
悦
(
えつ
)
に入る。向うの畑で、本物の百姓が長柄の鍬で、
後退
(
あとしざ
)
りにサクを切るのを
熟々
(
つくづく
)
眺めて、彼運動に現わるゝリズムが何とも云えぬ、と賞翫する。
みみずのたはこと
(新字新仮名)
/
徳冨健次郎
、
徳冨蘆花
(著)
いずれも唇をへの字に結び、うわ目でじろじろタヌを見あげながら、むっつり押し黙っているばかり。タヌがロマンチックな
音色
(
こわね
)
で、いろいろ愛想をすればするほど、じりじりと
後退
(
あとしざ
)
りをする。
ノンシャラン道中記:01 八人の小悪魔
(新字新仮名)
/
久生十蘭
(著)
日光の直射を恐れて羽蟻は飛びめぐり、溝渠には水涸れて惡臭を放ち、病犬は朝鮮薊の紫の刺に
後退
(
あとしざ
)
りつゝ
咆
(
ほ
)
え𢌞り、蛙は蒼白い腹を仰向けて死に、泥臭い鮒のあたまは苦しさうに泡を立てはじめる。
思ひ出:抒情小曲集
(旧字旧仮名)
/
北原白秋
(著)
今も、健が声高に忠一を叱つたので、宿直室の話声が
礑
(
はた
)
と止んだ。孝子は耳敏くもそれを聞付けて忠一が
後退
(
あとしざ
)
りに出て行くと
足跡
(新字旧仮名)
/
石川啄木
(著)
それからその仏壇の奥の赤い
金襴
(
きんらん
)
の
帷帳
(
とばり
)
を引き開いてみると、茶褐色に古ぼけた人間の頭蓋骨が
一個
(
ひとつ
)
出て来たので皆……ワア……と云って
後退
(
あとしざ
)
りした。
骸骨の黒穂
(新字新仮名)
/
夢野久作
(著)
取り上げたのは黄金の杖で、引きそばめると
後退
(
あとしざ
)
りし、煮えている釜の横手まで、一気にスーッと引っ返した。
神秘昆虫館
(新字新仮名)
/
国枝史郎
(著)
馬車が進むに従って、彼は自分のうちにある物が
後退
(
あとしざ
)
りしているのを感じた。
レ・ミゼラブル:04 第一部 ファンテーヌ
(新字新仮名)
/
ヴィクトル・ユゴー
(著)
これで突放されたようになって、思わず
後退
(
あとしざ
)
りすること三尺半。
婦系図
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
たじたじと
後退
(
あとしざ
)
りつつこの馬や尾の根据ゑたり光る風の
下
(
しも
)
海阪
(新字旧仮名)
/
北原白秋
(著)
そのまま波に追われながら
後退
(
あとしざ
)
りして来る
海士
(
あま
)
の呼吸を見てやっと能静氏の教うる「汐汲み」の呼吸がわかった。
梅津只円翁伝
(新字新仮名)
/
夢野久作
、
杉山萠円
(著)
『は。』と、言つて、
猾
(
ずる
)
さうな、臆病らしい眼附で健の顏を見ながら、忠一は
徐々
(
そろ/\
)
と
後退
(
あとしざ
)
りに出て行つた。
足跡
(旧字旧仮名)
/
石川啄木
(著)
後退
(
あとしざ
)
りつつ、をののきつ
思ひ出:抒情小曲集
(旧字旧仮名)
/
北原白秋
(著)
=或る囃子方の悪口を云って=「彼奴のような高慢な奴が鼓を打つと向うへ進まれぬ。
後退
(
あとしざ
)
りしとうなる」
梅津只円翁伝
(新字新仮名)
/
夢野久作
、
杉山萠円
(著)
と言つて、
猾
(
ずる
)
さうな、臆病らしい眼付で健の顔を見ながら、忠一は
徐々
(
そろそろ
)
と
後退
(
あとしざ
)
りに出て行つた。
足跡
(新字旧仮名)
/
石川啄木
(著)
ソロソロと寝台の上から
辷
(
すべ
)
り降りた。その壁の一点を凝視したまま、出来るだけその声から遠ざかるべく、正反対の位置に在る窓の処までジリジリと
後退
(
あとしざ
)
りをして来た。
ドグラ・マグラ
(新字新仮名)
/
夢野久作
(著)
野村はタヂタヂと二三歩
後退
(
あとしざ
)
つた。
病院の窓
(旧字旧仮名)
/
石川啄木
(著)
審判席の
草叢
(
くさむら
)
の中から、コスモスの花の中へジリジリと
後退
(
あとしざ
)
りをし初めたが、その肩に手をかけて、又野と同じ方向を見ていた三好も、すこし慌て気味で中腰になった。
オンチ
(新字新仮名)
/
夢野久作
(著)
渠は一二歩
後退
(
あとしざ
)
つた。
病院の窓
(旧字旧仮名)
/
石川啄木
(著)
小謡いがまだ二三番と済まぬうちに
脂切
(
あぶらぎ
)
った腕を首にさし廻わされた時なぞ、血相をかえて塩鰯をひねくりまわし、
後退
(
あとしざ
)
りして逃げて来るという、世にも身固い、涙ぐましい月日が
名娼満月
(新字新仮名)
/
夢野久作
(著)
すこしずつ
後退
(
あとしざ
)
りをし始めた。
超人鬚野博士
(新字新仮名)
/
夢野久作
(著)
“後退”の解説
後退(こうたい、en: retrograde movement)は、現代戦術論において、現在の戦況の改善を目的とし、戦闘を中止して敵との交戦を回避しつつ前線に対して後方への機動、または敵から距離を置く戦術行動である。後退行動とも呼ばれる。
(出典:Wikipedia)
後
常用漢字
小2
部首:⼻
9画
退
常用漢字
小6
部首:⾡
9画
“後”で始まる語句
後
後生
後方
後悔
後姿
後家
後手
後日
後世
後裔