待兼まちかね)” の例文
日出雄少年ひでをせうねんたゞ一人ひとりさだめてさびしく、待兼まちかねことだらうと、おもつたので、わたくし大佐たいさわかれげて、此處こゝ立去たちさことけつした。
呂昇の上京は、いまこそ来ぬうちから待兼まちかねられるが、廿五歳で出て来たおりには十銭の木戸で、それでも思ったほどの客足はなかったのである。
豊竹呂昇 (新字新仮名) / 長谷川時雨(著)
車屋との悶着を黙って衝立つッたって視ていた女が、其が済むのを待兼まちかねたように、此方こっちへ来いというから、其跟そのあといて玄関の次の薄暗いへ入ると
平凡 (新字新仮名) / 二葉亭四迷(著)
あらは日來ひごろの無念を晴し呉れんと直樣すぐさま御殿へ走り行き只今急用きふよう有て參りたり早々喜内樣に御目にかゝりたしと云入けるにやがて喜内は何事成哉と立出るを吾助は待兼まちかねて聲を
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
ミッセスが最前からお待兼まちかねです。と云って曙色になった頬に微笑を浮べて私を迎える。いまでは日本食の宴も半ば過ぎてテーブルを囲んだ人々の間を土人街の女が酒盃をみたしてまわっていた。
孟買挿話 (新字新仮名) / 吉行エイスケ(著)
「いや大変なお待兼まちかねだよ。継子さんはどうしたろう、どうしたろうって」
明暗 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
主翁は書生が帰ったので、待兼まちかねていてさかずきを持ったところであった。
黄灯 (新字新仮名) / 田中貢太郎(著)
近「御前様もお待兼まちかねでいらせられます、ぐお通り下さりませ」
後の業平文治 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)
みんな倒れました、それがいちどきにでしたから気になって、夜の明けるのを待兼まちかねてそこらを見ますと、息子の大切にしていた鉢植はちうえ——盆栽ものが、みんなたおれている。
人魂火 (新字新仮名) / 長谷川時雨(著)
サア、賓客おきやくさん、もうくらくなりましたぜ、大佐閣下たいさかくかもひどくお待兼まちかねで、それに、夕食ゆふしよく御馳走ごちさう悉皆すつかり出來できて、料理方れうりかた浪三なみざうめが、とり丸燒まるやき黒焦くろこげになるつて、眼玉めだま白黒しろくろにしてますぜ。
きいて大いに驚きいろ蒼然あをざめひかへ居たり時に後藤半四郎は今日けふ呼出よびだしに付先刻より呼込よびこみあるを今や/\と待兼まちかねたるゆゑ直樣浪人臺へ罷りいで一向容體なりふりにも構はず控へたりれば久兵衞は半四郎を
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
の明けるのを待兼まちかねて白翁堂のうちへやって参り
合せたゞ吐息といきのみつきゐたりぬかゝる所ろへ管伴ばんたうの忠兵衞外より歸り來り居間へ至るに長左衞門は待兼まちかねたりし風情ふぜいにてオヽ忠兵衞かおそかりし和郎そなたは此家に長の年月つとめて居て今にては管伴ばんたうとまで用ゐらるゝで有る故に大事の/\一個息子ひとりむすこへ取るよめ吾儕等わしら三個みたり皆目かいもく見ず和郎にまかした今度の一けんそれを
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)