往生わうじやう)” の例文
この畜類ちくるゐ、まだ往生わうじやうしないか。』と、手頃てごろやりひねつてその心臟しんぞうつらぬくと、流石さすが猛獸まうじうたまらない、いかづちごとうなつて、背部うしろへドツとたをれた。
何處どこからかうおまへのやうなひとれの眞身しんみあねさんだとかつてたらどんなにうれしいか、くびたまかじいてれはそれぎり往生わうじやうしてもよろこぶのだが
わかれ道 (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
へどをいたり下痢げりをしたりする不風流な往生わうじやうやである。シヨウペンハウエルがコレラをこはがつて、逃げて歩いたことを読んだ時は、甚だ彼に同情した。
続野人生計事 (新字旧仮名) / 芥川竜之介(著)
しか我々われ/\隨分酷ずゐぶんひど田舍ゐなか引込ひつこんだものさ、殘念ざんねんなのは、這麼處こんなところ往生わうじやうをするのかとおもふと、あゝ……。』
六号室 (旧字旧仮名) / アントン・チェーホフ(著)
きくべし當座のなぐさみものには是にてもなきにはましならんと或時お兼をとらへて樣々に口説くどきつひに無理往生わうじやうに本望を遂げるに此女おろか者なれば段々吾助にあざむかれ折々忍びあひける内何時いつしかはらに子を
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
御祕藏ごひざう呉道子ごだうしでもをがませて、往生わうじやうをさせておんなさいまし。
画の裡 (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
講演にはもう食傷しよくしやうした。当分はもうやる気はない。北海道の風景は不思議にも感傷的に美しかつた。食ひものはどこへたどり着いてもホツキ貝ばかり出されるのに往生わうじやうした。
講演軍記 (新字旧仮名) / 芥川竜之介(著)
そして自殺した彼女の死骸のそばで、武士らしく、立派りつぱに切腹した。この切腹といふのは、日本の国民的自殺法であつて、腹の上を、彼れ自身十文字に切つて往生わうじやうするのである。
日本の女 (新字旧仮名) / 芥川竜之介(著)
そこでほんもののポロニアスなら「Oh! I am slain.」と云ふ所なんだが、刀は切れるし、急所だし、うんと云つたきりお客は往生わうじやうさ。その血の出た事つたらなかつたさうだよ。
南瓜 (新字旧仮名) / 芥川竜之介(著)
もつとも僕等が往生わうじやうしたのは、もう五十年も前だからなあ。
LOS CAPRICHOS (新字旧仮名) / 芥川竜之介(著)