市松いちまつ)” の例文
おもいがけない出来事できごとに、茫然ぼうぜんとしていた小僧こぞう市松いちまつが、ぺこりとげたあたまうえで、若旦那わかだんなこえはきりぎりすのようにふるえた。
おせん (新字新仮名) / 邦枝完二(著)
この大きな島は、みんなの下にたいらによこたわっています。地上は、スコーネと同じように市松いちまつもようで、教会きょうかい農園のうえんがたくさんあります。
武州ぶしゅう御岳みたけ兵法大講会へいほうだいこうえについてわざわざ鄭重ていちょうに使いをよこしたのは、すこしみょうなと考えていたが、あれはの市松いちまつ、やっぱり家康めのさくであった」
神州天馬侠 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
碁盤縞が市松いちまつ模様となるのは碁盤の目が二種の異なった色彩によって交互に充填じゅうてんされるからである。しからば模様のもつ色彩はいかなる場合に「いき」であるか。
「いき」の構造 (新字新仮名) / 九鬼周造(著)
じぶんの昼寝のからだに、いつの間にか、意気な市松いちまつのひとえが、フワリとかけてあるのである。
丹下左膳:02 こけ猿の巻 (新字新仮名) / 林不忘(著)
紗綾形さやがたとか市松いちまつとか菱紋ひしもんとか、線の組合せで様々な紋様を織り出します。時には手をかけてかすりをも試みます。日本味のある敷物として永く栄えしめたい仕事であります。
手仕事の日本 (新字新仮名) / 柳宗悦(著)
コリント風の柱、ゴシック風の穹窿きゅうりゅう、アラビアじみた市松いちまつ模様のゆか、セセッションまがいの祈祷机きとうづくえ、——こういうものの作っている調和は妙に野蛮な美をそなえていました。
河童 (新字新仮名) / 芥川竜之介(著)
白と黒との市松いちまつの服をつけ、とがった三角の帽子をかぶっている大男、それはキシさんです。五色のしまの服をつけ、ふさのついた大きな帽子をかぶってる少年、それは太郎です。
金の目銀の目 (新字新仮名) / 豊島与志雄(著)
また面白いのは虫売で、やはり小屋掛けですが、その障子は市松いちまつ模様にってあり、小さなかごが幾つともなくくくりつけてありました。さまざまの虫が声をそろえて鳴いています。
鴎外の思い出 (新字新仮名) / 小金井喜美子(著)
ガチョウのせなかにっかって、はじめて空を飛んだとき、スコーネの土地が市松いちまつもようのぬののように見えたことを、そのとき、ふと思いだしました。
あたまのてっぺんまで、汚泥はねがるのもおかまいなく、よこびにした市松いちまつには、あめなんぞ、芝居しばい使つかかみゆきほどにもかんじられなかったのであろう。
おせん (新字新仮名) / 邦枝完二(著)
福島市松いちまつがいる。加藤虎之助とらのすけがいる。仙石権兵衛せんごくごんべえがいる。いもの子やら雀の子やら分らないのがまだ沢山いる。
新書太閤記:05 第五分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
五色のしまの服と、ふさのついた大きな帽子……キシさんは、白と黒との市松いちまつの服と、尖った三角の帽子……チヨ子は、紫のすっきりした服と、白い羽のついた帽子……そんなものをあつらえました。
金の目銀の目 (新字新仮名) / 豊島与志雄(著)
市松いちまつ、そこが昌仙のぬからぬところじゃ。われからことに援兵えんぺいをださせて、北条ほうじょう徳川とくがわなどの領地りょうちをさわがせ、そのに乗じておのれの野心をとげんとする。
神州天馬侠 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
市松いちまつもようのもめんのカーテンが、ベッドの前にかかっていました。ニールスは小屋の中を見ようと思って、カーテンをわきにのけました。と、まあ、なんという小屋でしょう。
とおりがかりの御挨拶ごあいさつで、んともおそれいりますが、どうやら、市松いちまつ野郎やろうが、んだ粗相そそうをいたしました様子ようす早速さっそくれてかえりまして、性根しょうねすわるまで、折檻せっかんをいたします。どうかこのまま。
おせん (新字新仮名) / 邦枝完二(著)
市松いちまつ! 市松!」とおごそかにばわった。
神州天馬侠 (新字新仮名) / 吉川英治(著)