だけ)” の例文
旧字:
大天井だいてんじょうだけを越えてからは若干いくらか道は平易ゆるくなったがやがて槍ヶ岳へかかると共ににわかに一層険しくなり、女子供は行き悩んだが
蔦葛木曽棧 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
立ちぎきしてわかりました。それはこぶしだけという山です。その山の北がわの深い森の中に、あの恐ろしい顔の岩があるのです。
奇面城の秘密 (新字新仮名) / 江戸川乱歩(著)
うしろに南支那大陸の九竜きうりよう半島を控へて居る所は馬関海峡の観があるが、ピンクの屹立きつりつして居る光景は島原の温泉うんぜんだけを聯想するのであつた。
巴里より (新字旧仮名) / 与謝野寛与謝野晶子(著)
南股を遡ること一里ばかりにして、左の唐松沢と分れ、右に湯沢を上れば、白馬温泉と改称されただけを経て鑓ヶ岳に達する。
白馬岳 (新字新仮名) / 木暮理太郎(著)
すすきかやそよいでいる野路の向うに、明神みょうじんだけとか、大内山おおうちやまという島原半島の山々が紫色にかすんで、中腹の草原でも焼き払ってるのでしょうか
棚田裁判長の怪死 (新字新仮名) / 橘外男(著)
此時からもう二人の間は、お互に警戒し合っている。こんな状態で済む筈はなく、ついにしずだけの実力的正面衝突となった。
賤ヶ岳合戦 (新字新仮名) / 菊池寛(著)
これは奥州南部兜明神かぶとみょうじんだけの山奥でいけどりましたる女夫めおとぐまでござい。右が雄ぐま、左が雌ぐま。珍しいことには、人のことばをよく聞き分けまする。
菊川の家並やなみ外れから右に入って小夜さよの中山を見ず。真直に一里半ばかり北へ上ると、俗に云う無間山むげんざんこと倶利くりだけの中腹に、無間山むげんざん井遷寺せいせんじという梵刹おてらがある。
名娼満月 (新字新仮名) / 夢野久作(著)
今にも、四明しめいだけ彼方かなたから吉水の一草庵におおいかぶさってくるように険悪な風雲を感じながら、さて
親鸞 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
三二 千晩せんばだけは山中にぬまあり。この谷は物すごくなまぐさのするところにて、この山に入り帰りたる者はまことにすくなし。昔何の隼人はやとという猟師あり。その子孫今もあり。
遠野物語 (新字新仮名) / 柳田国男(著)
墨のにじんだ明神だけのピラミツド
智恵子抄 (新字旧仮名) / 高村光太郎(著)
うねうねと曲りくねった野道一杯にすすきかやおおい乱れて、葉末の彼方かなたに島原半島の明神みょうじんだけ大内山おおうちやまが顔を現していることも、何の変りもありませんでしたが、この辺
棚田裁判長の怪死 (新字新仮名) / 橘外男(著)
彼の打明けた話によると、亀山六万石の城主松平龍山公はもうよわい七十に近い老体であって、とうから、京都の洛外らくがい四明しめいだけの山荘に風月を友として隠居しておられる。
牢獄の花嫁 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
四明しめいだけの壁にはまだ残雪のひだが白く描かれているが、この辺りではもう寒いというには足らない春のことである、その証拠にはあちらこちらの沢や谷でうぐいす啼声なきごえがしぬいている。
親鸞 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
陽がのぼるほどに、谷々や、峰で、小禽ことりが高くなった。中堂の東塔院から南へ下りて、幾つかの谷道をめぐって、四明しめいだけの南の峰を仰いでゆくと、そこが、南嶺なんれいの無動寺である。
親鸞 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
里の二月は紅梅こうばいのほころぶころだが、ここは小太郎山こたろうざんの中腹、西をみても東をながめても、駒城こまぎの峰や白間しらまだけなど、白皚々はくがいがいたるそでをつらねているいちめんの銀世界で、およそ雪でないものは
神州天馬侠 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
山城国やましろのくに四明しめいだけ
牢獄の花嫁 (新字新仮名) / 吉川英治(著)