山師やまし)” の例文
人間の頭ぐらいげんこくだくことができると云っている。んだか山師やましのようでもあるが、また真箇ほんとう真言しんごん行者ぎょうじゃのようでもある。
仙術修業 (新字新仮名) / 田中貢太郎(著)
其下等な動機や行為を、熱誠に取り扱ふのは、無分別なる幼稚な頭脳の所有者か、然らざれば、熱誠をてらつて、己れを高くする山師やましに過ぎない。
それから (新字旧仮名) / 夏目漱石(著)
それは、えらんだものにもつみがあったんだよ。ひとがなかったのだ。ただ、空宣伝からせんでんにおどらされたり、山師やましのようなものにあやつられたからだ。
心の芽 (新字新仮名) / 小川未明(著)
実に北海道にして始めて見るべき種類の者らしい、すなはち何れの未開地にも必ず先づ最も跋扈ばつこする山師やましらしい。
空知川の岸辺 (新字旧仮名) / 国木田独歩(著)
路傍に立っては、山師やましののしられ、門に立っては、水をかけられ、嘲罵ちょうば、迫害、飢寒、あらゆるぎょうを共にした。
大岡越前 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
それにしても、山師やましだったとは思いましたが、こんな悪事を働いていたとは意外です。先生、ひょっとしたら例の相場に手を出してしくじったのかも知れません。
盗難 (新字新仮名) / 江戸川乱歩(著)
大日向さまが、世間の山師やましのやうに、即座によくなるといふやうな、そんな教へは絶対にしませんので、その人々の祈祷きたうの根気を、御覧になり次第で、病悪を去つていたゞきます
浮雲 (新字旧仮名) / 林芙美子(著)
失敗しくじって損ばかりいたし、ようように金策を致して山師やましおどした宿屋、実にあぶない身代で、お客がなければ借財方しゃくざいかたからは責められまするし、月給をらぬから奉公人はいとまを取って出ます
八丁堀同心や半七らがうたがっていたような勤王や討幕などの陰謀はまるで跡方もないことで、一種の杞憂きゆうに過ぎなかった。かれはやはり初めに云ったような、偽公家にせくげ山師やましであった。
半七捕物帳:26 女行者 (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)
この菊塢きくう狂歌きやうかしゆ発句ほつくあり、(手紙と其書そのしよ移転ひつこしまぎれにさがしても知れぬは残念ざんねんにもかくにも一個いつこ豪傑がうけつ山師やましなにやらゑし隅田川すみだがは」と白猿はくゑんが、芭蕉ばせうの句をもじりて笑ひしは
隅田の春 (新字旧仮名) / 饗庭篁村(著)
世には山師やまし流の医者も多けれどただ金まうけのためとばかりにてその方法の無効無害なるはなほじょすべし、日本人は牛肉を食ふに及ばずなど言ふ牽強附会けんきょうふかいの説をつくりちよつと旧弊家丁髷ちょんまげ連を籠絡ろうらく
墨汁一滴 (新字旧仮名) / 正岡子規(著)
山師やまし! 人殺ひとごろし!』
六号室 (旧字旧仮名) / アントン・チェーホフ(著)
「東郷大将が大和魂をっている。肴屋さかなやの銀さんも大和魂を有っている。詐偽師さぎし山師やまし、人殺しも大和魂を有っている」
吾輩は猫である (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
「けしからんやつだ、売り物でないものを、なぜ店へさらしておく。こいつ、客をつる山師やましだな」
神州天馬侠 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
『この山師やまし! 人殺ひとごろし!』
六号室 (新字新仮名) / アントン・チェーホフ(著)
白山はくさんの裏とか、芝公園の中とか、銀座何丁目とか今までに名前を聞いたのは二三軒あるが、むやみに流行はやるのは山師やましらしくって行く気にならず、と云って
彼岸過迄 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
山師やましめッ」
神州天馬侠 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
成功を目的にして人生の街頭に立つものはすべて山師やましである
野分 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)