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喧噪
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けんそう
ふりがな文庫
“
喧噪
(
けんそう
)” の例文
茂太郎の不安は、繁昌と、人気と、
淫靡
(
いんび
)
と、
喧噪
(
けんそう
)
の室内に置くことで、山海と曠野に放し置くことの、絶対に安全なのを知っている。
大菩薩峠:25 みちりやの巻
(新字新仮名)
/
中里介山
(著)
酒盃のカチ合う音、酔いのまわった紳士の胴間声、それにジャズの
喧噪
(
けんそう
)
な楽の音が
交
(
まじ
)
りただもう頭の中がワンワンいうのであった。
恐怖の口笛
(新字新仮名)
/
海野十三
(著)
やがて
柵門
(
さくもん
)
の方に人馬の
喧噪
(
けんそう
)
が聞かれだしたころには、陽も高かった。そして帝以下の妃たちは、朝の
身粧
(
みよそお
)
いからすべてをすませ
私本太平記:06 八荒帖
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
鉦鼓
(
しょうこ
)
喧噪
(
けんそう
)
してひたすらに幽霊の追却に
力
(
つと
)
めているのは、これまた仏教の
圏外
(
けんがい
)
のものであるらしいことは、数年前にもすでにこれを説いたが
年中行事覚書
(新字新仮名)
/
柳田国男
(著)
傑作は
鼻唄
(
はなうた
)
まじりでも
喧噪
(
けんそう
)
の巷に於ても書きうるもの、閑静な部屋でジックリ腰でもすえればそれで傑作が書けるというような考えは悲惨な迷信だ。
オモチャ箱
(新字新仮名)
/
坂口安吾
(著)
▼ もっと見る
白砂に
這
(
は
)
い、ひろがれる千本松原、または紅葉に見えかくれする清姫滝、そのような絵はがきよりも浅草仲店の絵はがきを好むのだ。人ごみ。
喧噪
(
けんそう
)
。
もの思う葦:――当りまえのことを当りまえに語る。
(新字新仮名)
/
太宰治
(著)
何しろ若年の荒武者が二十八士も剣気を帯びての道中だから、その
喧噪
(
けんそう
)
、その無茶まことにおはなしにならない。
丹下左膳:01 乾雲坤竜の巻
(新字新仮名)
/
林不忘
(著)
すべては
滑
(
なめら
)
かに、多少の
喧噪
(
けんそう
)
があったにしても根本においては何事も起らなかったかのように取り行なわれた。
生存理由としての哲学:――哲学界に与うる書――
(新字新仮名)
/
三木清
(著)
読者は幼時こんな
悪戯
(
いたずら
)
をしたことはないか。それは人びとの
喧噪
(
けんそう
)
のなかに囲まれているとき、両方の耳に指で
栓
(
せん
)
をしてそれを開けたり閉じたりするのである。
器楽的幻覚
(新字新仮名)
/
梶井基次郎
(著)
或
(
あ
)
る時は、むせ返る酒場の
喧噪
(
けんそう
)
の中に、妖女は透き通るからだを酔いの桃色に染めて
嬌笑
(
きょうしょう
)
するであろう。
「悪霊物語」自作解説
(新字新仮名)
/
江戸川乱歩
(著)
いわれなき講和、償われぬ要求であると、内閣不信任は
喧
(
かまびす
)
しい
喧噪
(
けんそう
)
となった。
寵妾
(
ちょうしょう
)
お鯉の家に大臣は隠れているといって、麻布の妾宅焼打ちを、宣伝するものがあった。
一世お鯉
(新字新仮名)
/
長谷川時雨
(著)
部屋のなかの疲れたような静寂は、急に室内の壁の表面へ
喧噪
(
けんそう
)
な響を波打ちはじめた。
あめんちあ
(新字新仮名)
/
富ノ沢麟太郎
(著)
今日プロレタリア文芸理論の論議が
喧噪
(
けんそう
)
を極めているのと同様に、将来を期待される大衆文芸も亦、今やその理論を一応は確立すべき時にまで立ち至っているのではないだろうか。
大衆文芸作法
(新字新仮名)
/
直木三十五
(著)
そこに非常な
喧噪
(
けんそう
)
がある。口を除いてすべてのものがわれわれのうちにおいて語る。
レ・ミゼラブル:04 第一部 ファンテーヌ
(新字新仮名)
/
ヴィクトル・ユゴー
(著)
山下町の支那語韻の街まで彼女を追跡すると支那劇場の
喧噪
(
けんそう
)
な音楽の前でマリは
東洋
(
オンアン
)
族を驚かすような音を立てて倒れると、地上を寝床にして唇から泡を吹きながらタヌキ寝人を始めた。
スポールティフな娼婦
(新字新仮名)
/
吉行エイスケ
(著)
その
喧噪
(
けんそう
)
の花道を走る
芸妓
(
げいぎ
)
の
裾
(
すそ
)
に禿頭は
撫
(
な
)
でられつつ、その足と足との
間隙
(
かんげき
)
から見たる茶屋場などは、また格別の味あるものとなって、深き感銘とよき陶酔を老人に与えたであろうかも知れない。
めでたき風景
(新字新仮名)
/
小出楢重
(著)
それも汽車が午後八時東京駅を滑り出てから
暫
(
しばら
)
くは、車内の
喧噪
(
けんそう
)
、騒然たる会話や、座席の上に立って雑然と網棚の上に
抛
(
ほう
)
り上げた荷物を整理する人、駅に止る
毎
(
ごと
)
に
忙
(
せわ
)
しく弁当や茶の売子を呼ぶ人
急行十三時間
(新字新仮名)
/
甲賀三郎
(著)
絹を裂くような若い女の声に
喧噪
(
けんそう
)
の渦巻の中にあったような流石の広告屋の爺さんも驚いてあとをふりむくと喫茶店の戸口へ馳けつけました。
三角形の恐怖
(新字新仮名)
/
海野十三
(著)
相当
喧噪
(
けんそう
)
な人間の雑音は、こういう際だからやむを得ないにしても、この中へ、非常時用の器楽が一つ加わろうとまでは思い及ばなかったことでした。
大菩薩峠:37 恐山の巻
(新字新仮名)
/
中里介山
(著)
あの
喧噪
(
けんそう
)
な校庭に人影も物音もなくなるというのが妙に静寂をきわだててくれ、変に空虚で、自分というものがどこかへ無くなったような放心を感じる。
風と光と二十の私と
(新字新仮名)
/
坂口安吾
(著)
ワーッ、という
動揺
(
どよ
)
めきに、上甲板の醜い
喧噪
(
けんそう
)
は、一時に押し黙って、
眸
(
ひとみ
)
を吊り、眉をひそめ、
生唾
(
なまつば
)
をのんだ。
かんかん虫は唄う
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
黄塵
(
こうじん
)
白日、子らの
喧噪
(
けんそう
)
、バケツの水もたちまちぬるむ炎熱、そのアパアトに、気の毒なヘロインが、堪えがたい焦躁に、身も世もあらず、もだえ、のたうちまわっているのである。
音に就いて
(新字新仮名)
/
太宰治
(著)
後には
喧噪
(
けんそう
)
が残った。思いがけないワーナー団長の冒険計画についての是々非々の討論が活発に展開していった。賛成者はもちろん少数だった。
地球発狂事件
(新字新仮名)
/
海野十三
、
丘丘十郎
(著)
それでもその場はそれだけで、何のこだわりもなく、市場は以前のような
喧噪
(
けんそう
)
と
雑沓
(
ざっとう
)
にかえり、お雪ちゃんは首尾よく手頃のお
頭附
(
かしらつ
)
きを買って家へ帰りました。
大菩薩峠:32 弁信の巻
(新字新仮名)
/
中里介山
(著)
後ろから
羽交締
(
はがいじ
)
めに抱き止める者、腕を捻じとる者、足を持つ者、さながらに
刃傷
(
にんじょう
)
でもあるような
喧噪
(
けんそう
)
を起して、ドドドッと後ろの方へ一、二間も
退
(
ひ
)
き戻した。
剣難女難
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
エジプトの都会の
貧民窟
(
ひんみんくつ
)
で
喧噪
(
けんそう
)
と
怠惰
(
たいだ
)
の日々を送っている百万の同胞に向って、モオゼが、エジプト脱出の大理想を、『口重く舌重き』ひどい
訥弁
(
とつべん
)
で懸命に説いて廻ってかえって皆に迷惑がられ
惜別
(新字新仮名)
/
太宰治
(著)
こうして、一歩一歩乱闘の室に近くなった時分に、急にそのけたたましい
喧噪
(
けんそう
)
がいくぶん緩和されたような気分になったのは意外でした。それでも、たしかにそうです。
大菩薩峠:34 白雲の巻
(新字新仮名)
/
中里介山
(著)
老人の
馭者
(
ぎょしゃ
)
が、この
喧噪
(
けんそう
)
の中に、こっくりこっくり居眠りをしていた。馬車とは
愕
(
おどろ
)
いたが
英本土上陸戦の前夜
(新字新仮名)
/
海野十三
(著)
馬車、パラソル、二人曳きの腕車、その中に高く見える騎馬巡査の帽子、その路傍に押しつぶされかかっている風船売りの風船玉、すべての
喧噪
(
けんそう
)
と色彩とが一つになって流れている。
かんかん虫は唄う
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
エジプトの都会の奴隷の境涯に甘んじ貧民窟で
喧噪
(
けんそう
)
と怠惰の日々を送っている百万の同胞に、エジプト脱出の大事業を、「口重く舌重き」ひどい
訥弁
(
とつべん
)
で懸命に説いて廻ってかえって皆に迷惑がられ
風の便り
(新字新仮名)
/
太宰治
(著)
今までの
喧噪
(
けんそう
)
が、あるかなきかの世界に変ってしまったことも、とんと気がつかずに、夢のようにしていると、不意に背後に、
衣摺
(
きぬず
)
れの音がしたかと思うと、早くも、自分の両の眼を
大菩薩峠:27 鈴慕の巻
(新字新仮名)
/
中里介山
(著)
喧
漢検準1級
部首:⼝
12画
噪
漢検1級
部首:⼝
16画
“喧”で始まる語句
喧嘩
喧
喧騒
喧伝
喧々囂々
喧囂
喧嘩腰
喧々
喧擾
喧嘩師