)” の例文
成吉思汗ジンギスカン (その虎の頭を撫でて、大笑する)ははははは、お前たちに話したかな。おれは、此虎こいつに、太陽汗タヤンカンという名をけたよ。
それにしても、“親米小路”とは、いしくもけたものだ。……けだし、新興浅草の神経を、率直に、直截に表明したものだろう。
浅草風土記 (新字新仮名) / 久保田万太郎(著)
言葉の間に「絲瓜」といふことを挾むのが千代松の癖で、村の人々は「絲瓜の千代さん」といふ綽名あだなけてゐるのである。
天満宮 (旧字旧仮名) / 上司小剣(著)
恐らく白痴であろうと下宿の食堂に集る人達はうわさし合って、誰がけるともなく「カロリイン夫人」という名を命けていた。
新生 (新字新仮名) / 島崎藤村(著)
ところが生きたものを相手にする彼らには、是非とも先方の名を呼んで遊ぶ必要があった。それで彼らは私に向って犬に名をけてくれとせがみ出した。
硝子戸の中 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
その家は日本国中蘭学医の総本山とでも名をけてよろしい名家であるから、江戸は扨置さておき日本国中、蘭学社会の人で桂川と云う名前を知らない者はない。
福翁自伝:02 福翁自伝 (新字新仮名) / 福沢諭吉(著)
牙も木もすべてを総括した彫刻の意を全体にいい表わす会名がけられるならば、それは甚だ結構と思います。
せふかさね/″\りようえんあるをとして、それにちなめる名をばけつ、ひ先きのさち多かれといのれるなりき。
母となる (新字旧仮名) / 福田英子(著)
独り旅ですからな。とにかく私がここへ行き当ったんだから一つ名をけて遣ろうと思って長方形の池には
チベット旅行記 (新字新仮名) / 河口慧海(著)
当る十月とつきわしが生れたてえ話でごぜえます、縄で腹ア縛られたからお繩とけたらかんべえと云って附けたでごぜえますが、是でも生れた時にゃア此様こんな婆アじゃアごぜえません
菊模様皿山奇談 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)
名のけようが無かったのであろう、彼等は雲の表に住む、いかんとなれば、常念山脈と槍ヶ岳山脈と並行していて、その東と西は雲で、下界を封鎖しているにも係わらず、並行線の中間
奥常念岳の絶巓に立つ記 (新字新仮名) / 小島烏水(著)
... 芋の菓子というと下品に見えるが黄金芋こがねいもとでも名をければ味も上品で上等の席へ持出せる」としきりに自慢をいうそばから妻君が小さき皿へ羊羹ようかんの如きものを載せて出し「大原さん、あんずの羊羹を ...
食道楽:春の巻 (新字新仮名) / 村井弦斎(著)
父は本名を重兵衞と言つたのだが、祝詞なぞで、「宮司重兵衞鵜自物鵜奈禰突拔天白うじものうななつきぬきてまをす」も可笑をかしいからと言つて別に仲臣といふ名をけてゐたのである。
ごりがん (旧字旧仮名) / 上司小剣(著)
妾は児のかさがさね竜に縁あるを奇として、それにちなめる名をばけつ、い先のさち多かれといのれるなりき。
妾の半生涯 (新字新仮名) / 福田英子(著)
それをチベット人はインド語の意味を知らんものですから、パンデン・アチーシャは我々の街に誠にたっとい名をけて下すってありがたいと言って誇って居るです。
チベット旅行記 (新字新仮名) / 河口慧海(著)
叔母はわざわざ百合子のけた渾名あざなで継子を呼んだ。お延はすぐその慾張屋の様子を思い出した。
明暗 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
「女の児が生れた——僕も初めて父親おやじと成って見た——鶴という名をけたが、どうだろう」
桜の実の熟する時 (新字新仮名) / 島崎藤村(著)
度々たび/″\間違うからおとっさんが長二という名をおけなすったんだが、是にも訳のある事で、お前の手の人指ひとさしゆびが長くって中指と同じのを御覧なすって、人指の長い人は器用で仕事が上手になるものだから
名人長二 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)
そんな話を聞いて誠にきわどい坂をば降って参りました。もちろんその辺にはいろいろと天然の奇なる岩石に名をけてあるけれども余り長くなるから止します。
チベット旅行記 (新字新仮名) / 河口慧海(著)
その田舎に住む坊さんが名づけ親になって親夫ちかおという名をけてくれた——実はその名は坊さんが自分の子に命けるつもりで考えて置いたとかいうのを譲ってくれたのだと書いてよこした。
新生 (新字新仮名) / 島崎藤村(著)
そうしてその自分に「私」という名をける事のできなかった津田は、くまでもそれを「特殊な人」と呼ぼうとしていた。彼のいわゆる特殊な人とはすなわち素人しろうとに対する黒人くろうとであった。
明暗 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
村の世話方——といふ名を自身にけて、彼れは村を自由にしてゐた。
太政官 (旧字旧仮名) / 上司小剣(著)
今の家内が三番目の女の児を産んだ時、えゝお末とけてやれ、お末とでも命けたらおしまひに成るか、斯う思つたら——どうでせう、君、直にまた四番目サ。仕方が無いから、今度は留吉とした。
破戒 (新字旧仮名) / 島崎藤村(著)
「おつきさんだね、すると。お月さんは好い名だ。誰がけた」
明暗 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
「たしか親夫ちかおという名だっけね。あの名は——ほら、坊さんが自分の児にけるつもりで考えて置いたやつを、わざわざ譲ってくれたんだなんて、お前の手紙の中に書いてあったじゃないか」
新生 (新字新仮名) / 島崎藤村(著)