吉左右きっそう)” の例文
「まだ日が暮れたばかりだ。できることなら、勝の野郎を番所へ泊めたくねえ。お前は疲れているなら、ここで吉左右きっそうを待つがいい」
「いやいや、まだこんな事では、ご参考にもなるまいが、いずれ拙者も心がけて、吉左右きっそうをつかみ次第に、ご通知いたしましょう」
牢獄の花嫁 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
いでは出来ますまい、御帰参の叶う吉左右きっそうを聞くそれまではお国表にいる事でございましょうから、わたくしもどうかお国へ参りとうございます
菊模様皿山奇談 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)
きらずだ、つなぐ、見得けんとくがいいぞ、吉左右きっそう! とか言って、腹がいているんですから、五つ紋も、仙台ひらも、手づかみの、がつがつぐい。……
木の子説法 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
「じゃ、道のついでだ、栗木屋のほうを洗って眼がついたら、吉左右きっそうしらせに寄ってやるから、帰って待っていな」
右門捕物帖:23 幽霊水 (新字新仮名) / 佐々木味津三(著)
虫が知らせる……というほどのことでもないが、江戸へ近づくにつれて、なんとかして壺の吉左右きっそうが知れそうなものだと、しきりにそんな予感がするのです。
丹下左膳:03 日光の巻 (新字新仮名) / 林不忘(著)
かならずなんとかしますから、もうこんな不了見を起しちゃいけませんぜ。……この三日のあいだに、吉左右きっそうをお聞かせしますから、当にして待っていてください
顎十郎捕物帳:09 丹頂の鶴 (新字新仮名) / 久生十蘭(著)
「貴君の心持はよくわかっています、吉左右きっそうともに、これから三カ月後には姉君を伴うて必ず熊本へ参りますから、貴君も心を安んじ、御自愛第一にして待っていて下さい」
大菩薩峠:38 農奴の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
しからば、ご病気ご全快を待って、吉左右きっそうを見るより他に法はない。それまでに、粗忽そこつがあって美女を損じてはならぬというので、離れの一間は、警戒がよほど厳重になってきた。
純情狸 (新字新仮名) / 佐藤垢石(著)
「待っていて下さい。必ず二三日中には、吉左右きっそうを御聞かせしますから。」
素戔嗚尊 (新字新仮名) / 芥川竜之介(著)
かついえ公はごきげんよく御酒ごしゅをまいられ、たゞ一戦にてきをほろぼし藤吉郎めのくびを取って、月のうちにはみやこへのぼってみせようぞ、かならず吉左右きっそうを待っておられよと仰っしゃって
盲目物語 (新字新仮名) / 谷崎潤一郎(著)
「そんなら、別れるが——安心して吉左右きっそうを待ちなせえよ」
雪之丞変化 (新字新仮名) / 三上於菟吉(著)
しばらく元の席に帰って吉左右きっそうを待たれい
堺事件 (新字新仮名) / 森鴎外(著)
吉左右きっそうを待っていたのである。
嫁取婿取 (新字新仮名) / 佐々木邦(著)
が、しかしこのまま帰って、まだ吉左右きっそうを待っているはずのお品と文次郎の母親に顔を合せたとき、一体どんな事になるでしょう。
吉左右きっそう、おまちかねのこととぞんじて、とりあえず、正成の首級のみ、即刻、これに持参いたしました。……まずは、御実検を」
私本太平記:12 湊川帖 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
お喋りしてさぞお耳ざわりだったことでしょう。手前はこれから『かごや』へ行って、とっくりと検べあげ、夕方までに吉左右きっそうをお知らせいたします、では、ごめん
こはこの風説早くも聞えて、赤髯奴せきぜんど譎計けっけいに憤激せる草刈夥間なかまが、三郎の吉左右きっそうを待つ間、示威運動を行うなり。大助これを見て地蹈韛じだんだを踏みて狂喜し、欄干に片足懸けて半身を乗出だしつ。
金時計 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
早速三条の道徹方へ吉左右きっそうを知らせた。
聞書抄:第二盲目物語 (新字新仮名) / 谷崎潤一郎(著)
夜の九刻ここのつごろ、押田仙十郎は宙を飛んで氷川下の屋敷へ帰ってきた。すぐ奥へ通って、吉左右きっそうを待ちかねている重左の前へ出た。
剣難女難 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
「まことに、もう戻ってもよいじぶん。……いや今夜あたりは、馬にムチ打って、吉左右きっそう、これへもたらしてまいりましょう」
私本太平記:12 湊川帖 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
「わかりました。首を長くして吉左右きっそうを待っている一族どもも、さだめし、よろこぶことでしょう。御高恩はわすれません」
新書太閤記:11 第十一分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
「善は急げという。ご決心がついたら直ぐやり給え。予は、ここで酒を酌んで、吉左右きっそうを待っていよう」と、煽動した。
三国志:02 桃園の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
「みなさん、さだめしお疲れだろう。おそらく吉左右きっそうは明朝のことになる。今夜はここでゆるりと、野営なさるがいい」
新・水滸伝 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
……が、峠の方では、一同が案じ合って、吉左右きっそうを待っているにちがいない。さあ先生、そっちの方へ急ぎましょうぜ
新・水滸伝 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
百方奔命につかれるほど努力しても、何の吉左右きっそうも得られない事もあれば、又こちらの思いもうけぬ事を、ふと、先から耳に入れてくれる場合もある。
新編忠臣蔵 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
「ウム、それもよかろう。いずれ今宵のうちに、吉左右きっそうが知れるであろうから、心待ちに帰邸を待っておるぞ」
鳴門秘帖:02 江戸の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
中心に、手分けさせておりますが、それらの者も、なぜか、まだ一人とて立ち帰って来ません。自身、石川まで行って、吉左右きっそうのほど、確かめてまいりまする
私本太平記:03 みなかみ帖 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
「ご縁談の儀は、いかがでしょうか。一家君臣をあげて、この良縁の吉左右きっそうを、鶴首かくしゅしておるものですから」
三国志:04 草莽の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
ぐずぐずしていれば、丹羽昌仙にわしょうせん密使みっしが、秀吉ひでよしのところへついて、いかなる番狂ばんくるわせが起ろうも知れず、四日とたてば、木隠こがくれ龍太郎の吉左右きっそうもわかってくる。
神州天馬侠 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
魏の急使は、呉の主都、建業に着いて、いまや呉の向背こうはいこそ、天下の将来を左右するものと、あらゆる外交手段や裏面工作に訴えて、その吉左右きっそうを待っていた。
三国志:10 出師の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
足手纒あしてまといだ。それにあなたは、今夜の大将だから、これにいて、吉左右きっそうをお待ちくだされば、それでよい。決して、あなたの御使命を為損しそんじるようなことはせぬ
新書太閤記:07 第七分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
半分はそれにご同意を示し、半分はこの官兵衛の吉左右きっそうを心待ちにお待ちになるものと愚考ぐこうされまする。
黒田如水 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
万吉はどうしているだろうか? 常木鴻山こうざんもさだめし消息を案じているだろう? 松平左京之介様は、自分たちの吉左右きっそうを、首を長くして待っているに違いない。
鳴門秘帖:05 剣山の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
何としても、城中にあるお味方の最後のもう一耐ひとこらえが大事です。案じられてなりません。さだめしまた、長篠の方々は、首を長うして吉左右きっそうを待ちおりましょう。
新書太閤記:05 第五分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
血気な正季などは、日ごろの同気をかたらって、はや無断、陣立ちしたと知らされて、気が気でなく、呼び返しにやった使いの吉左右きっそうを、待たれているところなのだ。
私本太平記:04 帝獄帖 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
秀吉も、この二日ほどは、二人の吉左右きっそういかにと、独りその返報を、案じていたところらしい。
新書太閤記:11 第十一分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
あなたは大人しく屋敷に居て吉左右きっそうをお待ちなさいましという意味に受け取って差支えない。
江戸三国志 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
「では早々、新田殿とも打合せ、共に前途のよい御武運と吉左右きっそう、お待ちしております」
私本太平記:07 千早帖 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
はかっておるうちに、勅使はすでに、この里へお臨みなのだ。帝は沖のお船で吉左右きっそう
私本太平記:06 八荒帖 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
まあ一足先きに筑波屋へ宿をとって置いて、おれの吉左右きっそうを楽しみに待っていてくれ
江戸三国志 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
耀蔵は、附近の自身番じしんばんへ、縄付なわつきを抛り込むように預けて、すぐに前の四つ辻まで駈け戻った。そして、そこらの大通りを中心に縦横に駈け廻って、僚友波越八弥の吉左右きっそうをさがし求めた。
牢獄の花嫁 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
山科のお旦那、にわかに赤穂表へ用ありげに出立、お供して参る。吉左右きっそう、後より。
新編忠臣蔵 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
『初耳だな、十郎左。何かよい吉左右きっそうでも近いうちに探り取れるあてがあるのか』
新編忠臣蔵 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
と、彼の乗物の蔭に待っていた武将が、参内の吉左右きっそうを小声でたずねた。
三国志:02 桃園の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
吉左右きっそうを待ちかねていた梅雪入道は、くっきょうな武士七、八名に、身のまわりをかためさせて、築山つきやまちんへ足をはこんできた。そこには、黒衣覆面こくいふくめんの密書の使いが、両手をついてひかえていた。
神州天馬侠 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
「いや、そちはいつぞや、雍闓の使いに来た男ではないか。その後、待ちに待っておるに、沙汰のないのは、如何いたしたものだ。疾く帰って、主人雍闓に、吉左右きっそうを相待ちおると、申し伝えい」
三国志:10 出師の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
「官兵衛の行動こそ、眉つばものである。そんなあてにもならぬものの吉左右きっそうをお待ちあるまに、敵はいよいよ聯絡をかため、防備を充実し、ついには寄手の猛攻もかいなきものとなりましょうに」
新書太閤記:05 第五分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
と、也有やゆうの句の刻まれてある石碑のかげに、その時人影がうごいたようですが、それは問うまでもなく最前から、使いの吉左右きっそういかにと、ここに首を長くしていた釘勘で、近づく足音を聞くとすぐに
江戸三国志 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
「はやくても使いの吉左右きっそうがわかるのは、夜半か、明朝か」
私本太平記:06 八荒帖 (新字新仮名) / 吉川英治(著)