勤務つとめ)” の例文
それは自分じぶんが二十年以上ねんいじょう勤務つとめをしていたのに、それにたいして養老金ようろうきんも、一時金じきんもくれぬことで、かれはそれをおもうと残念ざんねんであった。
六号室 (新字新仮名) / アントン・チェーホフ(著)
喚起よびおこす袈裟治の声に驚かされて、丑松は銀之助が来たことを知つた。銀之助ばかりでは無い、例の準教員も勤務つとめの儘の服装みなりでやつて来た。
破戒 (新字旧仮名) / 島崎藤村(著)
この報知しらせを耳にした時、豊後守の驚愕はよその見る眼も気の毒なほどで、怏々おうおうとして楽しまず自然勤務つとめおこたりがちとなった。
北斎と幽霊 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
「何せい、おれは勤務つとめのある体だ。——御宝蔵の見廻りや用事を済まして、後から行くとしよう」
宮本武蔵:07 二天の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
赤十字の勤務つとめは、ひとり戦時のみでなく、平常ふだんの衛生状態をも、もつと立派にし、そして出来る事なら天国へ送る死人の健康状態をも申分の無いものになければならないのださうだ。
と心にちかひて表面うはべは辛抱したりし故久八は悦びいさ猶々なほ/\心を用ひ大切たいせつにぞ勤務つとめける
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
勤務つとめのためにやむなくこの大首府のほこりと暑さとのなかにいなければならない、という人がだね、——誰でもそういう人が、日曜以外の日でも、この町のすぐ近郊の自然の美しい風景のなかに
何うせ果は中風よい/\だ、はゝゝだが酒が一滴も通らなけりア口の利けねえ徳藏だ、かねてお前も知ってる通りのことだ、前々まえ/\勤務つとめをしている時分にも宜しく無いから飲むなてえが、飲まんけりアたまらん
松と藤芸妓の替紋 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)
余の得し所これにとどまらず、余は天国と縁を結べり、余は天国ちょう親戚を得たり、余もまた何日いつかこの涙のさとを去り、余の勤務つとめを終えてのち永き眠に就かん時、余は無知の異郷に赴くにあらざれば
基督信徒のなぐさめ (新字新仮名) / 内村鑑三(著)
「あの男に、堅気の勤務つとめなどが出来るものですか。」
(新字新仮名) / 徳田秋声(著)
れは自分じぶんが二十年以上ねんいじやう勤務つとめてゐたのに、れにたいして養老金やうらうきんも、一時金じきんれぬことで、かれれをおもふと殘念ざんねんつた。
六号室 (旧字旧仮名) / アントン・チェーホフ(著)
ここは会社と言っても、営業部、銀行部、それぞれあって、官省やくしょのような大組織。外国文書の飜訳ほんやく、それが彼の担当する日々にちにち勤務つとめであった。
並木 (新字新仮名) / 島崎藤村(著)
晩の八刻やつになると、老牢番、蔵六が、どんよりした顔を持って、勤務つとめに出てきた。
雲霧閻魔帳 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
翌日久五郎は勤務つとめ先の谷村警察署へ出て行った。彼は剣道の師範役なのである。
それに遠からず今の勤務つとめめて、農科大学の助手として出掛けるといふ、その希望のぞみが胸の中にあふれるかして、血肥りのした顔の面は一層活々と輝いた。
破戒 (新字旧仮名) / 島崎藤村(著)
勳章くんしやうだとか、養老金やうらうきんだとかふものは、徳義上とくぎじやう資格しかくや、才能さいのうなどに報酬はうしうされるのではなく、一ぱん勤務つとめ其物そのものたいして報酬はうしうされるのでる。しからばなん自分計じぶんばか報酬はうしうをされぬのでらう。
六号室 (旧字旧仮名) / アントン・チェーホフ(著)
こゝに集る人々の多くは、日々にち/\の長い勤務つとめと、多数の生徒の取扱とにくたぶれて、さして教育の事業に興味を感ずるでもなかつた。中には児童を忌み嫌ふやうなものもあつた。
破戒 (新字旧仮名) / 島崎藤村(著)
勲章くんしょうだとか、養老金ようろうきんだとかうものは、徳義上とくぎじょう資格しかくや、才能さいのうなどに報酬ほうしゅうされるのではなく、一ぱん勤務つとめそのものたいして報酬ほうしゅうされるのである。しからばなん自分じぶんばかり報酬ほうしゅうをされぬのであろう。
六号室 (新字新仮名) / アントン・チェーホフ(著)
其日々々の勤務つとめ——気圧を調べるとか、風力を計るとか、雲形を観察するとか、または東京の気象台へ宛てて報告を作るとか、そんな仕事に追われて、月日を送るという境涯でも
朝飯 (新字新仮名) / 島崎藤村(著)
勤務つとめの時間が近づいたと聞いて、彼は蒲団ふとん引剥ひきはがすように妻に言付けた。
家:01 (上) (新字新仮名) / 島崎藤村(著)