切出きりだ)” の例文
話し手の倉繁大一郎は、う物々しく切出きりだして、その効果を見極めるように、して広くもない会場を眺め渡すのでした。
それにちょうどこの御山みやまの石の門のようになっております、戸室口とむろぐちから石を切出きりだしますのを、みんな馬で運びますから、一人で五ひききますのでございますよ。
薬草取 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
醫學いがく原則げんそくは、醫者等いしやらをして貴方あなたじつはしめたのです。しかしながらわたし軍人風ぐんじんふう眞向まつかう切出きりだします。貴方あなた打明うちあけてひます、すなは貴方あなた病氣びやうきなのです。
六号室 (旧字旧仮名) / アントン・チェーホフ(著)
そういう切出きりだしで、津川がなにか人にかくして秘密な仕事をしていなかったか、変ったことでも見なかったかとたずねた。しかし吉岡技手はなにも知らなかった。
水中の怪人 (新字新仮名) / 山本周五郎(著)
切出きりだしの小刀とか、はがね帯金おびがねいで作ったのみ位のものであるが、生れつきり性の上に、半年の間退屈まぎれに毎日朝から晩までこつこつ刻んでいたので、一廉ひとかどの彫刻家になってしまったのである。
由布院行 (新字新仮名) / 中谷宇吉郎(著)
若い女客は、手提袋から可愛らしいハンケチを出して、それをまさぐりながら、しばらくは切出きりだし兼ねている様子です。
背後うしろうねつて切出きりだしたやうな大巌おほいはが二ツ三ツ四ツとならんで、うへはうかさなつて背後うしろつうじてるが、わし見当けんたうをつけて、心組こゝろぐんだのは此方こツちではないので
高野聖 (新字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
医学いがく原則げんそくは、医者等いしやらをして貴方あなたじつわしめたのです。しかしながらわたし軍人風ぐんじんふう真向まっこう切出きりだします。貴方あなた打明うちあけています、すなわ貴方あなた病気びょうきなのです。
六号室 (新字新仮名) / アントン・チェーホフ(著)
そして何時いつでも切出きりだしさえすれば、二人は天下晴れての恋人同士だったのです。
むかぎしまたやますそで、いたゞきはう真暗まつくらだが、やまからその山腹さんぷくつきひかりらしされたあたりからは大石おほいし小石こいし栄螺さゞえのやうなの、六尺角しやくかく切出きりだしたの、つるぎのやうなのやらまりかたちをしたのやら
高野聖 (新字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
便所の側から飛出して歸ると、岩松が歸つたばかりで戸口には手拭に包んだ切出きりだしが落ちて居る。それを拾つて入つて、一たん押入へ投り込んだが、お駒にからかはれて、急に殺す氣になつたんだよ。