刀架かたなかけ)” の例文
太郎左衛門はとこ刀架かたなかけにかけた刀をおろして、それを半ば抜いてちょと眼を通し、それが済むと目釘めくぎに注意して寝床にいた。
切支丹転び (新字新仮名) / 田中貢太郎(著)
跡部は荻野等を呼んで、二にんとらへることを命じた。その手筈てはずはかうである。奉行所に詰めるものは、づ刀をだつして詰所つめしよ刀架かたなかけける。
大塩平八郎 (新字旧仮名) / 森鴎外(著)
勇は刀架かたなかけに秘蔵の虎徹こてつを載せて、敷皮の上に、腕をこまねき端然と坐っていたが、兵馬を見る眼が、今日はいつもよりけわしい。
雨蛙は以前山に棲んでいた頃、程近い人家にまぎれ込んで、竹製の刀架かたなかけの孔のなかにもぐり込んでいたことがありました。
艸木虫魚 (新字新仮名) / 薄田泣菫(著)
小姓は持っていた佩刀はかせを、刀架かたなかけにかけて去った。内膳はちょっとためらったが、しかしこれも入側いりがわへさがった。
右太之進は大きくうなずいて、床の間の刀架かたなかけの一刀を取りおろしました。
彼は、事毎ことごとに興奮した。隣屋敷まで聞えそうな声で、わめき立てた事も一再ではない。刀架かたなかけの刀に手のかかった事も、度々ある。そう云う時の彼はほとんど誰の眼にも、別人のようになってしまう。
忠義 (新字新仮名) / 芥川竜之介(著)
彼はつかんでいた粗朶そだでおきの山をつきくずした。ぶるッと武者ぶるいを覚えた。立ちあがって、壁につくりつけてある刀架かたなかけからわざものを取り外した。左手にひきつけてもとの座にどんとすわった。
石狩川 (新字新仮名) / 本庄陸男(著)
伊賀亮ます/\わらひこゝ刀架かたなかけめ其方如き者の刄が伊賀亮の身に立べき切ば見事に切て見よと立掛たちかゝるを左京と常樂院の兩人は中へ分入押止おしとゞめければ天一坊は疊の上より飛下とびおり伊賀亮に向如何に伊賀亮
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
おまけに、長押なげしには槍、棒、薙刀なぎなたのような古兵具ふるつわものたてを並べ、玄関には三太夫のような刀架かたなかけ残塁ざんるいを守って、登楼の客を睥睨へいげいしようというものです。
床の間の鹿の角の刀架かたなかけに一本の刀が飾ってあった。由平はそれを取って阿芳に斬りつけた。刀は外れてふすまあたった。其の音を聞きつけて婢が飛んで来た。
阿芳の怨霊 (新字新仮名) / 田中貢太郎(著)
ほんの一坪の庭に面した六畳は床の間付きであるが、古ぼけた茶箪笥ちゃだんすと火鉢、炭取などのほかには、家具らしい物はなにもなく、床の間には刀架かたなかけがあるだけだった。
花も刀も (新字新仮名) / 山本周五郎(著)
その画像の前には具足櫃ぐそくびつがあって、それと釣合いを取って刀架かたなかけがある。長押なげしにはやりがある。薙刀なぎなたがある。床の間から襖にそうてうずたかく本箱が並んでいる。
大菩薩峠:29 年魚市の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
太郎左衛門は時刻をはかって寝床を抜け、宵に調べてあった刀架かたなかけの刀を腰にして、そっと女客のへやへ往った。行燈あんどんの光はぼんやりと二人の枕頭まくらもとを照らしていた。
切支丹転び (新字新仮名) / 田中貢太郎(著)
敷きっぱなしにしてある蒲団ふとんの枕許に形ばかりの刀架かたなかけが置いてあって、それに大小の一腰が置いてあります。
大菩薩峠:17 黒業白業の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
広巳は火鉢をすててとこの方へ走った。床には刀架かたなかけがあって、広巳が記念の軍刀と日本刀が架けてあった。広巳は日本刀を引掴ひっつかんでり、すらりときながら岡本の方をり向いた。
春心 (新字新仮名) / 田中貢太郎(著)
刀架かたなかけにある刀脇差と、柱にかかっている外套がいとうの着替と、一方の隅におしかたづけられている測量機械のようなものと、それと向き合った側の六畳に、机腰掛が
大菩薩峠:18 安房の国の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
今の話の三番の室には刀架かたなかけがあって、大小の刀が置いてあります。その前の床柱にもたれてキチンと坐っているのは、兵馬よりは二ツ三ツも若かろうと思われるほどの美少年であります。
大菩薩峠:15 慢心和尚の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
と言って、中啓を閉じて、ハタハタと刀架かたなかけを叩いたのは、人を呼ぶためらしい。
大菩薩峠:30 畜生谷の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
兵馬は、主膳の枕許の刀架かたなかけから刀を取って、その鍔音つばおとを高く鳴らすと
大菩薩峠:17 黒業白業の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
床の間の刀架かたなかけに縦に飾ってある梨子地なしじさやの長い刀を指しました。
大菩薩峠:14 お銀様の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)