わる)” の例文
帰したものなら帰って来なくちゃならねえのに一向帰らねえのは、愈々只事じゃあるめえというんで、つい色々とわるい方にも気が廻ったんです。
すべてのものの結末は寂しい! たとへそれが善い事であれ、わるい事であれ、最後には必ず溜息が伴はれるではないか?
嘘をつく日 (旧字旧仮名) / 水野仙子(著)
と、自分のうらないが的中しないことを今はしきりにいのっていた。気のせいか、こよいに限って、燈火ともしびの色もわるい。
三国志:07 赤壁の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
主僧凶夢を苦に病む 私の泊った主僧あるじは何かこの間から続けてわるい夢を見たというので大いに恐れて居る。
チベット旅行記 (新字新仮名) / 河口慧海(著)
わるいことは単独には来ない——邦夷の心にいたかすかな宿命観は、今回の換え地出願も泡のように消えそうな気がした。かなしみが彼の静かな表情をゆがめてしまった。
石狩川 (新字新仮名) / 本庄陸男(著)
「この駅の宿舎には昔からわるいことがしばしばあるのですが、その妖怪の正体は今にわかりません」
この解放治療場開設のため周囲を地均じならし致しまして以来、斯様かように著しい衰弱の色を見せて参りましたのは、何かのわるい前兆と申せば申されぬ事もないようであります。
ドグラ・マグラ (新字新仮名) / 夢野久作(著)
お訊きするのですけれども、その事に就ては何も仰有らず、手紙が来ることさえ、私に隠匿かくそうとなすっていらっしゃるのよ。何かわるい事でも起ったのではないでしょうか
P丘の殺人事件 (新字新仮名) / 松本泰(著)
彼は、つぎつぎに襲って来るわるい偶然に、ほとんど泣きたくなった。だがどうすることも出来なかった。無理に一枝を追ったりなんかすると、すぐ京子に告口されることは明かだった。
第二の接吻 (新字新仮名) / 菊池寛(著)
それはほんの刹那せつなあいだで、やがて向うのひさしの下に動いているものを見つけますと、私は急に飛び上って、わるい夢からでも覚めたように意味のない大声を挙げながら、いきなりそこへ駈けつけました。
疑惑 (新字新仮名) / 芥川竜之介(著)
燁代さんは色青ざめて、それが何かしらわるいしらせのように感じた。
昭和遊撃隊 (新字新仮名) / 平田晋策(著)
あらゆるいけないわるいことも、側からどんどんいことに変えられていくのだろう、まるで手品師てづましが真っ白なまま函へ入れた糝粉しんこ細工のふたとればたちまち紅美しき桃の花一輪とは変っているように。
小説 円朝 (新字新仮名) / 正岡容(著)
和作はわるい予感を受けたやうに、その声のする方へ振り返つた。
朧夜 (新字旧仮名) / 犬養健(著)
の作者水守亀之助氏「死人の欲望」の作者片岡鉄兵氏「山岡老人の犯罪」の作者岡田三郎氏「家常茶飯」の作者佐藤春夫氏「わるい日」の作者戸川貞雄氏「ラジオの怪」の作者伊藤松雄氏「阿片と恋」の作者橋爪健氏「台北の夜」の作者広津和郎氏「夢魔」の作者長田幹彦氏
探偵文壇鳥瞰 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
何となく、火色のわる短檠たんけいの灯を見つめて、陰々滅々いんいんめつめつこだまする犬の声をかぞえるように聴き耳をたてていた。
宮本武蔵:03 水の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
なぜならば葬式を出すにも日のわるいがあって、其日それをよく見定めてから、どういう方法の葬式にしようか、この屍体はどう始末をつければよいかということをラマに尋ねなければならん。
チベット旅行記 (新字新仮名) / 河口慧海(著)
いろいろわるしらせがございました。
邪宗門 (新字新仮名) / 芥川竜之介(著)
「ウウム、なんてえわるい晩だろう。おまけに、まだこっちにも大変なことが起こっていますぜ」
鳴門秘帖:06 鳴門の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
ですから自然、馬相について教わっていましたが、四本の脚が、みな白いのを四白といい、これも凶馬とされていますが、額に白点のある的盧てきろは、もっとわるいといわれています。
三国志:06 孔明の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
「どん底のおら達に、縁起がいもわるいもあるもんか。これより下はありやしない」
大岡越前 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
元日なのに、きょうはなんというわるい日か、彼女の花園には蛇ばかりが出た。
宮本武蔵:04 火の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
「だからよ、その夢がわるく、裏切られてきやしないかと心配しているのだ」
鳴門秘帖:05 剣山の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
だから、そのほうにはなんの取り越し苦労もしていないが、お通の来ていないことは、彼を落胆がっかりさせた程度でなく、なにか、お通の身の上に、わるい事が起っているような胸騒ぎを駆りたててくる。
宮本武蔵:05 風の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
「そういうわるい行末が見えていても、安太郎さんは私を……」
(新字新仮名) / 吉川英治(著)
きょうは政子のとつぐ日であった。わるい日を選ぶわけはない。
源頼朝 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
「えっ。じゃ、何かわるいところへ踏み込んで来たのかな?」
江戸三国志 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
どういう悪日とわるい方位をたどってきたものだろうか。
三国志:02 桃園の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
「では、どうわるいのか。その夢は」
三国志:11 五丈原の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)