もうけ)” の例文
案内者はこう云って、仲に立った者が此レールを請負うけおって、一間ばかりの橋一つにも五十円の、枕木一本が幾円のと、不当なもうけをした事を話す。
みみずのたはこと (新字新仮名) / 徳冨健次郎徳冨蘆花(著)
しかし商売気に制限せられ主人のもうけ主義に制限せられ客の無趣味に制限せられて上等の料理を作ることが出来ないのです。
食道楽:秋の巻 (新字新仮名) / 村井弦斎(著)
一太も母同様、玉子を沢山売りたいと思った。玉子は納豆よりずっともうけがあったから、よく売れると帰りに一太は橋詰の支那ソバを奢って貰えた。
一太と母 (新字新仮名) / 宮本百合子(著)
夕方に商人が出る時分に「おはよ/\」の蝋燭ろうそく屋の歌公というのが、薩摩さつま蝋燭を大道商人に売り歩いて、一廉ひとかどもうけがあった位だということでした。
江戸か東京か (新字新仮名) / 淡島寒月(著)
もとより口実、狐が化けた飛脚でのうて、今時いまどき町を通るものか。足許あしもとを見て買倒かいたおした、十倍百倍のもうけおしさに、むじなが勝手なことをほざく。引受ひきうけたり平吉が。
国貞えがく (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
見たところ派手でハイカラでもうけの荒いらしいその商売が、一番自分の気分にふさっているように思えた。
あらくれ (新字新仮名) / 徳田秋声(著)
日の足もはや西に傾く頃家に還るを見れば、菜籠なかご一摘ひとつみばかり残れるは明朝の晨炊あさめしもうけなるべし。
吉田松陰 (新字新仮名) / 徳富蘇峰(著)
その後仕末をする為に、今度は困って来た……何かもうけ仕事をしなけりゃ成らんと成って来た……
家:02 (下) (新字新仮名) / 島崎藤村(著)
日頃懇意の仲買にすすめられて云わば義理ずくで半口はんくち乗った地所の売買が意外の大当り、慶三けいぞうはそのもうけの半分で手堅い会社の株券を買い、残る半分で馴染の芸者を引かした。
夏すがた (新字新仮名) / 永井荷風(著)
普段ならば人々は見向きもしないのだが、畑作をなげてしまった農夫らは、捨鉢すてばちな気分になって、馬の売買にでも多少のもうけを見ようとしたから、前景気は思いのほか強かった。
カインの末裔 (新字新仮名) / 有島武郎(著)
五本ついたを三銭ならばと直切ねぎつてく、世はぬば玉のやみもうけはこのほかにも有るべし、信如はかかる事どもいかにも心ぐるしく、よし檀家の耳には入らずとも近辺の人々が思わく
たけくらべ (新字旧仮名) / 樋口一葉(著)
末吉はたねや調味料もつとめて良いものを選び、もうけも貪らないようにした。
日日の麺麭 (新字新仮名) / 小山清(著)
翌日から夜店にも出て、三十銭のもうけがある様になった。
俗臭 (新字新仮名) / 織田作之助(著)
「この暑いに——、沢山たんともうけがねえだ」
本州横断 癇癪徒歩旅行 (新字新仮名) / 押川春浪(著)
ことしからまるもうけぞよ娑婆しゃばの空 一茶
俳句はかく解しかく味う (新字新仮名) / 高浜虚子(著)
もうけけは山分けだ。
ほんついたを三せんならばと直切ねぎつてく、はぬばたまやみもうけはこのほかにもるべし、信如しんによかることどもいかにもこゝろぐるしく、よし檀家だんかみゝにはらずとも近邊きんぺん人々/″\おもはく
たけくらべ (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)