かたち)” の例文
もとの姿はすべて消え、異樣のかたちは二にみえてしかも一にだにみえざりき、さてかくかはりて彼はしづかに立去れり 七六—七八
神曲:01 地獄 (旧字旧仮名) / アリギエリ・ダンテ(著)
そのかたち象首一牙で、四手に瓢と餅と斧と数珠をもち、大腹黄衣で鼠にのる(ジャクソンの『グジャラット民俗記』一九一四年ボンベイ板、七一頁)
円髷まるまげにこそ結ったが、羽織も着ないで、女のらしい嬰児みどりごいだいて、写真屋の椅子にかけたかたちは、寸分の違いもない。
夫人利生記 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
マリヤの笄は代々孫兵衛の家につたえられ、仏間と見せかけて実は祈祷きとうの部屋である柱の切嵌きりはめに埋めて、七家のものの信仰のかたちとあがめておりました。
鳴門秘帖:06 鳴門の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
家家の屋根を越えて、青空に高くひるがへる魚のかたちは、子供の將來に於ける立身出世と、富貴と健康と、名譽と榮達と、とりわけ男らしい勇氣を表象して祝福されてゐる。
宿命 (旧字旧仮名) / 萩原朔太郎(著)
一匹の畜生が——その仲間のやつを私は傲然ごうぜんと殺してやったのだ——一匹の畜生が私に——いと高き神のかたちかたどって造られた人間である(2)私に——かくも多くの堪えがたい苦痛を
黒猫 (新字新仮名) / エドガー・アラン・ポー(著)
自分の胸はときめいた,注意はもウその音一ツに集まッてしまッて心は目の前にその人のかたちを描いていた,その人の像はありありと目の前に見えるのに、その人は自分のうしろへ立ッて、いたずらな
初恋 (新字新仮名) / 矢崎嵯峨の舎(著)
でも、そこには物のかたちなど、何も映っていなかった。
あさひの鎧 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
それ、死のかたちはやがて死をたし、生の姿は
頌歌 (旧字旧仮名) / ポール・クローデル(著)
上の方にいた帝王のかたちをした者がいった。
考城隍 (新字新仮名) / 蒲 松齢(著)
美術を介したる人間のかたちに於ては
恢復期 (新字旧仮名) / 神西清(著)
我はかの異象いしやうを見、かのかたちのいかにして圓と合へるや、いかにしてかしこにその處を得しやを知らんとせしかど 一三六—一三八
神曲:03 天堂 (旧字旧仮名) / アリギエリ・ダンテ(著)
すると獄室の障子に、文観の影が、不動明王のかたちに映っていたという使者の言葉だったので、俄に
私本太平記:03 みなかみ帖 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
一小間ひとこま硝子がらすを張って、小形の仏龕ぶつがん、塔のうつし、その祖師のかたちなどを並べた下に、年紀としごろはまだ若そうだが、額のぬけ上った、そして円顔で、眉の濃い、目の柔和な男が
夫人利生記 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
景色の、幻燈の、雪のつもる影を過ぎ去つて行く、さびしい青猫のかたちをかんじた。
宿命 (旧字旧仮名) / 萩原朔太郎(著)
(2)旧約全書創世記第一章第二十六—二十七節、「神いい給いけるは我儕われらかたどりて我儕のかたちのごとく我儕人を造り……と、神その像のごとくに人を創造つくりたまえり。すなわち神の像の如くに之を造り云々うんぬん
黒猫 (新字新仮名) / エドガー・アラン・ポー(著)
永遠とこしへの悦び(これが願ふところに從ひ萬物皆そのあるごとくなるにいたる)の印せるかたちも心足らへる如く見えき 七六—七八
神曲:03 天堂 (旧字旧仮名) / アリギエリ・ダンテ(著)
自身でのりの霊場を世間以上に俗化したり、国家からうけた特別な待遇を腐敗させたり、また世人の魂のを踏み消してしまいながら——なお金色の大日如来だいにちにょらいかたちだけにすがって
新書太閤記:04 第四分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
天の高いところに、かれらの眞神しんしんかたちを眺めた。
蝶を夢む (旧字旧仮名) / 萩原朔太郎(著)
〔かの像〕人のかたちいかにして神の圓とかくよく結び合へるや、いかにしてその中にあるをうるや。換言すれば神人合一の秘義
神曲:03 天堂 (旧字旧仮名) / アリギエリ・ダンテ(著)
「では……そなたは、お父君のおいたつきがなおるようにと、その小さい手で、御仏みほとけかたちを作っていたのですか。……そうかや?」頭髪つむりをなでると十八公麿は、母の睫毛まつげを見あげて、おさなごころにも
親鸞 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
この時きたな欺罔たばかりかたち浮び上りて頭とからだを地にもたせたり、されど尾を岸に曳くことなかりき 七—九
神曲:01 地獄 (旧字旧仮名) / アリギエリ・ダンテ(著)
仮に新九郎の夢を憶測すれば、それは終生の雄敵ゆうてき鐘巻自斎のかたちか、分れ難きを分れている可憐な千浪の姿であらねばならぬけれど、今朝の新九郎は、夢みている人にしては余りに淋しい寝顔である。
剣難女難 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
ゐさらひを洗ふばかりにいたくゆがめる我等のかたちをしたしく見、我何ぞ顏を濡らさゞるをえん 二二—二四
神曲:01 地獄 (旧字旧仮名) / アリギエリ・ダンテ(著)