あと)” の例文
旧字:
殺された嫁さんの亭主は泊りがけで、遠い海岸の方に出かけたきり、三四日帰宅しないというし、あとは全くの他人である。
惨事のあと (新字新仮名) / 素木しづ(著)
おそいつて、荷物を一度にしたんだから仕方がない。それに僕一人ひとりだから。あとは下女と車屋くるまや許でどうする事も出来ない」
三四郎 (新字旧仮名) / 夏目漱石(著)
どうかして僕がよそから工面くめんしなければならないのは貴女あなたにもわかるでせう。だから今夜はこれだけおもちなさい。あとは二三日うち如何どうにかますから。
節操 (新字旧仮名) / 国木田独歩(著)
茂之助は仰臥あおむけになって横目で二人の様子を見ながら、空鼾そらいびきを掻くうちに、あとの二人もグウー/\と寝て居ます。
霧陰伊香保湯煙 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)
三人の土人が地にたおれた。あわてふためいたあとの土人は仆れた土人を抱きかかえ忽ち丘から見えなくなった。
あとは皆小官吏や下級の会社員ばかりで、皆朝から弁当を持って出懸けて、午後は四時過でなければ帰って来ぬ連中れんじゅうだから昼のうちは家内が寂然しんとする程静かだった。
平凡 (新字新仮名) / 二葉亭四迷(著)
とお雪は夫が買って来たミルク・フッドを茶碗ちゃわんに溶かして、さじを添えて持って来た。子供は香ばしそうな飲料のみものを一寸あじわったばかりで、あとは口を着けようともしなかった。
家:02 (下) (新字新仮名) / 島崎藤村(著)
俺も一箇ひとりの女ゆゑに身を誤つたそのあとが、盗人ぬすと家業の高利貸とまで堕落してこれでやみやみ死んで了ふのは、余り無念とは思ふけれど、当初はじめ出損でそくなつたのが一生の不覚、あれがそもそも不運の貫一のからだ
金色夜叉 (新字旧仮名) / 尾崎紅葉(著)
根岸では伯母さんも姉さんも停車場ステーションまで見送つて呉れるといふ。叔父さんのうちでは、叔父さん一人だけ留守居で、あとのものはみんな送つて行くことに成つた。婆やまで仕度した。
出発 (新字旧仮名) / 島崎藤村(著)
私が此の二十枚の皿を悉皆みんな打砕ぶっくだいたが、二十人に代って私が一人死ねば、あとの二十人は助かる、それに斯うやって大切でえじな皿だって打砕ぶちくだけばもと土塊つちッころだ、金だって銀だって只形を拵えて
菊模様皿山奇談 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)
最早もうわかつてますよ。それであとぶんいづれ二三日うちもつて来ます。』
節操 (新字旧仮名) / 国木田独歩(著)
と逆に捻倒ねじたおした手練てなみを見ると、あとの二人がばら/\/\と逃げました。
菊模様皿山奇談 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)
どうせ飛び出すのだ、何しろ訪ねて見ようと銀之助は懐中くわいちゆうを改めると五円札が一枚とあと小銭こせんで五六十銭あるばかり。これでも仕方がない不足の分は先方むかふの様子を見てからの事とぐ下にりた。
節操 (新字旧仮名) / 国木田独歩(著)