今夜こよひ)” の例文
今夜こよひは満願とてかの橋にもいたり殊更ことさらにつとめて回向ゑかうをなし鉦うちならして念仏ねんぶつしけるに、皎々けう/\たる月遽然にはかくもりて朦朧まうろうたり。
かくいさぎよきものの、いかなれば愚昧ぐまい六四貪酷どんこうの人にのみつどふべきやうなし。今夜こよひ此のいきどほりを吐きて年来としごろのこころやりをなし侍る事のうれしさよといふ。
一寸ちょっと前言した如く、巻九(一六六四)に、雄略天皇御製歌として、「ゆふされば小倉の山に臥す鹿の今夜こよひは鳴かずねにけらしも」という歌がっていて
万葉秀歌 (新字新仮名) / 斎藤茂吉(著)
其日のうち逃帰にげかへらむかとすでに心を決せしが、さりとては余り本意ほい無し、今夜こよひ一夜ひとよ辛抱しんばうして、もし再び昨夜ゆうべの如く婦人のきたることもあらば度胸をゑての容貌とその姿態したいとを観察せむ
妖怪年代記 (新字旧仮名) / 泉鏡花(著)
かれ豐玉とよたま毘賣の命、その歎を聞かして、その父に白して言はく、「三年住みたまへども、恆は歎かすことも無かりしに、今夜こよひ大きなる歎一つしたまひつるは、けだしいかなる由かあらむ」
剛さんは如何どうなすつたでせう、今夜こよひはお帰りの日取なんだが、今頃までお帰りないのは、大方おほかた此の雨でお泊りのでせう、お一人なら雨や雪に頓着とんちやくなさるひとぢやないけれど、お友達と御一所ごいつしよでは
火の柱 (新字旧仮名) / 木下尚江(著)
今夜天如洗 今夜こよひ天洗ふが如く
閉戸閑詠 (新字旧仮名) / 河上肇(著)
君は今夜こよひも 逢ひに来て
別後 (新字旧仮名) / 野口雨情(著)
今夜こよひ幽かに照らす
藤村詩抄:島崎藤村自選 (旧字旧仮名) / 島崎藤村(著)
左内いよいよ興に乗じて、れいの議論きはめて一三〇妙なり。ひさしき疑念うたがひ今夜こよひせうじつくしぬ。こころみにふたたび問はん。
黄葉もみじを内容としているが書持の歌い方がややおもむきことにし、夜なかに川瀬に黄葉の流れてゆく写象を心に浮べて、「今夜こよひもか浮びゆくらむ」と詠歎している。
万葉秀歌 (新字新仮名) / 斎藤茂吉(著)
今夜こよひは四十九日の待夜なれど、世にすてられしかなしさはたれありて一掬ひとすくひの水だに手向たむくる人なし。
君は今夜こよひも 逢ひに来て
雨情民謡百篇 (新字旧仮名) / 野口雨情(著)
日の影九六さるにかたぶくころ、快庵禅師寺に入りて九七しやくならし給ひ、遍参へんざんの僧九八今夜こよひばかりの宿をかし給へと、あまたたびべども九九さらにこたへなし。
この歌で心をいたのは、「今夜逢へるかも」という句にあったのだが、この句は、巻十(二〇四九)に、「天漢あまのがは川門かはとにをりて年月を恋ひ来し君に今夜こよひ逢へるかも」
万葉秀歌 (新字新仮名) / 斎藤茂吉(著)
今夜こよひのおめでたを申さんとてこそやどはいでたれ、なにやつのしわざにや、ほりあげの道きのふとはちがひてあしもとあしくしおきたれば、あやまちてこけたるがまどをもおしやぶりておち入たる也