交誼こうぎ)” の例文
年来の御交誼こうぎに対してまずお祝いを申し上げなければと父が申しておりましたが、関白を拝辞しました自分が表だって出ることよりも
源氏物語:35 若菜(下) (新字新仮名) / 紫式部(著)
単に、攻守同盟というだけではない、旧恩の関係もある、そのほか複雑な交誼こうぎも入りくんでいて、るに断れない間がらである。
新書太閤記:04 第四分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
渋江氏と比良野氏との交誼こうぎが、後に至るまでかくの如くに久しくかわらずにいたのを見ても、婦壻よめむこの間にヂソナンスのなかったことが思い遣られる。
渋江抽斎 (新字新仮名) / 森鴎外(著)
ここテ相逢フゴトニ先生ノ文ト翁ノ学トヲ追称ス。交誼こうぎただニ門ヲ同ジクスルノミニアラズ。このこロソノ青年ノ所著『親灯余影』ナル者ヲ示サル。
下谷叢話 (新字新仮名) / 永井荷風(著)
コレットは、オリヴィエとクリストフとの交誼こうぎを知って以来、ことにオリヴィエに再会したがっていた。なぜならその細かな点を知りたかったから。
交易の和人はまン中の部落に足をとめ、番屋を建てて専ら土人と交誼こうぎをかさね、彼らの漁猟物を酒や木綿と交換し、つまり交易の利を独占していた。
石狩川 (新字新仮名) / 本庄陸男(著)
故にこの両等は藩をおなじゅうし君を共にするの交誼こうぎありて骨肉の親情なき者なり。(骨肉の縁を異にす)
旧藩情 (新字新仮名) / 福沢諭吉(著)
忌日忌日の法事も若いのに似合わず念入りに執行とりおこなって、村中の仁義交誼こうぎを怠らないぶりを見せた。
巡査辞職 (新字新仮名) / 夢野久作(著)
二葉亭ふたばてい歿後ぼつご坪内つぼうち、西本両氏とはかって故人の語学校時代の友人及び故人と多少の交誼こうぎある文壇諸名家の追憶または感想をい、集めて一冊として故人の遺霊に手向たむけた。
二葉亭四迷の一生 (新字新仮名) / 内田魯庵(著)
その男が幾度も深井に手紙を送って「交誼こうぎ」を結ぼうと努めた。深井は平一郎にも言わず返事も出さなかった。手紙は露骨に脅迫的になって来た。深井は平一郎に打ち明けた。
地上:地に潜むもの (新字新仮名) / 島田清次郎(著)
さいはひなるかな、せふ姙娠中にんしんちゆう屡〻しば/\診察を頼みし医師は重井おもゐと同郷の人にして、日頃ひごろ重井おもゐの名声を敬慕し、彼と交誼こうぎを結ばん事を望み居たれば、此人このひとによりて双方の秘密を保たんとて
母となる (新字旧仮名) / 福田英子(著)
漢学者らしい風格の、上手じょうずな字で唐紙牋とうしせんに書かれた文句には、自分は故早月氏には格別の交誼こうぎを受けていたが、あなたに対しても同様の交際を続ける必要のないのを遺憾に思う。
或る女:1(前編) (新字新仮名) / 有島武郎(著)
彼女は、どうしてルージンが父の交誼こうぎを否定したのか、ふつふつわけがわからなかった。
私はチブスの病室で物を食べるのは厭だったけれど、大地震以来の交誼こうぎもだし難く、皆と一緒に一杯頂戴した。閣下はそれをベッドの上から脂汗を流して見入っていたが、やがて
閣下 (新字新仮名) / 佐々木邦(著)
なお他の多くの人よりも比較的親しく厚い交誼こうぎを受け薫陶くんとうを受けた事は事実である。
子規居士と余 (新字新仮名) / 高浜虚子(著)
という書出しで、諸外国と交誼こうぎを修し、通商貿易を求めにきたるのを
大菩薩峠:24 流転の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
かくて和蘭王は、昔年せきねん交誼こうぎよりして、弘化元年使節をつかわし、世界の大勢をつまびらかにし、鎖国の長計にあらざるを説き、和親通交のむべからざるを告げたりき。しこうして我は何を以てこれに答えたる。
吉田松陰 (新字新仮名) / 徳富蘇峰(著)
長年の交誼こうぎにかけて、僕の最後の御頼みだ。
孤島の鬼 (新字新仮名) / 江戸川乱歩(著)
それから、交誼こうぎを絶とうと決心して立ち去った。心が悲しかった。しかし、いつも執着してわなにかかってばかりいるのは、いかにも愚かなことだった。
斎藤道三とは、多年、みつがれもし、交誼こうぎも深い間がらには違いなかろうが、道三の人物を知らぬはずはない。悪逆非道な行いを見ていないことはない。
新書太閤記:01 第一分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
志士しし仁人じんじんもまたかかる醜態を演じて、しかも交誼こうぎを厚うする方便なりというか、大事の前に小欲を捨つるあたわず、前途近からざるの事業を控えて、嚢底のうてい多からざるの資金を濫費らんぴ
妾の半生涯 (新字新仮名) / 福田英子(著)
嫉妬しっとが彼の唯一の熱情だった。彼はクリストフから母を首尾よく遠ざけただけでは満足しなかった。二人の間になお残ってる交誼こうぎをも無理に破らせようとした。
それよりは、女弟子の江馬細香えまさいこう女史と山陽との古い交誼こうぎこそ問題じゃないか。
梅颸の杖 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
これより耶蘇ヤソ教に身をゆだね神につかえてしょうが志をつらぬかんとの手紙を残して、かくは上京したるなれば、妾はもはや同志の者にあらず、約にそむくの不義をとがむることなく長く交誼こうぎを許してよという。
妾の半生涯 (新字新仮名) / 福田英子(著)
自分となお交誼こうぎをつづけるためにしいて幻をかけようとつとめてるのを、はっきり感ずるように思う時には、自分はその男の敵であるということをりっぱに証明してやるまでは
生前の交誼こうぎから、武蔵の病床を見舞ったり、葬儀に当っては導師の任を執ったり、伊織から委嘱されて、小倉の碑に撰文を書いたりしたため、一躍、高名となり、また武蔵の晩年の道友とか
随筆 宮本武蔵 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
彼と交誼こうぎを結ばん事を望み居たれば、この人によりて双方の秘密を保たんとて、親戚の者より同医にはかる所ありしに、義侠ぎきょうに富める人なりければ直ちに承諾し、己れいまだ一子いっしだになきを幸い
妾の半生涯 (新字新仮名) / 福田英子(著)
レヴィー・クールはそこで、政治および芸術上の最も反自由思想家たる人々と、反ユダヤ主義の人々とまで、うまく交誼こうぎを結んでいた。クリストフはアシル・ルーサンに尋ねた。
ドイツで交誼こうぎを結んだ美しい女優のコリーヌは、パリーにいなかった。彼女はまだ他国巡業中で、アメリカに行っていて、こんどは独立でやっていた。有名になっていたのである。
交誼こうぎはいかにもなめらかだった。決して人の悪口が聞かれなかった。人はたがいに助け合っていた。いかに新参な者でも価値さえあれば、かならず喜んで迎えられ、平らかな前途が見出されるのだった。